第78話 相談
松井は飛脚に手紙を託し、すぐ戻る。
「ただいま、徳寿丸」
「松兄様、お帰りなさい!」
「どうしたの? 困りごと?」
「実はね……」
徳寿丸はキョロキョロと周りを見渡す。
そして、誰もいないことを確認した。
「こっち来て」
「? うん」
徳寿丸は松井のみを部屋に入れた。
「大内様が、鞆の浦に来られるから私も来るように、と言われています。松兄様ならどうなさいますか?」
「……うーん、僕なら行くよ」
「やはり、松兄様なら行かれますか……」
「そうだね。大内義隆殿が、それだけ徳寿丸の力を借りたい、って願っているからこそお声がかかったんだろうし」
「確かに、そう考えるべきですよね」
「うん。だから、僕なら行く」
「分かりました! 松兄様に話せてよかったです」
徳寿丸はニコッと笑った。
徳寿丸は部屋で手紙を書いていた。
「父上と、兄上と、大内様に書くとなると大変……」
だが、どことなく楽しそうである。
松井は部屋で再び悠月の手紙を読み返す。
「長い……。けど、悠月らしいよ」
ちなみに、最初の手紙を測ってみた。
「……5m近くもあったのか。そりゃ長いし重たいよ」
松井は長さを測った直後、一瞬硬直したが、思い切り笑った。
そして、二枚目の手紙も測ってみる。
「……今度はギリギリ4mないのか。確かに、前よりは短いけど」
松井が出した手紙は、便せん数枚、直線にしたとしてもここまではないだろう。
うーん、と松井は顎の下に指を置いて考える。
「今度はこっちが、とんでもなく長い手紙を出してやろうか」
きっと悠月のことだ。
驚くか、喜ぶか、その両方かの三択だろう。
「次に手紙を書くのが、楽しみだ」
松井は悪戯っぽい表情を浮かべた。
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