第61話 兵士の数

遂に始まった、月山富田城攻め。

だが、城の守りはやはり堅い。


「尼子の手勢はいかほどじゃ……?」

元就は誰となく尋ねた。

「手勢はおよそ15000と言われております」

小三郎が答える。

彼は以前、偵察をしてきて何となく手勢を探ったようだ。

「こちらは総勢およそ45000、負けるはずがなかろう」

義隆は笑っていた。


だが……。

「どう思う、悠月」

「吉田郡山城の合戦を思い出してほしいな……。数だけで必ず勝てる、という状況じゃない」

「三倍の戦力だけどね……」

「だからと言って、必ず勝つもんじゃない。吉田郡山城の戦いで、毛利軍は手勢8000、対する尼子はおよそ30000の手勢だったが毛利氏の勝利と言う形で終結しているんだ」

「それを言われると、確かにそうだよね……」

悠月は頷く。

「だから、数だけで有利と決めつけているのが危険なんだ」


隆元は悠月と松井の会話を目で牽制する。

悠月と松井はそれ以上、数での戦いに関する論議を控えた。

義隆の耳には、幸いこの会話に関する情報が入らなかった。


「それにしても……、一年経っちゃうな……」

「それもそうか……。出雲に入ったのが4月だもんな……」

現在は3月。

1年と言う時の流れに二人は唖然としていた。


二人は、時間になったからと陣営から食事の支給を受けに行った。

「ここ、食料が豊富だったから良かったかも」

松井はこっそりと悠月に言う。

だが、悠月は難しい顔をした。

「恐らく、この兵糧を狙ってくるよ。そうすれば、明らかにこちらの士気が下がる」

「そうなの?」

「確か、尼子はゲリラ戦で狙うはずだ。糧道をね」

悠月は月山富田城の戦い(第一次)の事を思い出しつつ言った。

というのも、月山富田城は第二次月山富田城の戦いもある。


そして、国人衆がこそこそと集まっているのは様々なところで見受けられるようになった。

「そろそろか……」

「まだ早いか」

義隆はその様子を聞いても、あまり強く出られなくなっていた。

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