第23話 ローブの男

隆元の従者、という形を取って行動をすることにした悠月。

尼子方は、何人も犠牲者を出していた。

だが、退却していく尼子に対して、元就も隆元も追撃は指示しなかった。


「なぜ追撃を許可しないか、わかるか?」

「尼子方が待ち伏せているかもしれませんからね」

「それもあるが、今の目的はあくまで降りかかってきた火の粉を払うこと。無意味に追撃する必要はない」

「その考えからもあるんですな……」

悠月はなるほど、と頷く。


尼子方、とはいえ、犠牲者をそのまま置いておくわけにはいかない。

悠月は隆元たちを手伝い、弔った。

「安らかに眠れますように……」

悠月は手を合わせる。


「そろそろ戻るとしよう」

「はい、隆元様」

「して、彼女は……? 一緒に突撃してはおらぬだろうな?」

「くるみちゃんは本丸で隠れておくように言ってありますよ」

「そうか」

隆元は納得したようだ。


本丸へ戻る際中、ついに悠月はローブの男と出会った。

そして、わずかに見えた顔を見て、ハッとする。

「お前は……!」

「なぜ、アンタがここにいる?」

「……それはこっちのセリフだよ」

「知り合いなのか?」

「ええ……!」

ローブのフード部分が捲れる。


「俺の学生時代の同級生、そして、剣道部での好敵手ライバルです!」

「久しぶりだなぁ、悠月」

「……松井、どうしてお前が!」

「僕はね、毛利史に傾向していった悠月の目を覚まさせてあげたいだけだよ」

「どういうことだ?」

「悠月、今までの概念であった歴史よりも、新しく違う歴史の方が良いと、僕は思ったんだ」

「そんなの、歴史じゃないだろう!」

悠月は大声で怒鳴った。

「なら、歴史を作り変えてしまえばいいんだよ」

「そんなこと、させるかよ!」

「ふーん?やれるものならやってみなよ」

「絶対に阻止して見せる!」

悠月は息巻いた。

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