第19話 行動開始

「さてと、歴史を戻すためにはどうするか……」

悠月は顎に指を乗せてうーん、と唸る。

「吉田郡山城の戦いの前日に戻ることができれば良いのだけど……」

「なら我に任せよ」

「できるの!?」

「応!」

隆元は機嫌よくうなずく。


「これ、使えるのかしら?」

くるみは水色のお守りを隆元に渡す。

「これを使おう。……二人とも、お守りに手をかざしてくだされ」

「こ、こうか?」

悠月が手をかざすとくるみもそれに倣う。

その時、お守りが光を帯びた。


「ここは……」

「天文9年8月9日、吉田郡山城の戦い前日だ」

「天文9年、西暦なら1540年ね。吉田郡山城の戦い前日よ」

「くるみちゃん、詳しいね」

「吉田郡山城の戦いの歴史を調べている時に覚えたのよ」

ほんのり、くるみの頬は赤い。

照れているのだろう、と悠月は思った。

「そうだ」

隆元も頷いた。


「吉田郡山城のことなら我に任せておいて構わない」

「そういえば、居城でしたものね」

「そうだ。父上や弟どもの場所も大体わかる」

隆元は少し嬉しそうだ。

「よろしくお願いします、隆元公!」

「はは、我のことは適当にお呼びくだされ」

「良いんですか?」

悠月は思わず聞き返す。

「応!」

隆元は優しくうなずいた。


「んじゃ、隆元様!」

「隆元様、お城の事も色々把握なさっていますし、私たちにもいろいろと教えてくださいね」

「もちろんじゃが……、なぜ公付けから様付けに……?」

「あー、照れてる」

「照れてなぞおらん!」

「ムキになるということはそういうことですね」

くるみと悠月は、顔を真っ赤にする隆元に笑った。

だが、雲行きはどんどんと悪化していった。

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