第15話 影の訴え

「なんだ!?」

思わず悠月は後ろを振り返る。

「……? 影?」

黒い人影のようなものがいる。


「返せ……」

「返せ……」

「な、何を!?」

悠月は戸惑う。

「正しい……」

「歴史を……返せ……!」

「正しい歴史!?」


くるみは気付いた。

「恐らく、本来の歴史であれば生きていた人たちの怨念……と言って良い物かしら?」

「そうか。変えられた歴史じゃ生きられなかった人たちの願い!」

「ええ。」

「必ず、正しい歴史を取り戻すから……!」

悠月は力強く言った。

くるみも頷く。


「殿様……」

「若様……」

影たちは、悠月とくるみに訴えるように呻く。

「元就公と隆元公のこと?」

「ご無事であれ……」

「必ず歴史を元に戻すために、毛利一門を守るわ!」

くるみは力強く言った。


影たちは、姿を消した。

赤い空に、黒い列ができる。

「必ず、歴史を取り戻すよ!」

「そして、毛利一門を助けるから」

二人は空に誓う。


「歴史を取り戻す、と言って啖呵切ったけど……、どうやれば良いんだろう?」

「そこからね」

「時間が巻き戻れば、話は早いんだけどさ……」

「そんなこと、できるはずが……、ううん、ちょっと待って!」

「え?」

くるみはどこからか何かを引っ張り出す。


「私、近くの城跡にいたって話はしたよね?」

「うん、それから吉田郡山城に慌てて登って来たって……」

「その時にね、これをもらったの」

「何だこれ?」

それは、ボロいお守りのような物だった。

水色だったらしい布袋は、薄汚れている。

「わからない……、けど渡してきた人が言っていたのよ。必ず役に立つって」

「……まあ、方法も何もないし、イチかバチか……」

突如、そのお守りらしいものは光を放った。

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