第14話 毛利の教え

「え? っていうか……!」

「私たちのことが見えているってこと!?」

「そんなところにずっとおってはいかん!」

元就が怒鳴る。


「え?」

「山から下山して落ち延びるなりせんといかん! ここはもう持たんじゃろう」

炎上する吉田郡山城。

史実では、炎上することなどなかったのだが。


「吉田郡山城が燃えてる……!」

「我ら毛利一門、切腹も……やむなしか」

「いや! 待って!」

「なんじゃ?」

歴史がおかしい、とは言えない。

「生きていて欲しいんです!」

「しかし……」


元就は武士としての矜持の元、殉じようとしている。

もし、悠月とくるみが過去に戻ることができたのなら……!

「いいから、生き残ってください!」

「毛利一門みんなとね!」

「……わかった」


元就は城近辺に残っているであろう、身内を集めて吉田郡山城を去った。

「どうなっているんだろう……?」

「歴史上の人物たちに、私たちが視認できている、この時点でおかしな話なのよね」

「普通に話しかけてくるからびっくりしたよ」

「そうね……。原因を探ってみたいわ」

「手伝うよ」

「ありがとう」


悠月とくるみは、なぜ吉田郡山城が出火したのかということを調べることにした。

恐らく、元就は尼子方に奇襲をかける時、よく火計を利用していた。

それが原因かもしれない、ということには早々に気付いた。

「尼子方も、家を守る為なら同じことをしたのね」

「ということは、……内応か?」

「それか裏切りか。いずれにせよ、尼子方に情報が漏れていた、もしくは隠し通路のような物から吉田郡山城に放火した、というのが濃厚説ね」

悠月は頷いた。


「それ以外なら、領民の放火もありえるな」

「毛利元就は領民に対してもよく気遣っている人物だから、領民の攻撃、ということはあまり考えたくはないわね」

「そうか……。」

「そもそも、百万一心っていうのは国人が皆で力を合わせれば、何事も成し得るという意味合いで彼は唱えていたの」

「国人……?」

「民、女子供、家臣、一門衆全てよ」

「確かに、元就は団結力をよく説いていたね。三矢教訓状とか」

「そういうことよ」

悠月は一歩城に近づこうとした瞬間。

背後に人の気配がした。

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