第13話 再会

毛利両川の血塗られたとも言える歴史を見た悠月は、気付いた時には現代の吉田郡山城にいた。

「本当、なんだってこんなことに……」

悠月は複雑な気持ちに包まれる。


「歴史を辿ると言うのはそう言うことだよ」

その声に、ハッと顔を上げる。

「キミは……!」

「……悠月さん、歴史は確かに振り返ると良い話もたくさんある。けど、それと同じくらい、いえそれ以上に辛い話もある物よ」

「……そうだね」


悠月はうつむいた。

「けど、彼らの人生があって、それを越えて私たちがいる。忘れないで!」

「!」

強い言葉だな、と悠月は感心する。

「くるみちゃん、僕より若いだろうに。すごくしっかりした考えをしているんだね」

「年齢は関係ないわ」

くるみは苦笑いして答える。


「ところで、くるみちゃん」

「なにかしら?」

「キミ、吉田郡山城じゃない城跡にいたって言ってなかったかい?」

「……色々と事情があって、吉田郡山城にも来たの。清神社から回って来たから」

「え?」

「元就公の墓所からより、清神社の方が少し登りやすいのよ」

「そうだったのか……」


ちなみに、清神社は広島のサッカーチームが必勝祈願にも来る神社である。

「血塗られた歴史……変える……! 変えてやる……!」

「い、今、何か言った?」

「いえ、何も……!」

ぐらりと地面が揺れる。

「ど、どうなっているんだ!?」

「きゃあ!」

くるみは思わず悠月に抱き着く。

悠月は反射的にくるみを抱えて身を護ろうとする。


気付いた時には、空は赤く染まっている。

そして、見えた姿は……。

「吉田郡山城の中だ!」

「見て! 元就が……敗走しているわ!」

「おかしい! 吉田郡山城の戦いでは、元就が勝利したはずだ!」

「さっきの声……。まさか、本当に歴史を変えるつもりなの!?」

「させるわけにはいかないな!」


「……お主たち、どこから参った!?」

「!」

悠月とくるみはそのまま固まった。

まさか、元就側から話しかけてくるとは思わなかったからだ。

「……それは」

「まあよい。早くここから立ち去るのじゃ!」

元就はそう言って踵を返す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る