第16話 崩れた歴史

お守りは光を放ったと思えば、急に何やら映像のような物が浮かび上がる。

「な、なんだ!?」

「もしかして……、歴史が変わっていく瞬間のことかしら?」


尼子の隣に、黒いローブのような物をすっぽりと被った人物がいた。

パッと見の背丈からして、さほど背が高いとは思えない。

だが、ギロリと覗く目は、ナイフのように鋭い。


「こいつが、尼子に情報を教えて毛利軍を敗走させ、歴史を狂わせたのか……」

「それにしても、現代の私たちは歴史の動きに触れてはいけないというルールがあるはずなのに」

「だけど、こいつは平気でルールを破って尼子を勝たせているぞ」

「何とかして、捕まえて情報を聞きたいわね」


悠月はうーん、と唸る。

くるみもどうしようか考えているようだ。


「……毛利軍に手伝ってもらって、おびき出してひっ捕まえるってのはどうだ?」

「それは……、良いのかしら?」

「くるみちゃんに他に考えがあるなら聞くぞ」

「今はないわ……。それで行きましょう。けど、毛利の誰かが犠牲にならないようにしないといけないわよ」

「そうだな! 約束したもんな!」

くるみは頷いた。

そして、二人は禍々しいほど赤くなった空を見上げる。

影たちが見守っているような、不思議な気持ちになった。


「あ!」

「うお!? どうしたの?」

「そういえば、毛利軍に手伝ってもらわなくても。尼子軍は追撃をかけるはず!」

「そっか、そこでひっ捕まえればいいな!」

「恐らく、だけど」


だが、一向に尼子軍が現れるような気配はない。

だが、高らかに声が聞こえた。

「尼子晴久、討ち取ったりー!」

「……え!?」

その声の主は、大内義隆であった。


「尼子晴久はここで討ち取られることなんてないのに!」

「討ち取られたのは、正史じゃ尼子晴久の大叔父、尼子久幸だろう!?」

「ええ、そのはずなのに……」

大内義隆の軍から勝鬨が上がる。

尼子勢は蜘蛛の子を散らすように退却していく。

大内方は、追撃をかけ始めていた。

「歴史が……めちゃくちゃになってる……!」

「一体、どうすればいいの……?」

悠月とくるみは立ち尽くすしかなかった。

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