第6話 次の戦へ

ドンッ、と放り出されたような衝撃がした。

「うぐっ……!」

さらに追撃のような衝撃が……!

「きゃあ!」

悠月の上に、くるみが落ちてくる。

「ぐえっ!」


くるみはその声に下を見る。

「だ、大丈夫?」

慌てて悠月の上から退く。

「う、うん……。くるみちゃん、けがしてない?」

「大丈夫……」


二人は周りを見渡す。

「どこだ、ここ……?」

「多分だけど……、吉田郡山城の戦いの後になら、……ここは出雲?」

「出雲……、……、……、あ!」

「多分、想像の通りよ」


出雲の国にある、月山富田城……。

底を舞台とするのなら、月山富田城の戦い、と言うわけである。

この合戦は、大内義隆が毛利氏などの諸勢力を引き連れて攻め込んだ第一次月山富田城の戦いと、大内氏滅亡後に毛利元就が行った第二次月山富田城の戦いに分けることができる。


尼子氏と大内氏の立場が逆転したことにより、大内方に鞍替えした主要な国人衆から、尼子氏退治を求める連署状が提出される。

これを受け、陶隆房らの主導により、大内義隆は出雲へ遠征する。


なお、この戦いが毛利隆元の初陣だともいわれている。

弟の吉川元春の方が、初陣が早いのだが、これは彼が父・元就の反対をも押し切って出陣したからである。


「大内方に従って、毛利軍も従軍するんだったよね?」

「ええ」


吉田郡山城の戦いに敗走という、尼子氏による安芸遠征の失敗により、安芸と備後の国人衆は、尼子氏側だった国人領主たちを含めて、大内氏側に付く者が続出した。

さらに、安芸・備後・出雲・石見の主要国人衆から、尼子氏退治を求める連署状が大内氏に出されたことを受け、陶隆房を初めとする武断派は出雲遠征を主張する。

相良武任や冷泉隆豊ら文治派が反対するが、最終的に大内義隆は、出雲出兵に踏み切ることになった。

というのが、第一次月山富田城の戦いのハイライトである。


そもそも、吉田郡山城の戦い後、安芸武田氏や厳島神主家などの安芸における尼子方勢力も駆逐される。

備前・播磨では赤松氏や浦上氏が勢力を盛り返すなど、膠着状態であった中国地方の勢力争いは大きく動いたころでもある。

尼子氏を叩こうとした大内義隆により、室町幕府から尼子討伐の綸旨も出されるなど、尼子氏は窮地に追い込まれたのである。


「尼子って、どうなるんだっけ?」

「それは今から見られるんじゃないの?」

「ああ、そうか……」

「……多分、だけどね」


大内軍は義隆自らが総大将となり、陶隆房、杉重矩、内藤興盛、冷泉隆豊、弘中隆包らが兵を率いていた。

また、義隆の養嗣子大内晴持も併せて出陣する。

厳島神社で戦勝祈願をしたのち、出雲に向かう。

毛利軍も毛利元就、小早川正平、益田藤兼ら安芸・周防・石見の国人衆を集めて大内軍に合流した。


ただ、4月には出雲にいたのだが……。

「侵攻に時間がかかっていたのよね……」

月山富田城に本格的に攻め込んだのは、年を越えていたという。

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