18 一日目⑭子供達の寝室
「ねえねえさま、何かこのてんじょうたかいなあ……」
子供部屋では、寝かしつけられた二人が少し離れたベッドの間でぼそぼそと話していた。
「お兄様が言ってたわ。それがカントリーハウスのいいところだって」
「えーやだー。だってなんか、こわいよ」
「だったらカーテンをちゃんと閉じて寝ればいいでしょ! 私はちゃんとそうするからね!
「えーやだーねえさま、あけておいてよ……」
「おやすみルイス」
しゃっ、とマリアは自分の寝台のカーテンを閉めた。
ルイスもしょうがない、とばかりにカーテンを閉める。
そして目を閉じると、やはり昼間の慣れない旅の疲れか、そのまま意識はすぅっと闇の中に吸い込まれていった。
一方のマリアは、妙に目が冴えて眠れなかった。
確かにこの部屋は、自宅のそれより広すぎるのだ。
弟が居るだけまだましだが、一人だったらどうだろう?
そう思うと、別に何をするという訳でもないが、弟がそこに居ることに感謝したくなるのだった。
そして考える。
明日は何をしよう。
兄様は狩りに行くし母様はきっとピクニックということで木陰でご本を読んでいるわ。
あまりゆっくりそういうことが最近できなかったしね。
そして一方で、窓から入る月の光に照らされる天井の模様が気に掛かる。
自宅の天井は端の継ぎ目辺りの細工以外、すっきりとした真っ平らだ。
それに比べてこの天井の細工は。
陰翳のせいか、妙にぐいぐいと模様が視界に迫ってくる様な気がする。
マリアはやはりカーテンをしっかりと閉めて眠ることにするだった。
明日一生懸命遊ぶならば、ゆっくり眠らなくちゃ、と。
やがてマリアの寝台からはすうすうと安らかな寝息が聞こえてくるのだった。
*
「やはり支配人の件は少々早く何とかしないとならないな」
エイブラハムは横のサリーにつぶやく。
「そんなにまずいことですの?」
「とりあえずダグラスに周囲の農家を回らせてみたが、家はあっても住んでいないところが幾つかある、ということなんだ」
「え?」
どういうことだろう、とサリーは夫に身を寄せる。
「この辺りにはそれでも牛を扱う農家が六つあったはずなのだよ。大小合わせてね。ところが、一番遠いが大きな家と、その次に遠い家、そして近いが本当に家族だけでやっている小さな家の三つにしか人が居なかった、と言うんだ」
「何ですって」
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