13 一日目⑨今夜のメニューと寝室の状態
「ほらどうですかガードルードさん! 凄いですよ!」
「おや本当に早かったねえ。見せてみな」
ガードルードは籠をのぞき込む。
そしてラズベリーをつかみ取り一つ口に入れると。
「うん、確かにこりゃずいぶんいい時期のものだよ。よくまあこんなにちょうどいいもんが一気に取れたねえ」
「ブルーベリーもクランベリーもブラックベリーもあるんですよ! 凄いです!」
「判ったよ。まあともかく砂糖もってきて、染ませておきな。それでご家族の食事とパンこねが終わった頃には、ちょうど水も出てるだろうさ」
はーい、と言ってマーシャは倉庫へと鍋を持って向かった。
砂糖は倉庫で計量して持ってくる。普段はある程度使うために容器に入れるのだが、ジャムには大量に使うため、鍋の登場と相成ったのだ。
「じゃがいもをゆでて、あとは……」
「豆があっただろう、それにコールドビーフをつけて。あとは薄く小さなパンケーキだ。私ゃまだパンこねにかかるから、ヘッティあんたがパンケーキは焼いとくれ」
「判りました」
ふう、とガードルードは息をつく。
「マーシャもあんたくらい落ち着いていりゃいいんだろうがねえ」
「いいんじゃないですか? ただでさえキッチンは体力使うんですから、若いうちはあのくらい元気な方がいいですよ」
「あんたも何年続くかねえ」
「やだ、ガードルードさん! 私はガードルードさんの味を全部仕込むまでは辞めませんよ!」
「ほぉ?」
にやり、とガードルードは笑った。
*
一方、寝室の用意をしているエメリー達は、リネン室からシーツやカバーを持ち出し、灯りを点け、あちこちのほこりを払った。
「思ったより綺麗でしたね」
ベルがエメリーに言う。
彼女は大人しく仕事が早い。
エメリーにとっては良い仕事仲間だった。
「お風呂は明日で良いのかしら」
「そうね、奥様に聞いてみなくては。今日はお疲れでしょうし」
エメリーは寝室を見渡す。
普段暮らしているタウンハウスに比べ、ずいぶん高い天井、そしてこのベッドにしても、どっしりとしている。
壁紙は近年取り替えられたものだろう、少し昔らしいが、落ち着いた明るい模様のものとなっている。
一方天井はしっくい細工が美しい。
「いつ作られたものなのかしらねえ」
エメリーはふと口にする。
「いつかしら。でも、旦那様がお若い時にお世話になっていたのでしょう?」
「そうね。だったらもう百年がとこ経っていてもおかしくはないわね」
「エメリーさぁん」
そこへとフランシアが飛び込んできた。
「何か坊ちゃんの部屋、天井が怖いんですけど!」
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