13 一日目⑨今夜のメニューと寝室の状態

「ほらどうですかガードルードさん! 凄いですよ!」

「おや本当に早かったねえ。見せてみな」


 ガードルードは籠をのぞき込む。

 そしてラズベリーをつかみ取り一つ口に入れると。


「うん、確かにこりゃずいぶんいい時期のものだよ。よくまあこんなにちょうどいいもんが一気に取れたねえ」

「ブルーベリーもクランベリーもブラックベリーもあるんですよ! 凄いです!」

「判ったよ。まあともかく砂糖もってきて、染ませておきな。それでご家族の食事とパンこねが終わった頃には、ちょうど水も出てるだろうさ」


 はーい、と言ってマーシャは倉庫へと鍋を持って向かった。

 砂糖は倉庫で計量して持ってくる。普段はある程度使うために容器に入れるのだが、ジャムには大量に使うため、鍋の登場と相成ったのだ。


「じゃがいもをゆでて、あとは……」

「豆があっただろう、それにコールドビーフをつけて。あとは薄く小さなパンケーキだ。私ゃまだパンこねにかかるから、ヘッティあんたがパンケーキは焼いとくれ」

「判りました」


 ふう、とガードルードは息をつく。


「マーシャもあんたくらい落ち着いていりゃいいんだろうがねえ」

「いいんじゃないですか? ただでさえキッチンは体力使うんですから、若いうちはあのくらい元気な方がいいですよ」

「あんたも何年続くかねえ」

「やだ、ガードルードさん! 私はガードルードさんの味を全部仕込むまでは辞めませんよ!」

「ほぉ?」


 にやり、とガードルードは笑った。



 一方、寝室の用意をしているエメリー達は、リネン室からシーツやカバーを持ち出し、灯りを点け、あちこちのほこりを払った。


「思ったより綺麗でしたね」


 ベルがエメリーに言う。

 彼女は大人しく仕事が早い。

 エメリーにとっては良い仕事仲間だった。


「お風呂は明日で良いのかしら」

「そうね、奥様に聞いてみなくては。今日はお疲れでしょうし」


 エメリーは寝室を見渡す。

 普段暮らしているタウンハウスに比べ、ずいぶん高い天井、そしてこのベッドにしても、どっしりとしている。

 壁紙は近年取り替えられたものだろう、少し昔らしいが、落ち着いた明るい模様のものとなっている。

 一方天井はしっくい細工が美しい。


「いつ作られたものなのかしらねえ」


 エメリーはふと口にする。


「いつかしら。でも、旦那様がお若い時にお世話になっていたのでしょう?」

「そうね。だったらもう百年がとこ経っていてもおかしくはないわね」

「エメリーさぁん」


 そこへとフランシアが飛び込んできた。


「何か坊ちゃんの部屋、天井が怖いんですけど!」 

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