14 一日目⑩天井の模様とホールの絵

「天井が怖い?」


 こっちですー、とフランシアは二人を自分とチェリアの担当の子供部屋へと連れて行く。

 ウィリアムは一人部屋だが、マリアとルイスは子供部屋ということで二人一緒だった。


「ほら、坊ちゃんが横になった時に、ちょうどあの辺りが」


 しっくい細工の天井が灯りで陰影を付ける。


「……別に怖くないじゃない」


 エメリーはだいたいの位置に首を傾け、そうつぶやく。


「そうは言っても、初めての部屋で、いつもより静かだし、結構子供って天井の染みとか怖がるじゃないですかぁ」


 それもそうね、とエメリーはうなづいた。


「じゃあ灯りの位置を考えなさいよ。坊ちゃんが眠る位置からは天井が見えない様に」

「わかりましたっ!」


 元気にフランシアはあちこちに灯りの位置を変えて行く。


「チェリア、そっちは大丈夫?」

「たぶん。お嬢様はそこまでお気になさらないと思います」

「ちょっとそれは」


 ベルがくすくすと笑う。


「お嬢様は元気で、今日もウィリアム様と一緒にずいぶん遠くまで駆け出してましたから、きっとずいぶんお疲れで、一気に眠ってしまうと思うのですよね」

「それはちょっと都合良すぎない?」

「あと、皆様確か、明日は狩りに行くとおっしゃってたから、しっかり早く眠ろうと思って……」

「そうであることを祈りましょうか」


 そうエメリーは答えた。


「それにしても、閉まってあったリネンが綺麗で良かったですね」

「管理人さんが先に連絡して届けてくれたのかしらね」



「この部屋は特に使う必要は無いですね」


 ガードはそう言って一度開けた鍵を再び閉める。


「ホールはどうでしょうねえ」


 ミセス・セイムスは絵が掛かった長細いホールのことを口にする。


「あれは開けておいた方がいいでしょう。雨が降った時などの坊ちゃん方の良い暇潰しにもなるでしょう」


 廊下兼用と言うか、建物の裏側の端から端まで伸びた北向きの細長いその場所には、代々の肖像画やら、その代々が買い集めたのだろう絵画が掛かっていた。

 ミセス・エイムスは軽くそれにハタキをかけつつ、明日一通り掃除をさせねば、と思う。


「代々のこの館の保有者であって、血のつながりは無い場合もある様ですね」


 ガードはつぶやく。

 絵の下には、現在の持ち主とは関係無い人物名も書かれていることも多い。


「新しいものもありますね」


 ミセス・エイムスは風景画の一つを指して言う。


「確かに。この崩した感じは、昔からの絵にはそう無いものですね。自分も色使いが気になったものの絵はがきは買ったことがありますな」

「絵はがきは良いですね」


 そしてまた、別の部屋へと移って行く。

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