4 同道するメイドとフットマン
メイドやフットマン達の食堂はキッチンの近くにある。
この夜、皆そこに集合して、このたびのカントリーハウスへのお供を決めることとなった。
「フットマンが三人、ハウスメイドが四人、キッチンメイドがガードルードさん以外で二人、だと」
ミセス・セイムスに渡された紙を取り上げ、皆その人数と、その期間の自分の用事、そして残るのと外に出ることの利害を考える。
「はいはいはいあたし行きたいです!」
まず手を挙げたのはハウスメイドのフランシア、十八歳。
「あんた大丈夫? こっちの仕事もまだ覚えきっていないでしょ?」
「だったら向こうだっておんなじじゃなないですかあ、せっかくだから、遠くも一度見てみたいですっ!」
そうきらきらした目と両手を組み合わせて懇願されては。
とりあえずこの場の最年長であるフットマン、ダグラスは仮の紙の方に名前を書き付ける。
「他に自分から行きたい奴!」
低く響く声で問いかける。
「そんじゃ、俺、行きたいです。お前等どう?」
「せっかくだから俺等は、こっちで羽伸ばすよ」
「なあ」
「判った。じゃあイーデン、と……」
ダグラスはこれでフットマンはよし、とつぶやく。
「え、終わり?」
「俺も行こうと思うからな」
「え、ダグラスさん行ってしまうんですか?」
「しまったそれだったら……」
「騒いでも遅い。こういうのは言ったもん勝ちだ。そっちはどうなんだ?」
ダグラスはそう言って、女達の方を見る。
「フランシアが行くなら私も……」
同じ歳のチェリアが手を挙げる。
「若いうちに見ておきたいし、もし結婚話とか出てしまったら、絶対行けないと思うし……」
「じゃあ私も行っておきましょうかね」
メイド長のエメリーも手を挙げた。
「どうやら私が居なくともエスターが居ればよさげだし。私も一度くらい体験しておきたいわ」
「お、もしやそれじゃエメリーさんにも結婚話が」
フットマンの一人が声を挙げる。
「別に今って訳じゃないけど、そういう話が全くない訳ではないのよ。だから今のうちに体験できるならね。……じゃああとハウスメイドの方は一人だけど……」
おずおずと手を挙げたのは、二十歳のベルだった。
「珍しい!」
「……あ、あの…… そのカントリーハウスのある辺りって、私の郷里に近くって…… あの辺りって、夏の果物が美味しいんです……」
「まだまだ食い気かよ」
ははは、と皆笑った。
ベルは真っ赤になってうつむく。
「からかうんじゃないの。キッチンからは、あたしとマーシャが行くよ」
そう言ったのはベルの友達でもあるヘッティ。そちらはそちらで話ができていた様だった。
「果物が美味しいって聞いたら、やっぱり行くしかないだろ」
なあ、とヘッティはマーシャと顔を見合わせた。
「じゃあこれで決まりだ。この表をミセス・セイムスに出してくるぜ」
ダグラスはそう言って立ち上がった。
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