第8話 セクハラ結婚破談事件


 僕は今、妻と娘二人と仲良く四人で暮らしています。

 

 今でこそ、この幸せな生活が続いてることを誇りに思いますが……。

 結婚に至るまで、相手の親御さんに恋愛をなかなか認めてもらえず、かなり苦しみました。


 6年がかりの恋愛で、僕も妻もお互い苦しみ、耐え抜き、ようやく一筋の光りが見えてきた頃。

 やっとのことで、結婚の話があがります。


 なんだかんだあって、ようやく家族同士の話し合いも決まり、安心しきっていました。


 初めて、相手のご両親、妻と僕、そして我が家からキャベツとレタスが、顔合わせすることになります。


 ここで失敗すると、もう結婚できないんじゃないか? ってレベルぐらいの緊張感でした。

 本当にピリピリした空間で、息がつまりそうです。


 この日の集まりでは、結局、ちゃんと相手のご両親から「イエス」の言葉をもらえなかったのですが……。


 縁談をどうにか進めようと、僕と妻、キャベツが色々と話を進めました。

 なかなか、首を縦に振ってくれないので、場を和ませようとしたのか、親父のキャベツが提案します。


「良かったら、お酒でも飲みましょう」


 すると相手のご両親もそれをのんでくれました。

 しかし、これが最悪の選択になるのです。


 ~一時間後~


 そこにはベロベロに酔っぱらったキャベツがいました。


「うぇ~ ていうかさ、あんたら。嫁ちゃんの親子関係おかしくない?」

 泥酔したキャベツはなんと、相手のご両親をディスりだしました。

「さっさと、結婚許しちまえよ。いつまで、嫁ちゃん置いときたいの? めんどくせ!」

 相手のお母さんは、ニッコリと笑っていましたが、絶対にキレていると僕はすぐに察知しました。


 何度か、僕もフォローに入りますが、キャベツの家系は、基本酒乱なので、止められません。


「幸太郎! お前もなんか言ってやれ! さっさと嫁にくれや! とかよぉ」

「いや、ちょっと、控えてよ……」

「なにを真面目ぶってんだ……そうだ、今から中洲にみんなで行こうぜ!」

 静まり返る会場。


 それを見ていてた相手のお義母さんが、僕に言いました。

「幸太郎くん。お父さん、お酒飲み過ぎたみたいねぇ……」

 僕は「あ、これ怒ってるわ」と絶望しました。

「今日はとりあえず、結婚の話は後回しにしましょう」

「す、すみません」

 心底、親父を恨みました。



「せっかくですから、お父さんにお酒を注いであげましょう。嫁! あんた、お酌してやり」

「わかった」

 相手の両親から、お酌を促された妻は、キャベツに近寄り、グラスにビールを注ごうとします。

 その瞬間でした。


「うぇ~ おっ、嫁ちゃんってけっこうおっぱいあるね。デカい?」

 隣りに座った、息子の将来のお嫁さんになってくれるかもしれない女性に対して、セクハラ発言。

 からの、妻が着ていたレースのブラウスをめくりあげます。

 ブラジャーと胸元が丸見えに……。

「いやぁ~!」

 初めて聞く妻の悲鳴でした。

 キャベツはそんなことお構いなしに、欲望のまま、自身の右手を妻の胸元へ近づけます。


 そして、すっと手が伸びたところで、僕がすかさず、チョップで叩き落としました。

(触る直前、僕の手でしっかり防ぎました)


「いってぇ! なにすんだ、幸太郎!」

「いい加減にしてよ、父さん!」

「な、なにをキレてんだよ、へへへ……」


 こうして、第一回目の話し合いは、最悪の結果に終わり、僕たちのゴールはまた半年ぐらい遅れたのでした。


 ああ、理不尽……。


 了



 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

理不尽パパ 味噌村 幸太郎 @misomura-koutarou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ