第1話

ああ、なんでいい天気。


今日も幸せ。


私は幸せ。


「あ"〜?んだよその目。俺に逆らうのかぁ?」

そういう声と共に目の前に現れたのは拳。気づいた後、あえて受け身は取らずに、重傷にならない程度に受ける。じゃないと、この男は収まらない。

 この男_私の父、藍染は簡潔に言うと塵だ。母が死んでから私に暴力を振るうようになった、最低な奴だ。そんな奴の血が流れていると思うと死にたくなる。でも実際、死にたくはないから、コイツの思う通りに暴力を受けている。

 藍染の拳を受けた頬は青くなり、口の中が切れたのか、血の味がした。

 今日は特に不機嫌らしく、それでは収まらなかったらしい。

 ついにRuvido(ルビド)を発現させてきた。こんなひょろひょろの拳、私にかかればなんてことない。でも私は"無原石"の使えない人間。もう少し酷い怪我をしなければ、普通じゃない。でも怪我はしたくない。友達を心配させるから。


 私は全速力で家を出た。頬を隠すマスクも持たず。

 案の定、汗だくで傷だらけ。その上頬の大きな青あざとくれば嫌でも目に入るだろう。周りの人はチラチラとこっちを見ながら、目を逸らす。かなり離れた公園に着いた。ドーム状の謎遊具に身を匿ってもらおうと中へ入ると、同い年か、少し歳下かくらいの男の子がいた。

 髪の色は綺麗な銀色。

 整った顔立ちは少し汗で濡れ、思わず二度見してしまう。

 いや、そうじゃない。

 誰?

 なんでここに居るの?

 滅多に人なんて来ないのに


「誰ですか?」


 その男の子が聞いてきた。

 あまりに唐突で、「え?」と聞き返してしまった。

 澄んだ黒色の瞳が私に向けられ、もう一度「誰ですか?」と聞かれる。

「あ、、えっと、染愛です。染めるの『そめ』に愛の『あ』で染愛。」

と、自分なりのわかりやすい説明をして

「貴方は誰ですか?」

と聞き返してみる。

「俺は、、輝姫。輝くで『て』に姫で『じ』。輝姫。変わってるでしょ」

と、輝姫と名乗る男の子は表情を一切崩さず自己紹介してきた。

(私、動揺してる、、、落ち着いて、"自分"を取り繕うのよ)

深呼吸して体に神経を集中させる。すると、ほんの一瞬だけひんやりとした感覚が身体を包み、耳鳴りが、一緒だけ、する。


 この世界では人口の約3割が自分の原石、Ruvidoを持っている。Ruvidoとは、自分の能力。その超能力のようなRuvidoを持っている人間をRubidian(ルビディアン)と言う。その力はcaratで計られ、高ければ高い程強い力となる。藍染は2.00ct.で一般人としては高い方であった。

 だが、その娘 染愛のRuvidoは4.50ct.。1番上の5.00ct.と限りなく近い強さ。


(私はその強さ故にRuvidoさえも隠すこができるんだ、、!)

私が目を開けた時には"私“は私じゃない。

 偽った、その場の空気に1番合った"私"。

「テジ君って言うんだね!宜しくねっ!なんでテジ君はここに居るの?」

"明るい私"はそう聞く。

「それよりも俺は染愛の怪我が気になる。」

質問したのに返された、、、。なんか調子狂うな。

「ん、ああコレ?親だよ。父親に殴られたんだ。でもなんとも無いよ?元気だもん!」



 そうだよ、ワタシ、ゲンキ。イタクナイ。



(あれ、なんか身体おも、、、、、)

視界が歪み、暗くなってゆく中、心配しようともせずに私の後ろを見ている輝姫が見えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る