第12話「私の安穏を脅かす『姫』の猛攻に耐えられない!」

 そして、週末を迎え、月曜日になった。


 いつもと変わらない登校、朝のHR、午前の授業、昼食、午後の授業、今週も部活はないから素直に帰宅。


 帰宅途中、少し離れた所から声をかけられた。


「おーい、瀬戸さん!」


 七宮君だった。小走りで私の元にくる彼。私は彼の姿を見て、質問をした。


 それに対して彼は前よりも砕けた感じで説明してくれた。


「あ、うん。制服はとりあえずは女子用のを使うことにしたんだ。うちの両親からはすぐに変えるかって言われたんだけど、もう両親の気持ちを聞けたからどちらでも気にならなくなったし、買ったばかりだからしばらくはこっちを着ようかなって。値段も安くないしね」


 すこしいたずらっぽい表情をした七宮君。そのあと一瞬の間があって、七宮君が切り出した。


「それでさ、この前の金曜日のことなんだけど、あの後、お父さんも交えて家族三人で全て話をしたんだ。それでだいぶスッキリした。話してしまえば、案外単純なことだったんだって後から気が付いたよ。一歩踏み出すことでこんなにも世界が変われるんだよね。……なんか恥ずかしい事言ったわ、忘れて」


 照れる彼。そして、深々と頭を下げた七宮君。


「あの時ちゃんと言えなかったんだけど、一歩踏み出す勇気をくれてありがとうございました」


 いきなりのことに私は少し慌ててしまった。それでも七宮君は続けた。


「瀬戸さんが私の手を引いて家まで来てくれて、お母さんに言ってくれて本当に嬉しかったです。瀬戸さんがいなかったら、私は一歩踏み出せなかったし、今日笑顔で学校に来られなかった、それは絶対。言葉でなんだか上手く伝えられないけれど、心から感謝しています。ありがとうございました」


 一度下げた頭を上げ、こちらの目を見て言う。そして、持っていたカバンから何かを取り出し私に手渡しながら彼は言った。


「色々な気持ちがあって、言いたいことまとめられなかったから手紙にしてみたから、どうか受け取ってください。あっ、あと、返事はいつでもいいから!」


 そうして彼は頭に"?"を浮かべた私を置き去りにしてあっという間に帰ってしまった。


 なんだろう。この手紙は何かしら返事をしないといけないものなのか。私は早速その場で封筒を開けてみる。


 内容は七宮君と彼の両親の関係がお互いに話せて理解し合えたことについてと、私のおかげで一歩踏み出せたことに関する感謝、そしてぜひとも彼の両親に挨拶したいから今度暇な時に遊びに来て欲しい旨も。


 加えて、これから色々と私と学校内や学校外で遊びに行きたいことも。


 そうして最後の文で、私はこれまでの人生最大の悩みに直面する。



『まだ知り合って間もないけど、私は瀬戸さんのことをもっと知りたいです。それに瀬戸さんにも俺の事を知って欲しいです。


私は、瀬戸さんの事が大好きです。


どうか私と付き合ってください。


七宮朝姫』



 私はその場で、固まってしまった。思考が停止した。私は人生で初めてラブレターをもらってしまった。



 学校の『姫』から。



 そうして、それ以降は学校や週末で彼の猛攻を受けることになる。



***



 私は公園のお気に入りの木の近くで歩いてたどり着き、ストレッチをしている。


 そう、もう一週間も経っている。だから、私もちゃんと向き合わないと。


 不安定だった心はもう落ち着いている。だから今思うことは、本当に自分の気持ち。


 それを今日伝えにいく。返事を待たせてしまった分は、私のすべての思いを告げることで許してもらえるように願う。



 よし、行こう! 七宮君の元に!

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「私の安穏を脅かす『姫』の猛攻に耐えられない!」 森里ほたる @hotaru_morisato

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