今に黄昏るネケシタス
@neon_cheese109
第1話 夢から醒める
自分が死ぬ夢を見た。
とても抽象的で死因はよく分からないが意識を失うような感じがしたのだ。
高確率で現実ではそんな事はあり得ないのだが、それでもそう怖いものは無い。
でも起きることにした。
やはり自分にとって朝に目を醒まして1日生活していくのが習慣なのだ。
「なんか縁起が悪い夢見ちゃったなあ」
起き上がると自分は大きく伸びをした。まだ眠いものの起きなければ行けないからだ。
すると突然コンコン、とドアをノックする音がした。
「ん、…こんな時間に誰だろ?」
着替えておらずまだ寝間着のままだが相手を待たせてしまっては申し訳ない。
目を擦りながらもガチャっとドアを開くことにした。
「はいなんでしょう?」
ドアの向こう側に居た相手は初対面の顔であった。
銀髪の髪を揺らしながら、洋風の黒いフリフリの服を着て猫のように鋭い瞳孔を持つ丸い瞳を持った美少女。
その美貌に覚めきれていなかった目が一気に冴えてくる。
「貴女が野斬花ツク様ですか?」
「あ、…そうですけど。私に何か用ですか?」
「その…」
何かを言いかけると途端、会話が途切れた。
もしかしたら言うことを選んで伝えようとしてくれているのかもしれない。
彼女の方を目を逸らさずそのまま見つめる。
2分ほど経った後、彼女は無言で出入り口の方へ立ち去っていった。
「…行っちゃった」
自分はその後追いかけることもできず、ただ暫く立ち尽くすことしか出来なかった。
あの日から3日───
未だに私の中ではあの時の光景が頭に焼き付いて離れなかった。
特に平凡で目立つようなことをしていたわけでもないのに
なぜ赤の他人の私に何か言おうとして話を持ち掛けようと…?
永遠に相手に聞かなければ解決しない事だと分かっているのに、同じ問いを何度も繰り返してしまう。
ただそんな無意味すぎる時間を過ごしているしかなかった。
「──こーら!ボーッとしてよそ見してないで真面目に掃除しなさい」
「アイタッ」
今日は罰ゲームとしての掃除…ではなく日頃の日直当番として放課後の教室に私は残っていた。
私にとってはどうしても他の人より遅めに帰るなんていじめにしか思えなかったが、平等に決められているのだし皆の為にするしかない。
それに後からサボったと非難されるのもごめんだ。
だから我慢していたものの、いつの間にか昨日のことを考えてしまっていた。
「あ、そう言えば」
「?」
私は教科書で頭を叩いてきた相手の方を真剣な眼差しで見つめてみた。
相手は、彼女の名前は珍縄ワミ。
私の従兄弟でもあり私の担任の先生でもある。
そんな彼女を私はワミさんと呼んでいたのだった。
ワミさんは肩より少し下まで伸ばしていて光の加減によっては黒にも青にも見える髪の毛を、崩れていないか気にしながらこちらを見ている。
無論、私の方に視線を向けてだ。
「私…学校暫く休もうと思うんで」
「ああ、そうなんですか……ってえぇ⁉︎」
髪の毛に集中していたせいで生返事をするもあまりにもデカい宣言に思えたからか、彼女は遅れて驚いた表情を見せた。
「どうしていきなり…?」
「だってワミさん、私…友達が居なくていつも一人だし」
「ツーちゃんなら出来ますよ!まだ諦めたら駄目なんじゃないですか?」
そうだった、ワミさんは私のことをいつもツーちゃんと呼んでいる。
私はワミさんの言葉に笑みを浮かべながらも首を横に振った。
「出来てたらこんなこと言ってない」
苦笑いを浮かべて下を向きながら答える。
「今まで欠席は一度もしてないけど成績は…ギリギリ。学校来ないと留年もわかりませんよ?」
「うん…成績はギリギリで保つつもりだからさ」
そう述べたっきり、私は教室の掃除に集中していた。
下を見ていたのでワミさんがどんな表情をしていたのかは分からなかったが、教室から去っていく足音が聞こえたのはわかった。
今に黄昏るネケシタス @neon_cheese109
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