第5話

 夕食も普段通りに食べ進んでいた。雰囲気もそこまで悪くならないよう、ある程度の質問にも答えつつ、適当に時間を過ごし自部屋へ戻る。自部屋は何でこんなにも落ち着きがあるのか、不思議なほどだった。ベッドに倒れ込み、できるだけ何も考えずに寝ようとした時だった。


 ――――――トントン……


「はい」

「お姉ちゃん。入っていい?」

「……どーぞ」

「ありがと」


 水玉模様のパジャマに身を包んだ茉莉姉さんが部屋に入ってくる。それでも僕は茉莉姉さんをガン無視して、寝につこうとした時だった。プチプチっと何かを外す音が聴こえくる。思わずバッと身体を跳ね上げて茉莉姉さんの方を見るとパジャマを脱ぎ下着姿になっていた。


「姉さん……?」

「あら、寝るんじゃないの?」

「……いやそれより」

「姉妹の身体なんて見飽きるでしょ? いいじゃんちょっとこの部屋暑いし」

「服着てくれよ」

「あら、なに? 凄い態度悪い癖にこういう時だけ恥ずかしがる可愛い姿見せるの? ギャップずるすない?」


 茉莉姉さんは少し涎を垂らしながら、僕に迫ってきていた。押しのけるように僕は財布を持ち自部屋から出て、近くの自販機まで走った。気持ちを落ち着かせるために。


 ――――――ガタンッッ……


 コーラが落ちる。冷たくひんやりしている缶を自分のおでこに当てて熱を冷ます。ひとつため息を吐きながら家へ戻ろうとした時だった。


「あれれー? こんな夜に何してるのー?」


 学校に居たあのうざったい女の子が居た。


「関係ないだろ」

「ねぇねぇ!」

「鬱陶しいって!」

「ふふっ。初めて目を見てくれたね」

「……あ?」

「恐い目つきしないでよぉ〜。ちょっとお話したいだけなのっ!」

「……」


 家に帰っても下着姿のままの茉莉姉さんが居ると思うと憂鬱だった。少しでも気晴らし程度になるかと期待を込めて女の子について行くことにした。


「はぁ、分かったよ」

「うふふっ。嬉しい!」

「で、君の名前は?」

「あれ、同じクラスなのに忘れたのー? あずみだよ! みんなからはあずみんって呼ばれてる!」

「そ。あずみね」

「ふふん! 可愛い名前でしょー!」

「かわいいんじゃない?」


 そう言うとあずみは顔を赤らめた。少し照れながら僕の服をギュッと掴みながら言った。


「うれしーよ。ありがとっ」

「……別に」

「ねぇ、お話したいことなんだけど」

「?」

「……私があの姉妹から君を助けてあげよっか」

「は?」


 僕の第六感が騒いだ。こいつはヤバいやつだと。今逃げたら不自然すぎる。そう思いながら、俺はボケながら言った。


「助けるってなんだよ」

「その言葉通りだろ」

「あ? いきなり口調変わったな……?」

「まぁ、君が今のままで良いならいいけど」

「……お前なんなんだよ!」

「そうすぐに声を荒らげるな」


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