第2話

 入学式を終えたその晩の事、いつも通り食卓テーブルを囲み運ばれてきた料理を1口、また1口と食べていると茉莉姉さんは、僕の頬についていた米粒をひとつ取って口に運ぶ。


「ね、姉さん」

「んー?」

「恥ずかしいからやめて」

「え?」

「そういう事するのをやめてって言ってるんだよ」

「え、なに、は?」


 茉莉姉さんにそういった途端、茉莉姉さんの目の色が変わる。僕の頬を抓りながら、いやもはや抓る次元を超えて、ちぎろうとしているのかと思うほどの強さで捻る。痛さで顔がひきつる。そんな僕をよそに姉さんは恐ろしいほど冷たい声で囁く。


「私の事嫌いになったの……? 私はもういらない子?」

「ち、ちが……」

「違わないでしょ。可愛い可愛い女の子に頬についている米粒を取って貰えた上にそれを食べてくれるなんてそんな人なかなか居ないんだよ?」

「ね、姉さんいたいって……」

「これは今の私の心の痛みを再現してるの。りゅーくん私は貴方のこと大好きなの、愛してるの!」


 茉莉姉さんは先程よりも強い力で僕の頬を捻りあげる。痛さで我慢の限界が訪れた時だった。横から茉莉姉さんの手を叩き落とすかのように強い力で叩く梨々花。


「梨々花?」

「あのさ、にーにが痛がってんの分からないわけ?」

「はぁ?」

「まぁいいけど。にーに、また後で一緒にお風呂入ろーね♡」


 梨々花はわざとらしく指でハートを描きこちらにウィンクをする。

 茉莉姉さんは興ざめしたのか、ガチャガチャと音を立てながら皿を片付け始めていた。

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