第2章

第1話

 ふんわりと甘い匂いが香る桜吹雪の中を歩く。

 暖かい日差しが今日のこの日を待ちわびていたかのように新品の制服を身につけた学生たちを歓迎する。


 僕は周りをキョロキョロと見渡しながら、学校の校門へ着いた時だった。笑顔で手を振る綺麗なドレスに身を包んだ女性が居る。そう姉である茉莉だ。


「……姉さん?」

「りゅーくん。おめでと」


 今日この日、僕は高校生となり入学式へと足を運んでいた。茉莉姉さん、そしてその隣にひょこっと立つ妹の梨々花と共に学校へ入っていく。


 式が始まるまでの間、姉さんたちには保護者控え室に行ってもらっていた。姉さんたちは元気そうに微笑みながら保護者たちと談笑している姿が確認できた。


 だが、僕の気持ちは晴れなかった。

 心の中は豪雨そのものだった。行きたかった学校にも行けず、気持ちを押し殺し、行きたくもなかった近所の底辺高校へと進学したからだ。


 そんな僕の高校生活が始まりを告げた。今日から僕はどう生きていけば良いのか分からないまま。

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