第40話
飛行機から降り、空港に着く。外はとても暑く少し歩いただけでも汗がたらりと頬を伝う。監督も深雪さんもハンカチを手放せない中、今夜泊まるホテルまでタクシーを拾い行く。
ホテルについた時だった。監督はタクシー代を払い皆降りた後に頭を抱えながら言った。
「俺とお前の部屋しか予約してねーってのに深雪着いてきやがってどうすんだ」
「お父さんまじ……?」
「まぁいいや。龍介なら俺の娘に手を出すなんて愚かなことはしねぇだろうし、俺がそこら辺のラブホでも泊まるからお前ら2人で泊まれ。明日の朝迎えに来る」
「えぇ、監督……」
僕は予想外の事態に巻き込まれながら、そして監督の考えの甘さに少し頭を抱えた。僕は絶対に襲わないが、例えば仮に深雪さんが僕のことを好きだったらどうなるか、いやこんな中坊に恋心を抱いてるかもなんてことを考える方が失礼なのだが。
そう頭の中をグルグルと回しなんとか思考をはたらかせていると、別のタクシーを拾い監督はここから少し先のラブホ街に行ったらしく既にホテル前には僕と深雪さんが取り残されていた。
「行こっか」
深雪さんのその声で、僕はもう覚悟を決めるしかないとホテルへ乗り込んだ。予約していた監督の名前を伝えて、部屋まで行くとそこはとても高そうな椅子やソファが置いてあった。ベッドはもちろん横並び。
興奮気味に部屋の中をウロウロと回っていると深雪さんは笑いながら言った。
「そんな楽し?」
「あ、いえ。すみません」
「良いんだよ。さ、ベッドに座って?」
「え?」
「あれ、何期待してるのかな〜?」
「い、いや別に!」
「お父さんからの伝言を伝えるだけだよっ」
「……はい」
別に。別にえちちなことを、期待したわけじゃねーし!
心の中でそう叫びながら、僕はベッドに腰掛け深雪さんの言葉を待つと、深雪さんは僕の腕をマッサージしながら言った。
「明日の1回戦の相手はなかなか強者。一筋縄ではいかないだろうが、大内小内で攻めながら足元から崩していけ。だって」
「足技メイン……」
「出来ればそこに加えて、相手は昨年の全国大会で【始め】の合図の後、一瞬隙が出るみたいだから勢いよく飛び出して出足払いを注意しながら勢い任せに大外刈などを仕掛けるといいかもだって!」
僕は深雪さんに監督の伝言を伝えてもらったあと深雪さんに「ありがとう」と伝えた。
その後頭の中でイマジナリーフレンドと組手の練習をしながら眠ろうとベッドに横になろうとした瞬間深雪さんは僕の服をキュッと掴みながら言う。
「ご飯は?」
「いえ、明日の体重測定のために少し減らします。自宅で体重を測った時500g位オーバーしてたので」
「ん。分かった。ねぇ?」
「はい?」
「一気に体重を減らせる良い方法あるんだけど試す?」
深雪さんは少し頬を赤らめながら言った。
もしかして本当に深雪さんは僕に恋心を抱いてるんじゃないかなんて自惚れてしまうほどに。
僕は恐る恐る聞いた。
「その方法って?」
「……試す?」
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