第39話
全国大会の前日、飛行機に揺られながら監督とそして何故か横に座る深雪さんと会場のある場所まで向かっていた。飛行機に乗るのが初めてだと言うこともあり、僕は興奮気味に空からの景色を楽しんでいるとツンツンと深雪さんは頬をつついてくる。
「な、なんですか?」
「楽しそうだね〜」
「……あはは」
深雪さんと話していると監督は少しお怒りのようで、僕の頭をポンッと叩きながら言った。
「てめぇは旅行に行くのか。龍介」
「あ、いえ」
「なら静かに座ってろ。あと深雪。お前もだ。なんで居る?!」
「龍介くんの全国大会について行かないバカがどこにいる訳?」
「い、いやお父さんはな?」
「なに?」
「……なんでもない」
監督は完全に自身の娘である深雪さんの眼力に負けたようで目を瞑り到着まで寝始めた。僕も目を瞑り精神統一でもしようかと思い目を瞑ろうとしたが、深雪さんはそれを許さず何故かグイッと瞼をこじ開けてくる。
「み、深雪さん?」
「寝かせないよ」
「え、いや精神統一でもしようかなって」
「させない。私とお話するの」
「え、でも」
「……良いから」
「あ、はい」
僕も監督同様深雪さんの眼力に負け、深雪さんとお喋りすることにした。深雪さんと話すことなんて身体が大丈夫なのかどうかくらいしか無く、どうにか話題欲しさに好きなものでも聞こうかと思っていると、深雪さんは突っ込んだ質問を投げかけてくる。
「龍介くんって、義姉義妹さんのこと好きなの?」
「え?」
「なんかそういう風に見えて気になっただけなんだけど」
「……どうですかね。家族としては心配もしてくれてるし、美味しいご飯作ってくれたりたまに遊ぶ時とか楽しいですけど、それが好きかどうかは」
「そう。私はあの二人裏があると思うよ」
「裏ですか?」
何を言い始めるのかドキドキしながら、僕はただ深雪さんの言葉を待った時だった。後ろからドンッと蹴られ席が揺れる。
「な、なんですか?!」
「あぁ、すまねぇな?」
よくよく見ると手に持っていた小さいカバンには帯の上から付ける紅白の帯が見える。どうやら柔道の大会に向かっている人のようで、僕はここで喧嘩を売る訳には行かない。そう考えていたが深雪さんは突っ込んだ。
「蹴るなんて失礼ね!」
「あ?」
「てか、あんたら柔道の大会に向かうんでしょ」
「……それがなんだってんだ?」
「私達も向かっててね、あんたが蹴った席の子は今大会優勝する強い子なの。怪我でもさせたら承知しないから」
「へー。俺の教え子に勝てるかな。そこに居るのは龍介ってガキだろ?」
「えぇ、そうですけど?」
喧嘩を止めたい。そう思っていたがどう止めれば良いのか分からずあたふたしていると、監督は目をパチッと開けて言った。
「うるせぇ。お前の教え子なんかに俺の教え子が負けるかよ」
「あぁ??」
「なぁ、龍介。大会楽しみだなぁ?」
「か、監督」
自体を悪化させるような発言を監督はわざわざしたが、結局喧嘩を止めたのはCAさんだった。
CAさんご迷惑おかけしました。そう心の中で言いながら数時間後飛行機は着陸した。
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