第34話
学校へ行くと、皆今日が終われば夏休みということで普段よりも数倍騒ぐ人達で溢れかえっていた。教室のどこを探しても静かな場所はなく、仕方なく教室から出て静かな場所を探そうと廊下をウロウロとしていると、坂上が現れる。
「よっ!」
「おはよ〜」
「龍介、全国大会そろそろだな!」
「そうだね。頑張らなきゃ」
「応援してるぞ、俺の代わりに優勝して強い高校に行ってくれ。俺もお前に負けないよう、自学で強いとこ行くからよ!」
「……勉強出来たっけ?」
「そ、それはおいおいだ」
坂上に勉強を教えてあげたいなーと思いつつも、今は自分の全国大会へ集中力を上げないといけないなと気を引き締め直そうとした時だった。後ろから教師が僕の背中を叩きながら言った。
「職員室に来い」
「え?」
「早く」
「えぇ……」
「めんどくさがんな!」
「はーい」
坂上に別れを告げて、教師について行きながら職員室に行くと、そこは蒸し地獄だった。何故エアコンを付けないのか分からず、教師に思わず聞いた。
「え、エアコンは?」
「今年から省エネって事で、子どもたちもエアコンが無い中勉強頑張ってるってことで校長がつけるなと」
「た、大変すね」
「それより、龍介全国大会の話だが」
「あ、はい」
「優勝、初戦敗退とかの結果は気にせずにうちに来ないかと、この時期からお前に推薦が来てる」
「ど、どこですか」
「今年の3月に行われた全国高校選手権大会の優勝校だ」
「え」
願ってもない推薦状に僕の心は大爆発しそうなほどに嬉しかった。ただ、優勝校は僕の地元からかなり遠い場所にあり、引越し、もしくは寮生活になる場合、真茉莉姉さんや梨々花に迷惑をかけてしまうことになりかねない。
一度家族に相談するべきなんだろうと思いながら僕は教師に言った。
「全国大会で優勝出来たら、本格的に視野に入れようかなって」
「……そうだな。先方にもそう伝えておこう」
「ありがとうございます」
職員室から出て、推薦状について考えながら廊下を歩いていると誰かにぶつかってしまう。
「あ、すみません!」
「い、いえ」
そそくさと消えていった彼女は、何かを落としていってしまった。拾い上げると手帳のようなもので、どこかに落とし主の名前が書いていないか中身を見ようとした時だった。
「だ、だめ!」
「あ、ごめんなさい。どこかに名前ないかなって」
「わ、私ジュリって言います。こ、これからはぶつからないようきをつけてください!」
「そうだね。ごめんなさい」
「で、では!」
眼鏡をかけていて前髪が長すぎるが故に、どんな顔をしているのか上手く見えなかったが、今度はぶつからないよう気をつけようと、教室に戻り席に座った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます