第33話
気づけば授業に集中できず、午後16時半を過ぎて下校時間になっていた。荷物を持って教室から出ようとドアを開けた途端だった。
誰かにギュッと制服を掴まれ引っ張られてしまった。だが、普段柔道やっていたおかげか、それに上手く身体が反応し相手の引っ張る力を利用して、自分側に引き込んだ。
誰なのか突き止めてやろうと、顔を拝んだ瞬間だった。そこにあったのは坂上のあのイケてる顔だった。
「さ、坂上?」
「龍介驚かせてごめん」
「い、いや良いけど」
何があったのか気になりながら、僕は倒れた坂上の身体を起こそうと腕を引っ張る。坂上も倒れていた身体を起こし、立ち上がると誇りをはらいながら僕の肩に手を置きながら言った。
「俺、もう一度冴香にアタックしてみるわ」
「きゅ、急だな」
「やっぱり中学生だからって、1度振られたからって俺は諦めきれねーって思ったんだ」
僕は男らしい坂上の姿に感動、そして中里の件も一気に解決するんじゃないかと心をウキウキさせながら坂上を再び応援する形を取ろうとした。
坂上は嬉しそうに微笑みながら、僕がサポートすることに凄く喜んでくれていた。人の恋路ほど見ていて応援したくなるものはない。それに一途である坂上には是非恋を叶えて欲しい。
ただただそれだけだった。
僕は坂上と冴香をくっつけるために、女の子を1人呼んで男2人女2人で遊べるようにセッティングしようと、どうにかならないかと考え込みながら歩いていると、既に家に着いていた。
んー、と唸っていると茉莉姉さんが後ろから僕に抱きつきながら言った。
「どうしたの?」
「ちょっと考え事してて」
「んー。彼女とか?」
「うん。友達と女の子がどうすればくっつくかなって」
「あら、お友達の恋を応援するの?」
茉莉姉さんはどこか心配そうに僕の顔を見つめながら言っていた。何が心配なのか分からず、再び考え始めようと、集中し始めた時だった。茉莉姉さんは耳元で囁いた。
「あまり介入するのは良くないよ。お姉ちゃんもそれで何回か失敗してるから」
「え?」
「ううん。なんでもない」
僕は茉莉姉さんの言い放った【失敗】という言葉で、茉莉姉さんがヤンデレになった原因でもあるのじゃないかと疑いを持ったが、今は深堀しても失礼なだけだろうと考え直し、一度寝て頭をすっきりさせようと自室に戻った。
☆☆☆
翌朝の事だった。スマホに1件の連絡が入る。ちらっと内容を見ると、深雪さんからだった。内容としては簡単なもので、【心配させてごめんなさい】というものだった。
僕は返信で【全国大会優勝するので、優勝したらお見舞い行きます】と返事をし、深雪さんが無事だったことに安堵しながら、自室を出る。
「おはよう、龍介くん」
「おはようございます」
朝の挨拶を交わし、また学校へ行こうと外へ出る。すると茉莉姉さんは僕の身体に引っ付きながら言った。
「今日も気をつけて行ってきてね」
普段なら言わないセリフに驚きながらも、心配されてるんだと、心配をかけている自分に喝を入れながら学校へ向かった。
今日が最終日であり、そして夏休みに入る日、ここから僕の全国大会と坂上・冴香くっつけよう大作戦のスタートライン。
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