第27話

 帰宅後のこと茉莉姉さんに梨々花の学校へ連絡してもらい、そして僕自身もちゃんと話し合わなければいけないと思い学校に休みの連絡を入れる。

 梨々花は家に帰ってきてからもずっと自室にこもったまま出てこなかった。話し合わないといけないのに、そう思いながらも家出のきっかけを作ったのは僕だから、何も言えずただじっと待っていると、梨々花はお茶を飲みに部屋から出てくる。


 僕はこれ以上のチャンスはないと思い、梨々花の腕を掴んでソファに一緒に座ってもらった。梨々花は少し驚きつつ、僕の言葉を待ってくれていた。


「梨々花ちゃん。まずはごめん」

「ううん。勝手に出ていってごめんなさい」

「言い過ぎた。だから改めてちゃんと言う」

「うん」

「俺は君たちと住みたい。2人と住んで何ヶ月か経って、今まで以上に賑やかで楽しかったし」


 そう言うと、梨々花は涙を流しながら嬉しそうに僕に抱きつく。茉莉姉さんはただそれをジッと見つめたまま動きもしなかった。僕は梨々花の頭を撫でながら、ずっとごめんと囁いた。


 数分後、梨々花は僕の目を見ながら言った。


「もう家出なんかしない。お兄ちゃん。好き」

「お、おう」

「好き……」


 梨々花は僕に抱きつき、そこから数時間ご飯の時間以外離れもしなかった。ベッタリくっつかれるのは嫌ではなかった。だが、くっつき過ぎではないかと少し警戒をしていた。


 そんな僕をよそに、梨々花は僕の顔をチラチラ見ては嬉しそうに微笑む。その顔は天使そのものでとても可愛らしく、綺麗だった。決してロリコンとかではないが、この時の梨々花はいつも以上に輝いて見えていた。


 ふと、横を見ると茉莉姉さんは親指を加えて、梨々花を睨んでいた。恐ろしい目付きにただただ僕の身体は震えていた。


 そして、少しだけ聴こえた姉さんの「羨ましい」という声、「梨々花邪魔」という僕にだけ聞かせているかのような囁き声にただただ身体が震えた。


 その震えを感じたのか、梨々花は驚いた顔をしつつ僕の頭を撫で、先程よりも強く抱きついてくる。これ以上姉さんを刺激しないで欲しい。そう思いながら、僕は夜の就寝時間まで梨々花と過ごした。


 ☆☆☆


 19時になった時だった。スマホに1件の着信が入る。僕は誰からきたのか確認すると、冴香からだった。


「もしもし?」

「あ、あの。龍介くん」

「ん?」

「あ、明日遊べる?」

「2人きり?」

「ううん。私の友達と、同じクラスの中里っていう男の子」

「そんなヤツいたっけ……」

「よく、坂上くんと喧嘩していた子。その子たちと遊ぶんだけど来れる?」

「いいけど」


 明日の学校が終わった後に、冴香含む3人と遊ぶ約束を取り付けて、僕は梨々花を部屋まで運んで、自分の部屋に戻り早めに寝ようとベッドに入った。

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