第13話
大会終わりで身体に疲れが残ってはいたが、明日は月曜日。学校のために明日の用意などを済ませてさっさと寝ようとした時だった。部屋の扉が開き、梨々花ちゃんが現れる。
「どうしたの?」
「ねね。お兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんの事好き」
「ありがとう」
「んんっそうじゃないっ!」
「え?」
すると梨々花ちゃんは不機嫌そうに頬をプクッと膨らませて怒りながら言った。
「私はお兄ちゃんと付き合いたいって意味の好きなの!」
「えっと。僕は梨々花ちゃんとは付き合えない。もし仮に僕がまだ結婚も彼女も居なくて、梨々花ちゃんも結婚が出来る年齢になった時に旦那さんとかがいなければ。あと僕らは一応義で繋がっているから」
「難しい。けどいいんだね。お兄ちゃん言ったからね?」
「あ、うん」
「もう言質取ったから」
梨々花ちゃんはゲーム機の中にある録音機能を使って僕の言葉を一言一句綺麗に撮っていた。僕はそれに驚かなかった。なぜなら見え見えの位置に隠してあったから。
なんとも微笑ましい梨々花ちゃんの姿に、僕はただ梨々花ちゃんの頭を撫でながら自室に戻るように促した。
梨々花ちゃんは素直に自室へと戻って行った。部屋の扉が静かに閉じた後に、僕はベッドに飛び込んで叫んだ。
女の子からの告白初めてすぎてテンプレみたいな返ししちゃったぁ!!
誰にも聴こえないように叫んだおかげか、少しスッキリしたが、ベッドが心地よくそのまま目を瞑った。そして寝に落ちた。
☆☆☆
翌朝になり目覚ましが4時に鳴る。
僕はタイマーの音で目が覚めていつも通り朝のランニングをしようとジャージに着替えて外に出ると、空は快晴で雲ひとつなく、今日はいい日になるんじゃないかなんて思わされるほどだった。
さっそく走り始めて、いつものあの場所で綺麗な女性に会う。
「おはようございます!」
「あ、おはよっ」
「今日はスローペースですね!」
「君こそ」
「あ、僕は昨日の疲れとるためにスローペースなんです!」
「私もなんだ〜」
女性もよくよく見ればどこか疲れが出ている。何があったのか聞きたかった。だが、ただのランニングで挨拶する程度の関係性で聞いていいのか悩んでいると女性から話し始めてくれた。
「私さ。昨日彼氏と別れたんだ」
「えっそうなんですか?」
「うん。それでちょっと気疲れしちゃって。ランニングで汗流してスッキリしようと思って昨日も走ったんだけど」
「僕は昨日居なかったので」
「そう。君に会ったら何かスッキリするかなって思ったんだけど」
「すみません」
「いや、謝らないで」
僕はただ自分を恨んでいた。こんな時になんて声をかけたら良いのか分からない自分の語彙力の無さに、そして恋愛に対してうとすぎる事にすごく情けなくなっていた。
すると女性はこちらに精一杯の笑みを見せながら言った。
「今日で私はランニングやめるー」
「えっ?」
「なんか。疲れちゃった」
「な、なら僕と一緒に朝走りましょう!」
「え?」
「それなら、えっと。お名前わからなくてすみません」
「あ、えっと。優香だよ」
「優香さんが僕と一緒に走れば、なんか変わるかなって」
僕は勢い任せに言葉を並べて、何とか優香さんを元気付けられないかと精一杯優香さんの目を見つめて言った。
すると優香さんは優しく微笑みながら、そしてその微笑みから喜が漏れているように感じるほど声のキーが上がりながら言っていた。
「ありがとっ。そうしようかなぁ!」
「優香さんの時間に合わせて僕も向かうので!」
「んーとね。土日の朝6時が良いな」
「平日はどうしますか?」
「平日は今日で最後っ!」
「分かりました!」
優香さんと約束を取り付けて、僕は優香さんが少しでも元気付けられれば良いなと思いながら一緒にコースを走りながら解散した。
家に到着したのは午前7時半だった。まさかの時間オーバーで早く学校に向かわなければ行けない時間だった。
「やっべぇぇ!」
「あ、おかえり。龍介くん!」
「茉莉姉さんごめんなさい。朝ごはん要らない!」
「あ、うん!」
「行ってきます!」
自室に戻り制服に着替えて、茉莉姉さんに謝りながら家を出た。
土日明けの学校は遅刻ができない。だらしないと思われ内申点を下げられてしまったら、受験期の今には大ダメージだ。僕はいつもより飛ばして学校へ向かった。
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