第4話

 夕方16時頃になり、茉莉姉さんは梨々花ちゃんをお迎えに行くために、出掛ける準備をしていた。僕は自室に籠り今更ながら本当にOKして良かったのかを後悔していた。


 数十分後のこと、玄関の扉がガチャッと開き茉莉姉さんと梨々花ちゃんが帰ってきた。僕は自室から出て、2人をお迎えしようとすると、梨々花ちゃんは一目散に僕の元へと飛びついてきた。


「おわっ!」

「今日からお願いね。お兄ちゃん!」

「う、うん。よろしくね」


 小さな身体で大きな礼をしながら、僕から離れて茉莉姉さんと夕飯の買い物へ行くと言って家から飛び出て行った。僕は急いで2人を追いかけながら家の鍵を手渡そうとすると、茉莉姉さんはそれに気づいたのか止まってくれた。


「どうしたのー?」

「ぼ、僕これから柔道の練習に行かなきゃだから玄関の鍵を」

「ありがと。頑張ってね!」

「は、はい!」


 僕は家に戻って柔道着1式、スポーツドリンクをカバンに詰めて倶楽部へと向かった。道場の中に入ると既にみんな揃っていた。


「おはようございます!」

「おう。龍介どうした。いつもより遅いが」

「すみません。色々事情ができまして。本当にすみません」

「おーそんな謝んな。とりあえず分かったが遅れた分練習しろよ。お前には全国取れる実力があんだからよ」

「はい!」


 僕はすぐ着替えて練習をしていると、1時間ほど経った頃だろうか。道場がザワザワとざわつきながら誰もが同じ方向を見ていた。何かと思い僕ら練習をしていた倶楽部メンバーも練習をストップしてチラッと見ると、そこには綺麗な人が居た。


 そう茉莉姉さんだった。


 僕は思わず叫んだ。


「茉莉さん?!?!」

「あ、龍介くん〜!」


 倶楽部メンバーはギロッとこちらを睨みながら、ある1人は僕に向かって言ってくる。


「カノジョナノカ?」

「ち、違うよ!」

「ホントウダロウナァァァ!」

「な、なんでそんなカタコトなのさ!」


 すると茉莉姉さんの元には監督が行っていた。


「あ、あの。どちら様で?」

「初めまして。龍介くんの姉です」

「龍介に姉なんか居ましたかね?」

「あ、すみません。姉です」

「なるほど、そうなんですね。ところで練習はまだ終わりませんし、どうぞ見ていってください。龍介が頑張ってる姿」

「はい是非!」


 茉莉姉さんは監督の横にちょこんと座りながら、永遠と僕へ視線を送った。物凄くやりずらさがあるだけじゃなく、 倶楽部メンバーが茉莉姉さんにデレデレしてしまい練習にならなくなってしまった。


 それほどまでに茉莉姉さんが美人だということが分かるが、それよりもどうやって僕の通っている倶楽部が分かったのかに怖さを感じてしまった。


 練習が終わった21時頃。普段なら監督に家まで送って貰うが、茉莉姉さんが居るということで監督は他の子を送ることになった。


「ま、茉莉姉さん」

「帰ろ。お疲れ様!」

「う、うん」


 ゆっくり茉莉姉さんと自宅まで帰っていくと既に22時を回っていた。玄関の扉を開けた瞬間、仁王立ちになった梨々花ちゃんの姿があった。


「梨々花ちゃん?」

「遅い。何してたの」

「柔道の練習だよ?」

「……あっそ。お兄ちゃんは私が家で1人でも怖くないんだね。誘拐とかされたっていいんだね」

「そ、そんなこと言ってないよ?!」


 梨々花は頬を膨らませて怒っていた。


 練習に行くと伝えたのだから、怒られる必要ないとは思ったが、そもそも茉莉姉さんが家に居れば良かった話なのではないかと思考をめぐらせていると、茉莉姉さんは急に僕の頬にキスをし、梨々花ちゃんに見せつける形で梨々花ちゃんを煽っていた。


「龍介くんは梨々花と違っていい子だから一緒にいて疲れないの」

「お姉ちゃんのばーか。普段気弱で私より下のくせに」

「そんなことないもん。お姉ちゃんは」

「あーはいはい。分かりました〜」


 梨々花ちゃんと茉莉姉さんの間にも何かしらの問題があるのだと感じて一日が終わった。


 これから先本当に大丈夫なのか不安だ。

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