第3話「救う命」
「クラリスさまありがとうございます! あなたのおかげで娘が助かりました!」
「いいえ」
わたしはパーティを離れてから各地を巡り、蘇生魔法を用いて人助けをしていた。故郷・ガルーナに戻るまではひたすらに死にかけの子どもを中心に失うはずの命を救っていった。
「クラリスさま!」
「誰ですかあなたは」
「お願いします! 息子を助けてください! なんでもしますから!」
「報酬はいりません。あなたの息子さんのいるところに案内してください」
とある町でわたしは年配の女性に声をかけられた。こんなことも珍しくない。
町を四つほど立ち寄って以降、わたしの名前は伝説級の治癒魔導士として世界中に知れ渡った。それもそのはず、蘇生魔法を使う人なんてわたしの知る限り聞いたことがない。
「息子を! お願いします!」
「息子さんは門番さんでしたか。いきますよ」
案内された民家の中には血だらけの男性がベッドに寝かされていた。わたしはその男性に近寄り詠唱もなく三十代くらいの門番さんを生き返らせた。
「ん……あんたは治癒魔導士さん……俺はたしか魔族兵に……」
「そうでしたか災難でしたね。ですがもう大丈夫です」
「救ってくれたのか? あんたが俺を」
「えぇ。ですがわたしはもうすぐこの町を発ちます。ですから命はお大事に」
「ああ……ありがとう治癒魔導士さん……いや、クラリスさま」
「はい。さようなら」
そしてわたしは遠回りになってもいい救える命はどんなものでも救う。
たとえそれがどんなに悪者であっても。
「いいのかよ元勇者パーティの嬢ちゃんが俺なんかを助けてよぉ」
「命に貴賎はありません。死にたいならばわたしのいないところで勝手に死んでください」
「言うねぇ。この借りは忘れないぜ」
「お好きにどうぞ」
「……なあ嬢ちゃん、名前を教えてはくれねぇか?」
「わたしですか? わたしの名前はクラリスと申します」
「クラリス? ああ、噂の救世主さまか」
後日知った話ではこのゴロツキのようなヒゲを蓄えた巨体の男はそのスジでは有名人らしい。
なんでも、キングと呼ばれているのだとか。
「救世主などではありません。たまたまわたしの目に入ったから助けた。それだけのことです」
「いやそれでも大したもんだ。なかなかできることじゃねぇ……」
「ありがとうございます。ではわたしは行きます。お元気で」
「ああ、あんたもな」
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