第2話「父の死」
「クラリス……すまねえなあ。俺ぁ、もうだめみたいだ」
「パパ! 待って今遡り回復を」
「無駄だクラリス。そいつは死人には聞かねえのさ」
「でもパパは生きて――」
父は魔法剣士だった。それも魔王軍幹部と単独で渡り合えるほどに。
わたしは幼い頃、父と魔王を倒すべく旅をしていた。そのときにだいたいの回復魔法を覚えた。
「ああ……だがもうじき死ぬ。知ってるかクラリス、回復魔法の欠点を」
「それは今パパが言った、」
「そうだクラリス。回復魔法は――どんなに優れた治癒魔導士でも死ぬことが確定している奴は治せねえ」
「ううん! 治せるよ! だって現にヘルスカイヤおじさんを――」
「やめろクラリス! たしかにあいつも、あいつの家族も感謝していた。だがな……」
「それなら!」
「お前は死人を生き返らせることができる今は失われた最上級の回復魔法を使える……」
燃え盛る荒地、そこでわたしと父は魔王と呼ばれていた人物と戦った。
そしてパパは見事、魔王を倒した。
結果、その魔王は偽物だったけどこのときのわたしたちはそれも知らなかったし。世界のほとんどの人が知らなかったと思う。
「だがあの後、おまえは300日以上目覚めなかった! それであいつも毎日のように謝ってきた」
「パパ……」
「だがそれはいいんだ。それよりも遥かに死んだように眠るお前の顔を見続ける毎日はつらかった。次やったら目覚めるかもわからねぇ……もうそんな姿を見たくないんだよ……」
「でもこのままじゃパパが!」
父は仰向けに倒れている。
血だらけで左腕を失っていた。
そんな父は駆け寄ったわたしを見上げて悲しげに顔を歪める。
父はわたしが目覚めたあの日泣きながらわたしを抱きしめてくれた。でも嬉しそうだった。わたしはあの日の父の言葉は忘れることはない。
「クラリス……お前が生きてりゃあ俺ぁ、何にもいらん。死んでも構わない」
「そ、そんな……嫌だよ……」
「時間だ……クラリス、禁術回復魔法・蘇生回復だけは使うんじゃないぞ……」
「うん、わかったよ……だから死ぬなんて言わないで……」
「…………」
「パパ……?」
「…………」
「パパあぁぁぁぁ!!」
こうして父は亡くなった。わたしがどれだけ回復魔法を使っても掛けてもどれだけ身体は綺麗になっても父が目覚めることはなかった。
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