第359話『好物の香りですぅ~』





 第三百五十九話『好物の香りですぅ~』





【名称解説】


【アハトミンC】アートマンに捧げる信仰心によって貯まるフェイスポイント(FP)で下賜かし購入出来る『FPアイテム』の一つ。戦時に於いては必需品。滋養強壮・疲労解消・能力30%三十分上昇・HP/MP二割前後回復。勃起不全やマン感度不全にも効果大でゴリラ帝国のアダルトな男女に大人気の一品。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 十一月一日、午後十八時半、男の娘の群れが陽気に歩く街道、日は完全に落ちたが夜空に雲は無く月が明るい。


 うむ、良い雰囲気の夜道です。


 月明かりで確保出来る絶妙に悪い視界が良いですね、少年時代の夏休み何度も行った『土曜夜市よいち』を思い出して胸がキュンキュンします。


 自他(自分と母神)共に認める芸術的文学少年であるゴリラ的には芸術点高めの夜道だな、間違いない。


 こんな夜道は好きだが、昼間が駄目だと言うわけではない。昼の街道もそれはそれで良かった。


 竹林の宮殿で昼食後の休憩をとった後、思い付きで分神集団の中からテキトーに選んだ一体と感覚共有し、そいつを遠隔操作しながら景色を眺めたりして歩いたが、普通に楽しかった。


 まるで遠足に行った気分だったね……フフッ。


 分神達と一緒に可愛い野ウサギ追い掛け回したり、そのウサちゃんが可愛いので捕まえて食べたり、股間を改造して街道脇で集団フタナリオナニー大会してたら野党が襲ってきたので老若男女問わず掘ってから半殺しにして人畜牧場に送ったり、いやぁホントに楽しかった。


 そんな感じで日暮れまで楽しく歩きつつ、突貫工事で創造した宿場町ダンジョンにもう少しで辿り着く……という地点で俺の悪神レーダーが反応。


 分神達も歩みを止め、俺と同様に北西を見つめた。


 感じる、感じるぞ……


 悪神として救済すべき『悪』がそこに在る。


 これは神に至った当時から感じるようになった、いや、耳に届くようななった衆生しゅじょうの祈りだ。


 切羽詰まった云々、ワラをも掴む云々、それこそ『○○に魂を売ってでも』と言うような、特に強く願われた祈りが耳に届き易い。


 かつて分神を愛してしまった牛獣人の人妻も、こんな感じだったな。



「さて分神諸君、楽しかった遠足の終わりは近い、目的地は目の前だ、宿場町に辿り着けばケツ穴確定師としての仕事を淡々とこなすのみ、楽なものだよ、だがね……ケツ穴確定師である前に、私は神なのである(キリッ」



『プッ……(ねぇラージャ、あの子大丈夫? 脳ミソ入れるの忘れてない? え、同じ脳ミソ入ってる? ほんとぉ?』



 全部聞こえてるんだよなぁ……



 心無いヴェーダの疑問にいささか心をえぐられつつ、分神達の思考を統一し、迷える子羊が待つ現場へ転移します。


 ドス黒い祈りを辿たどればダンジョンじゃなくても簡単に転移出来る、アストラル体である分神の利点だな。


 ヨシッ、では参るっ!!


 あ、なんかカッコ良い甲虫みっけたー、スタッフゥ~、この虫捕獲しといて~、スタッフゥ~!!


 あ、侍女スタッフ居ねぇや、おいお前、男の娘分神28号、その虫持ってけ、嫌そうな顔すんなブッ殺すぞ。



『自由過ぎて草(あの子本当に大丈夫? 脳ミソ足りてる?』



 足りてますお?


 それでは転移しますおーっ、セイヤッ!!



『ねぇラージャ、今更ですけど、あの子はどうして分神体でも全裸になったの?』


≪分かんねぇのか?≫


『ごめんなさい……』


≪そうやって可愛いお前の気をく為さ(キリッ≫


『ッッ!! ンもぅ、バカ(くぱぁ』


≪ッッ!! 待っ――アッーーーッ…………≫




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 あ、一号がまたヴェーダにヤられてる……

 一号と感覚共有してるヤツが誰一人居ないのがウケる。


 それはさて措き……


 願いに導かれて、と言うか辿って来たら……ふむふむ、これは旅人の集団かな?


 そしてこの目の前に居るデブが俺に救いを求めたのか……いや、正確にはこの国や周辺国で信奉されている神以外に祈ったワケですな。


 だがしかし、コイツの心は憎悪によって黒くにごっている、これでは悪神や邪神以外に願いは届かんな。


 なるほどなるほど……お前は運が良い。


 偉大なるアートマンの息子、この大魔神たる人外帝王がたわむれに寄った場所で、黒い心を持つお前が偶然にも必死な祈りを捧げ、久々の楽しい遠足で偶々たまたま機嫌のかった俺にその祈りが届いた……


 お前は運が良い……さて、要件を聞こうか?



「呼んだぁ?」


「ッッ!!(全裸の美女っ!? い、いつの間にっ、ゴクリ……し、しかしっ、その金色に輝く綺麗な瞳がこの亡き妻一筋ネトルネコを狂わせるっ、な、何と言う美しチンコ付いてるぅぅっ!? 何でぇ~っ!?……ドキドキ」


「違う違う、お前の貞操に興味は無い、俺のペニスに対するお前の驚愕が聞きたいわけでもない、俺が聞きたいのはお前が願った『何とかしてくれ神様』の具体的な内容だ」


「ッッ!!(私の思考を読んでいるっ!? そして先ほどの願いを聞いてこの亡き妻一筋ネトルネコの前に現れたと、いやっ、顕現けんげん遊ばしたと言う事はっ……」


「うむっ」


「ッッ!!(やはり、異邦の神……ペニスの女神、ですね?」


「うむっ??」


「クッ!!(ようやく、漸く亡き妻との約束が果たせる……っ!!」


「うむっ」


「ふぅ……(どうぞ、お願い致しますペニスの女神様」


「うむっ??」


「くっふぅ(天国で見ていてくれマリーナ、私が再び勃起をきたす姿を……もう誰にもインポの行商人など言わせないっ(クワッ」


「お前……ソレも治してやるから、元気出せ、な? そうじゃなくて、さっきの切羽詰まった願いの方だ、もう面倒臭いからお前の脳ミソに直接聞くわ」


「え?……ンゴゴゴゴ」



 デブの頭を掴んで……う~ん、ヴェーダみたいに上手くいかないなぁ、もっと神気を流す感じかな?


 ……デブの鼻から危険な色の鼻血がドバドバ出てきた。


 ア、アハトミンC飲ませながらやれば大丈夫だ、問題無い……


 お~い、ヒマな分神達ぃ、コイツの口とケツにアハトミンCの竹水筒ブチ込んで~……


 って、いやそれ太くね? イケる?

 え、切れ痔になっても大丈夫? それはそう。


 あっ、鼻血が止まった、ナイスゥ~。


 ふむふむ、少しずつコイツの過去が分かってきた、あちゃぁ~、後半は酷ぇもんだな……なるほど、復讐の鬼と化したか。


 ほほぅ、今回は自ら元凶の後を追って調査中だったと……オッケー、もう十分だ。



「よっしゃ、ご苦労さん、把握した」


「はぁはぁ、これはいったい……何だ、力がみなぎってきた」


「ん?? あぁ……本能が無意識に眷属化を受け入れたか、おめでとう、今日からお前は悪魔のネトルネコ、だ。ほれ、悪魔の知識もくれてやる、学べ」


「ぐあっ……あ、悪、魔……は、ははは、はははっ!!」



 さて、日焼けしたマッチョビルダーみたいになって少し頭がアレ気味のネトルネコは置いといて。



 どれどれ……ふぅん、アイツらが鷹の旅団、か。



 北に在る丘から続々と現れる馬の影。

 見事に統率された騎馬の一団だ。


 土煙を上げながら馬蹄を響かせこちらへ突っ込んで来る。


 狙いは宿場町じゃないのか?

 どう見てもこの旅人集団に向かって来ている……


 まぁどうでも良いがね。



 ところで――



 先頭の三人はにおうなぁ……

 何度も嗅いだ覚えのあるニオイ……


 自然と唾液が溢れ出る、食欲をそそるニオイだ。



 大好物ですよ。






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