第360話『オカワリも在るよっ!!』





 第三百六十話『オカワリも在るよっ!!』





 十一月一日、十九時、月明かりに照らされていた静かな街道が騒々しくなった。


 無粋な奴らは困るね、この風情を楽しめんとは……


 取り敢えず……鷹の旅団を恐れている奴と嫌悪している奴は保護しとくかな、ここに居ても邪魔だ。


 分神諸君、該当する者を後ろに下げなさい。そいつらの周りに神瘴気結界を張っておきなさい。


 分神七号はその場に残ってそいつらを安心させつつ穏やかな表情で説法しなさい。ママンとゴリラをあがたてまつる狂信者にしてしまうのです……肉欲でとすのも有りです(推奨)


 で、ネトルネコは……進化の興奮はまだ続いているが、やるべき事理解しているようだな。


 眼光鋭く、ネトルネコは旅団の先頭に居る大男を睨み付けている。


 百人斬り(性的)のガッシ……中二臭ぇ、実に中二臭ぇニオイがする、役になりきった素人役者の顔だ、まさにロールプレイングを楽しむ大根役者、決して売れない三流役者未満の雰囲気をまとっている。


 魂の形は他の雑兵や俺の周辺に居る旅人と変わらない、しかし色が違う、その若さに見合う濃さではないし、俺がブッ殺してきた勇者共と同じにおい同じ色が混ざっている……他の男女二人も同じだ。


 間違い無く転生者だな、神の介入が無い限り転生先は無作為に決まる、コイツら三人が作為有りか無作為かは知らんが……


 今となってはどっちでも良い、問題は俺に敵対するかどうか、その一点だ。


 中央神界に属する神々はほぼ敵認定だが、お前らはどうだ?


 敵か、それとも――



「チッ、騒ぐな鬱陶うっとうしいっ、ったく、俺はガッシ、鷹の旅団で切り込み隊長をしている……それで、この集団は何だ?」



 おやおやぁ?


 夜道に旅人が集まって移動するのは常識だとネトルネコの脳ミソは教えてくれたが?


 知らんわけじゃあるまいに……

 おっと、今度は松明たいまつを近付けて観察か……


 これは目的が見えいてるなぁ……よし、分神諸君、君と君の二体を除いて股間を改造、ポコチンを収納しておこう。ついでに、さり気ない豊胸改造も開始。


 どうだ?

 お目当ての品はコレか?


 うん、大当たりだ、奴らの目にともっていた醜い欲望の光が輝きを増した。汚ぇ光だぜ……


 ガッシが馬を進めて俺の近くへ寄り、なんかカッコ付けて流し目を送ってきた、キモwww



「そのエロい女共はテューダー人じゃないな? 旅人集団が雇った踊り子の一団ってワケでもなさそうだ……なるほど、そう言う事か(キリッ」



 また見られた、今度はキリッて見られた、キモwww



「そこの全裸、お前だ、お前は今この場でテューダー人を誘惑していたな?」



 何言ってんだコイツ、取り敢えず無視。あ、少しヘコんだ感じになった、豆腐メンタルかな?


 涙目の巨漢ガッシが質問する対象を俺から気弱そうなオッサンに変えた。ダセェ……



「お、オイそこのオッサン、俺の言っている事は間違っているか?」


「い、いいえっ、隊長さんの仰る通りっ!! 私共はこの肌色の違う異国の女達に誘惑されていましたっ!! 無論っ、私はそんな誘惑に乗りませんでしたがねぇっ!! ガッハッハ」



 フル勃起状態のオッサンが何か言ってる……


 しかし……なるほど、分かり易すぎるなガッシ君、ペニスのイライラを解消する為なら冤罪上等ですか?


 そう来ますか、で、団長のグリフェスは何も言わず傍観、と……いや、ネトルネコを見ているな、変な目で見ている、そっち系?


 紅一点のキャヌカは……ヨシ、股間改造しなかった分神二体に目が釘付けだ、ネトルネコが仕入れた情報通りのビッチだぜ。


 これはもう二体ほど無改造の男の娘を用意しとくか。徹底的に悪魔の肉欲に溺れさせてやる、その後はジャキの所に出荷だ。


 他の旅団員は……ああ何と言う事でしょう、全員バカだったか、残念だよ。


 特にお前、年端としはも行かん少女の腕を掴んでいるお前、それは駄目だ、俺はそれが嫌いだ。


 その行為をとがめない奴等も、そんな馬鹿共に信奉される神々も、等しく価値が無い、存在理由が無い、生きている意味が無い。



 ダンジョン創造……


 ゴミクズ共が居る範囲を全てフィールドダンジョン化、一匹も逃がすなよヴェーダ、コマン子。



『お任せ下さい』

≪畏まりました≫



 最初のニエはお前だ、ペド野郎。


 最期のナンパを楽しむがいい……



「お嬢ちゃん、大丈夫、痛くしねぇから、な? こっちへ来るんだ、俺のテクニックですぐに天国へ送ってやるからよ」


「や、やめて、やめてっ、お父さん助けてっ!!」

「ッッ!! だ、大丈夫だ、今晩だけ我慢しておくれ……」


「そうそう、今晩だけ今晩だけ、さぁ、一緒に天国へ行こ……う……ぜ……?……お嬢ちゃん、背が伸びた?」


「ひ、ひぃぃっ!! お、お父さん助け――」

「う、うわぁぁっ、来るなっ、あっちへ行けぇっ!!」


「あ、アレレ~、体が、沈む……お、おいピッケとポッキ、助けてくれっ、何で後ろに下がるんだ、たっ、助けてくれよっ!!」



 お前は天国へ行けんよ糞ペド、お前は俺が今このダンジョンに繋げた冥界行きに決まった。


 冥界の住人に体を引きずり込まれながらその身を食われる感覚はどうだ?


 激痛で頭のネジが飛んで何も感じんか、そりゃ残念。

 お友達のピッケとポッケもじきにそちらへ行く、待ってろ。


 ん? おっと、娘を置いて逃げようとする駄目オヤジ、逃げんなよ、お前も沈んでおけ。



「あっちへ行――ッッ!! 掴まれたっ!! 足をっ、足がっ、誰かっ、引っ張ってくれっ、沈むっ、冷たいっ、脚が寒いんだっ、助け――」



 親父の大声に苛立ちを見せたガッシが馬首をめぐらし騒ぎの現場へ向かう。


 颯爽さっそうと馬を走らせたガッシだが、方向転換の際に俺を意識しながらマントを『バサァ』っとひるがえして気色悪さを追加した事も付け加えておく。



「ったく、何の騒……っ、グリフェースっ!! 敵襲だっ!!」


「……その様だね、キャヌカ、密集態勢、マジックキャスターは中央、中衛に弓騎兵を置いて円陣を組め」


「敵襲だよアンタ達っ!! 集まって円陣を組めっ、魔法使いは後ろっ、アタシ達弓騎は前と後ろのおりだっ!!」



 良い動きだ、棟梁の判断も早い、指示も的確に下へ伝わっている……


 だが、『ゴリラが不快に思う事はしない』って原則を周知させない組織に未来はない、遅かれ早かれ潰れる……今後はな。


 大森林では常識だぞ?



『少し無理がありますね』

≪強引で素敵……≫



 こ、ここも大森林みたいに緑が生いしげるからヨシッ!!


 と言う事ですので、さっそく愚かな旅団の未来を潰す手伝いをしてあげようではないかっ!!


 ……あっ、その前に、保護した旅人は竹林宮殿に転移させろ、テューダー人の旅人はジャッキータウン送り、父親が死んだあの女の子も取り敢えず送っとけ。


 それでは仕切り直して……


 第一回『ドキッ、惑星ヴェーダで血の晩餐会』を開催します。悪魔の皆様も眷属諸君も奮ってご参加ください。


 ヴェーダ、トンネルを開け。

 コマン子、転移陣を設置しろ。


 旅団を名乗るには規模が小さいが、それでも一千二百余名で構成された活きの良いニエだ……


 新たなダンジョンを肥え太らせる為、諸君らの幸せな吸精と獅子奮迅の働きを期待する。



 さぁ、晩餐の時間だ。








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