第321話『な? 定評通りだろう?』





 第三百二十一話『な? 定評通りだろう?』




【人物紹介】


【シナノ・ソウツウ=アリヅカ】妖蟻帝国皇太女。貴重な『のじゃロリ』でゴリラのお気に入り養女、今年で十三歳になったがチビっ子。気配り上手な優しい子。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 十月五日……早朝。

 私は今、神樹マハーカダンバに登り朝日を眺めている。


 神聖な太陽光を全身に浴び、溢れる涙を抑えきれずそっと目を閉じた。


 大森林から見る朝日に涙したのは何度目だろうか……


 刮目せよっ、私は、マハトマ・ナオキは、十月五日の朝を迎えたのだ……っ!!


 感動に打ち震えた私は東の空に向かって咆哮を上げた。

 ついでにこの秋一番のドラミングを披露。


 収穫を待つみのりきった樹木キッズが楽しそうに拍手を贈ってくれた。


 嬉しかったので調子に乗ったゴリラおじさんは咆哮とドラミングを追加で三セット、日没は英語でサンセットなどと叫びもう一回追加。


 その時発生したゴリラ衝撃波で樹木キッズがパラパラと落下。


 あっ……


 狂い猿の様子を窺っていたハーピーやイモ息子親衛隊の少女達が大急ぎで落下キッズを救助。


 うむっ、私が君達に教えたかった『猿も木から落とす』と言うことわざの意味を理解出来たようだな(汗


 つまり、優しいお猿さんも高所から意味無く物を落とす事があるから気を付けましょう、昔の人はそう言っているのだよ……


 私は優しい微笑みを浮かべ救助員の皆様に頷いてみせた。


 ヤレヤレと苦笑したりアハハと笑うのは妖蜂とハーピーのみ……


 恐怖と困惑が入り混じった視線を私に浴びせる救助眷属っ子達。


 ほぼイモ息子君の親衛隊だ……

 参ったな、私は誤解を解くのが苦手なんだ。

 しかし誤解を招くのは得意でね、人生がほぼ詰んでるんだ。



『アホな事言ってないで謝りなさい、イモ息子君が怒り狂って羽化直前のさなぎになってしまったじゃないですか、知りませんよ、私』



 ちょちょちょちょ、ちょ待てよっ!!


 それ詳しく、怒り狂ったら羽化直前の蛹になるの?

 それがどうして君の無関与に繋がるの?


 …………おい、…………ねぇ、ヴェーダ?

 僕の可愛いヴェニー?


 ……え、シカト? マジ?


 ウソやろ……


 その時、マハーカダンバの中腹から歓声が上がった。



“わわわ、蛹様がお割れ遊ばしたぞーっ!!”

“なっ、何と言う美しい縦割れかっ……”


“いいえ、縦割れではなくってよ、あれは最早もはや『乙女の縦スジ』……っ!!”



“綺麗……縦スジから流れる白濁液が私とイモ息子親王殿下との未来を示しているかのよう”


“ウケる、アンタ厠番の子でしょ? そんな未来は無いよ、妄想お疲れ~、帰りな、息が帝王臭ぇんだよ”


“あ゛?”

“あ゛?”



“なるほど、さすがオルダーナ姫の御子、エロ構えが違う”

“先輩……コレは少しばかり、ケツがうずきますね”


“新入り、お前……ケツ穴確定”

“え、そんなっ、僕のケツは……”


めなサカムト隊長、悪いがそのケツは俺が先約だ”

“アヌスアイス副長、列に並べ、最後尾に、な”


“んだとテメェ……”

“何だその目は?”



 どうやらイモ息子君が羽化しそうだ……

 途中で俺の悪口的な何かが聞こえたが、気のせいだな。


 最後のクソドラマは何だったんだ、続きが気になる……

 アイツらはオルダーナがイモ息子君に付けた護衛か……


 問題を起こしそうなので取り敢えずオルダーナに報告だな。



“わ、割れる、大胆かつエロティックにお割れ遊ばすっ!!”

“な、何と言う美しい御開帳か……アンマンサン・アーン”


“いいえ、御開帳ではなくってよ、あれは最早もはや『くぱぁ』……っ!!”



“綺麗……帝王様にヤられた後の先輩厠番が見せた開脚大噴出の時に吹き出る白濁液を想起させる、まるで未来の私が親王殿下にお情けを頂く事を示すかのよう”


“ウケる、便所が何か言ってる、王宮でションベン飲んでろ”


“あ゛?”

“あ゛?”



“サカムト隊長っ、アヌスアイス副長っ、ケツ穴非確定なのに争うのはヤメテ下さいっ!!”


“下がれ新入り”

“そうだぜプリケツン、退きな”


“ぼ、僕のケツ穴はずっと前から分神様に捧げているんだっ!!”


“え?”

“え?”



 えぇぇ……

 まさにクソドラマで草。


 アホは放っといてイモ息子君の羽化を見届けに行くとしよう。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 俺が下に降りてしばらく経った後、イモ息子君は無事に蛹のからから出る事が出来た。


 しかしその容姿は白濁液まみれで確認出来ない。


 祝福の歓声に沸く中、彼は無言で数メートルほど木を登り、そこで濡れた四枚のはねをゆっくりと広げ、膨大な神気を放って全身の汚れや水気を噴き飛ばした。


 いきなりブっ放されて驚いた俺は彼の周囲を神気結界で覆うのがやっと。


 神気と衝撃波、そして弾丸のように飛散する汚れ等は防いだが、『うっかりゴリラ』で定評の有る俺は、神気と共に放たれた彼の濃厚なフェチモンを結界内に閉じ込めていた事に気付かなかった。


 イモ息子君の神気放出が終わると、結界の中に眠たそうな顔の全裸少年が立っていた、予想していた甲蟲系ではない……


 冷や汗を流すゴリラ。


 綺麗な色とりどりの模様が付いた蝶々の翅は水色、ひたいには二本の触覚、そしてあの金髪碧眼に眠たそうな目……少年の容姿を見て全身が震える。


 ほぼイズアルナーギ様やないか……っ!!

 小学生になったイズアルナーギ様やないか……っ!!

 ゴリラ要素がどこにも見当たらなくて芝3200……っ!!

 せめて髪の色は母似の亜麻色あまいろにしてあげて……っ!!


 イズアルナーギ様の遺伝子が強すぎて笑えない……っ!!


 それに加えて偉大なるアートマンお婆ちゃんの理不尽な威圧感も備える欲張りセット……っ!!


 不可触お婆ちゃんに絶対服従の終焉ちゃんも『ばぁばが増えた(絶望』と戸惑うこと必至の不可触神感……っ!!



「コレ、邪魔」

「え」



 俺の神気障壁を右手でコンコンと叩くニセアルナーギ様。


 急に話し掛けるのヤメテもらっていいですか?

 結界にピキピキとヒビが入る。ウソやろ……


 彼は眠たそうな目で俺を見つめている……

 クッ、君が何を考えているのか父さん解らないよ……


 でもまぁ取り敢えず……



 そして私は、後先考えず結界を解除したのです。




『あぁぁー、もうっ、バカっ!!』

『面白いねぇナオキ君は、ハハハ』

『ッッ、これは見事な……妖蜂から嫁を出すか』

『妖蟻はシナノを嫁がせるわ~、それにしても凄いわね~』







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