第320話『妙だな、ジャキ臭がする……』





 第三百二十話『妙だな、ジャキ臭がする……』




【用語解説】


薔薇バラの園】ゴリラが攻め滅ぼしたジュダス帝国南部に在る男色家に人気のダンジョン。何かの滑りを良くしたり何かをする時に床に敷くと効果的なエロスライムが湧く。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「どうすんだお前コレ……」

『ふむ、想定外ですね……』



 長い十月四日はまだ続く。

 現在は十五時七分、俺とヴェーダは覗き魔と化している。


 イズアルナーギ様に創ってもらった移動式覗き部屋、コレがまた相当な優れもので、賢明なストーカーなら幾らでも金を積んで欲しがること必至の逸品。


 そんな逸品の中に入り、俺は嫌々ヴェーダに付き合ってハーデスとサッちゃんのお見合いを覗いているわけだが……


 お見合いは仲人の日下部緑夢くさかべぐりむが「ではごゆっくり」と脱兎の如く迅速に退室した為、豪華な洋風お見合い室は開始早々ハーデスとサッちゃんの二人きりとなった。


 この時、例の分神達は緑夢がサッちゃんに分け与えた亜空間で空手の組み手をして遊んでいた。


 緑夢が去ったお見合い室は微妙な空気が漂う。


 長い銀髪、ワンピースのような黒い変な服、美丈夫だが全体的に暗い雰囲気のハーデスは目を閉じて腕を組み、サッちゃんに話し掛けもせず無言、顔を見る事すらしない。


 サッちゃんの方はハーデスの態度を気にするでもなく、穏やかな笑みを浮かべていた。しかし、視線の先はハーデスではなく虚空だ。


 そんな感じでしばらく無言の状態が続き、ついに意を決した感じのハーデスがカッと目を開き口を開いた。


 冥王の鋭く陰湿的な紫の瞳がサッちゃんの美乳を射抜く。相手の目を見んかいアホと心の中でツッコむゴリラ。



「私は不器用な男で――」

「申し訳ございません、少しお花を摘みに……」


「あっ、うむ……」



 イケボで不器用発言しつつ非コミュ障アピールからの自己紹介狙いだったと思われるハーデスの出端でばなをくじくサッちゃん……ヒド過ぎワロタ。


 ハーデスは目をキョドらせ再び閉じた。

 薄っすらと濡れていたその瞳を僕は忘れない……っ!!


 サッと立ち上がりペコリとハーデスに頭を下げトイレに向かう幸子氏、ハーデスのすすけた背中を見ると居たたまれない。


 ヴェーダはサッちゃんが去った方をジッと見ていた。


 サッちゃんがトイレに行って三分、五分、十分、彼女は戻らない。


 ハーデスは椅子に座って目を閉じ、腕を組んだ状態は変わらない、しかし貧乏ゆすりが尋常ではない、高速過ぎて僕じゃなきゃ見逃しちゃうね。


 そして十五分が経過しようとした頃、ヴェーダが動いた。



『ラージャ、移動しましょう』

「え、どこ――」



 覗き部屋をトイレまで移動させるヴェーダ。

 僕が承諾する前に移動した、妙だな、同意を求めたのでは?


 ゴリラはいぶかしんだが強引な嫁に慣れているので文句は言わない。言うと瀕死になる、僕は鬼嫁に詳しいんだ。


 そしてトイレに到着、ジャングルの帝王が女性のお花摘みを覗くなど言語道断……と思っていたが、大森林の女達は俺の目の前で見せつけるようにお花摘んでいたなと気付いた。


 妖蜂族なんかは俺と並んで一緒にするしな。いてとか言うしな。俺も普通に拭くしな。そのままヤるしな。


 そうすなわち……

 帝王の歩みを止める性倫理も公序良俗も在りはしない……っ!!


 僕はその目に神気を宿し、視力を限界まで高めてトイレを覗く決意を固めた。


 しかし、俺の胸からニョキリと上半身を出したヴェーダが、少しイケナイ気持ちになってドキドキする俺の両目にその美乳を押し当てて視界を奪い、俺より先にトイレを確認。


 何て酷い奴だ……


 酷い奴だが僕の体は正直なので吸う、二個のサクランボを同時に吸う、激しく吸う事によって非難しているのだ、貴様は何の権利が有って帝王の視界をさえぎるのかと抗議を表しているのだ。皇后の権利だった、ならばヨシッ!!



「あンッ、もう……それよりラージャ、あれを見て下さい」

「今は君の美しい大連山以外を見たくないんだが?」


「はいはい、ンッほら、見て、分神と4pしてます、あンッ」

「ッッ!! それを早く言いたまえよ君っ!!」



 俺は噴火直前の大連山に別れを告げ、首の骨と筋肉がズタボロになる程の速さで覗き窓の方へ振り向いた。


 振り向いたハズなのに桃色空間に居た。


 そして「やっぱりその前に」とヴェーダが強烈な大しゅきホールド。


 ヴェーダの強靭な四本の腕と頑強な両脚がゴリラの体を締め付け、豊満な美乳がゴリラの顔面を完全におおって死んでしまいます苦しいです助けて下さい。



「貴方が悪いの」

「あ、ハイ……」



 大連山の頂上を攻め過ぎたか……

 登山家の悲しいさが、だな。


 ヤレヤレ、大連山山頂の隆起具合を見るに、今回は二億年ってとこかな?


 しょうがねぇ、その山頂に俺の真っ白な雪アッーーー……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ――と、そんな感じでながい十月四日を更に自ら永くした俺だが、ヴェーダとしっぽりした後は落ち着いてトイレ観察、そして今に至る。



「お見合い相手放っといて分神と4pはどうなんだ……」


『大森林的には問題無いですね、分神如きに寝取られるハーデスが悪い』


「ペルセポネーを拉致した男が前妻も後妻も寝取られるのか、因果なもんやなぁ」


『寝取ったのは両方ラージャですが』

「幸子氏の方は俺じゃなくて分神だから……」



 しかし、あの少し野暮ったくて暗めだったサッちゃんが、前から後ろから下からと、まさかあんなアクロバティックセクロスをノリノリで……(勃ッ。


 しかしあれでは身がもた――

 なっ、何ぃぃっ!!


 馬鹿なっ、分神共はサッちゃんを壊すつもりかっ!!

 貴様らは何本ペニスを生やせば気が済むんだっ!!


 チィッ、これだから童貞猿は……っ!!


 そんな何本も入るワケ入った~っ、全部受け入れたぁっ!!


 空間マスターの不可触神にコネられた体はそうなるのかぁーっ!!(メモ


 アレではまるで彼女が三分神の奴隷、いや玩具……っ!!


 僕でも経験が無い挿入法をここぞとばかりに……っ!!

 あの分神達と完全に感覚を絶ったのは早計だった……


 す、少しだけ、先っぽだけ感覚を『ガシィッ』ウッ……



「ラージャ、何だか私……分かるでしょう?」

「……ふぅ、ヤレヤレだぜ(白目」



 ヴェーダが愚息をガシリと掴み、僕を覗き部屋の奥へ引きずって行った。は?


 奥に部屋が在る事に驚愕するゴリラ。


 ア、アレレ~?

 桃色空間じゃないの?


 覗き部屋の奥にはまさに桃色の照明がともされた変な気分になる空間、しかもペニスに活力が生まれる鬼畜仕様。


 鬼畜部屋の床に敷かれた超巨大スライム(薔薇の園ダンジョン産)、そのスライムマットの上に並ぶコネ強化済みと思しき巫女集団……


 なるほど、売ったな?

 僕を売ったなヴェーダ……


 覗き部屋の代償に僕を種馬として売ったなヴェーダァァッ!!


 本当に、本当に君は良い仕事するねっ!!



 そして僕は、愛妻ヴェーダに陰茎を引かれながら、その桃色ベッドにルパンダイブした。




 ハーデスはこの約三時間後にズタボロになって戻って来たサッちゃんを抱きしめ、何故か好感度爆上がり状態で「こんな迫害を受けながら私の許にっ……」とか言って膨大な結納品を緑夢に渡し、アヘ顔ダブルピース受胎済みのサッちゃんを姫抱きして冥界へ帰った。


 その後、サッちゃんは皆で幸せに暮らしていると聞いた。

 なお、ハーデスは三分神の存在を知らない模様。


 せめて護衛を兼ねた御付きだと紹介してやれ……


 ほんの少しハーデスからジャキ臭が感じられた。

 今度ジャキと会わせてみようかな?







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