第314話『まっまっまっ待っ……』





 第三百十四話『まっまっまっ待っ……』




 十月三日、昼前……日本の東九州は晴れ……

 うん、晴れてるなぁ……


 転生して十余年、久しぶりに見た日本にゴリラ驚愕……


 どこもかしこも森、いやもりだなコレ……

 少なくとも東九州は全体的に杜だろコレ……


 等間隔でデケェ神社が在る、その周りに神社の杜。それが繋がってジャングルになっちゃった的な感じだろうか、ゴリラ解んないよ……


 俺の頭の上で髪の毛を引っ張りながら操縦している感じのイズアルナーギ様に聞いても解らんだろう。基本的に不可触神の話は理解出来んからな、知ろうとしては駄目なんだ、僕知ってる。


 現在、俺はイズアルナーギ様をまつる大社に来ている……いや、正確にはイズアルナーギ様に拉致されて連れて来られた。泣きたい。


 とても美しい大社である、空中大社ってヤツだな。人間は入って来られない、イズアルナーギ様の眷属以外も入って来られない。


 僕はイズアルナーギ様の姉をめとった義兄となるので入る事が出来る。凄く要らない特権だと思う。これが有難迷惑と言うヤツだ、世界中の人々に覚えておいてもらいたい。


 そしてこの大社、立派ではあるが50mを超えるフルサイズゴリラが入る造りではない。俺は当たり前のように体を小さくしていたのだが、イズアルナーギ様がそれを許さなかった。


「大きくなれ」と、ほぼ強制のお願いをされたので、ではそのようにと大社内で巨大化、でも頭が天井に届かない不思議……さすがイズアルナーギ様やでぇ、空間が空間の意味を失っている……アヘアヘ(よだれ)


 そんな大猩々の頭上で誇らしげな幼児……『ボクのお兄ちゃんはデカいだろっ!!』的な可愛げのある思考ではないのは確かだ。


 恐らく『ボクのオモチャどうよ?』的な思考だと推測される。ヒド過ぎる傍若無人っぷりだが、利口なゴリラは何も言わず巨大ロボ役に徹するのです。



『一応あの子なりに義兄のお披露目をしていると思いますよ?』



 お披露目対象の頭に乗って?

 妙だな、そんな惨酷話を聞いた事が無い……


 そもそもお前は何故出て来ない?

 義兄の正妻として一緒に紹介されなさいよっ!!

 もともと地球の神様でしょアナタっ、ほら早く来なさいっ!!


 西を望めば遥か先のインドが見えますぞ?

 あぁ~っ、あんな所にインド象がっ(チラッ



『あれはインド象ではなくガネーシャですね、破壊神シヴァの息子です。元気で何より。仏教では歓喜天かんぎてんと呼ばれています』



 そ、そうか(困惑


 ところで、あのゾウさん僕をずっと見てるんだけど……

 困ったな、嫌だなぁ、手でも振っとくか?


 ヤッホー、僕ナオキ、元気?


 ……ゾウさんは何事かを呟き、唾を吐いて去って行った。


 えぇぇ……



『調子に乗るなよ、と言っていましたね……ちょっと行って来ます』



 あ……


 止める間も無く嫁さんが悪ガキをシバキに行った……

 ヒンドゥー系と揉め事はヤメテクレメンス……


 こうして、波乱の地球滞在記は幕を開けるのであった……



「やぁナオキ君、こっちに来たと聞いて私もお邪魔したよ」

「お兄ちゃんっ、ボクも来たよーっ!!」

「来てあげたわ(チラッ」


「あっあっあっ……」



 地球をイズアルナーギ様と分割統治している大魔王さんが来た……何故かプルピーとリリスも居る……


 これはヒドイ戦闘が拝めそうだ(白目




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「大聖様、大魔王様、こちらへ……」

「……うむ」

「よろしく」



 イズアルナーギ様にコネコネ強化されたと思しき巫女長さんに先導され、何か凄くスゴイ巨大戦艦の中を進む……


 俺は異世界の斉天大聖って事になったらしく、イズアルナーギ様の眷属からは大聖様と呼ばれている。何かしっくり来んなぁ?


 ゴリラの『ゴ』と悟空の『空』を合わせて『ゴ空』と言うのはどうだろうか?


 我ながらイカしたネーミングだ。

 そう思わんか、相棒?



『いいえ?』



 ダイレクトな否定は嫌いじゃぁない。

 ただ、俺の心に致命傷を負わせるだけだ、問題無い。


 古い知り合いをシバキ上げて帰って来たヴェーダは少し不機嫌なのだろう、俺のネーミングセンスにケチを付けるなんて有り得んからなっ!!


 そう考えれば心の傷も早めにえるのです……


 右肩にプルピエル、左肩にリリス、頭頂にイズアルナーギ様を乗せた僕はサイズを通常に戻してテクテク歩く。


 僕の少し先を浮遊するのは全裸の大魔王様。

 相変わらずの自然派っぷりで尊敬の念を抱かざるを得ない……


 俺達の世話係りに任命された巫女さん達は大魔王さんの巨大なペニスに目が釘付けだ。


 まぁ当然だなっ!!

 前後左右に勢いよく振ってるもんなっ!!

 ベチーン、ベチーン言うてるもんなっ!!

 気にせん奴でも気にしてまうわっ!!


 護衛のあの男なんて五度見くらいしたしなっ!!

 いや待て、お前何で頬を染めてんの?

 そうなの? お前はそうなの?


 気になるわ~……


 でもあの巫女長さんはまったく気にしてないな?



『彼女が例の【サッちゃん】を召し上げた子ですよ。ラージャと比肩するサイコパスです』



 ちょっと待って吐きそう……


 もうヤダ帰りたい……

 何でそんなのが先導役なのかな?

 サッちゃんを手下にする必要性が解らない……



『岸直樹と言う男に捨てられて自暴自棄になったサッちゃんの黒くよどんだ精神を気に入ったのだとか』



 その岸直樹は僕じゃないな、同姓同名の別人だ。

 僕はサッちゃんを捨てた覚えが無いし、そもそも拾ってない。



『サッちゃんズストーリーではそうなっています』



 ヒドイ駄作だ……



『そのサッちゃんですが……イズアルナーギにコネられて容姿はだいぶ変わったようですね。ほら、ラージャの真後ろを歩く巫女がサッちゃんですよ』



 ッッ!!


 まっまっまっ待っ……

 驚きすぎて息が苦しいっ!!

 神気と、瘴気と、酸素を持って来ぉ~いっ!!








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