第315話『母殺し(非物理)』





 第三百十五話『母殺し(非物理)』





「それでは皆様、敵陣前までワープ致します、シートベルトは不要で御座います。イザーク様、お願致します……」


「んっ」



 名付けもされていない超巨大戦艦の指令室、いやコレは室ではない、果てが見えない草原か何かだろう……イズアルナーギ様が手を加えた物に疑問を抱くな、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……


 無理だな、オカシイよこの指令室……



「あ、あのっ、お飲み物をどうぞ……ナオキさん(ボソッ」



 ヒィィィッ!!

 出たぁ~人殺しィ!!

 黒髪ロングの殺人鬼~っ!!



『ラージャはサッちゃんの三十万倍くらい人間や獣人を殺しましたが……』



 そうだった、俺も大量殺人鬼だった、安心した。

 サッちゃん何するものぞ、恐るるに足らずっ!!

 でも気配を感じさせず隣に立つところは嫌だな。


 そもそも何故彼女は俺がナオキだと分かったのか……


 やっぱナオキ違いじゃないかな?

 この巫女さんオデコにも小さな目が六つ有るし?

 コネられたにしてもサッちゃんみが無いし?

 サッちゃんはこんなに可愛くないし?


 俺が知ってる幸子さんの面影が皆無ですが?



『ラージャの事をかつて愛した男性だと気付いたのはイズアルナーギにコネられた恩恵ですね、どうやらフェチモンで判ったようです。貴方は前世からフェチモンを放っていたのですね、さすがに驚きです』



 あ、たぶんそれワキガじゃないかな……

 サッちゃんだけは『クサい』って言わなかったけど……

 むしろさり気なく脇をクンカクンカされてたけど……


 当時は汗を拭いたタオルが何枚も盗まれてたけど……犯人が分かった、今察した。


 で、そのサッちゃんは何故ブッ殺した俺に接触して来たのだろうか?


 また殺したいなの?

 またゴリラを殺すなの?



『う~ん、蟲系魔族の女性と似通ったフェチモンを出してますね彼女、簡単に言えば求愛です』



 いやぁさすがにね、無いわ~……

 ただでさえサッちゃんに勃起したこと無いのに。


 生き埋め犯にクラスチェンジした子に僕のペニスはトキメかないなぁ。


 って言うか、彼女は何の虫とコネられたんだ?

 フェチモンに反応したり求愛フェチモン出したり……

 妖蜂や妖蟻に似てるけど……目が多いんだよな。



『女郎蜘蛛ですね』



 セクロス後にオスを食う場合がある奴やんか……


 まぁ俺の鋼鉄ボディに牙は通らんだろうが、何だろう、違う意味で食べられそうで嫌だなぁ……


 取り敢えず関わらんとこ。

 持って来てくれたジュースは受け取っておく、無視は好かん。


 う~ん美味い、サンクス。



「皆様、あちらに見えますのが敵艦隊で御座います」


「ん? もう異世界の宇宙に着いたのか、早いな……」



 巫女長さんが空中に浮かぶ巨大画面を指差す。

 何だこりゃぁ……



「どうだねナオキ君、良いながめだろう?」

「はぁまぁ、そうっスね……結構好きっス」



 大魔王さんが楽しそうに笑う。

 そこには暗黒の宇宙に整然と並ぶ敵艦隊。


 コレは……アニメで見た宇宙戦争のワンシーンだな。


 敵艦隊の数がスゴイ……金属製かな、鉱物資源掘り尽くしてそう。


 まぁそこは良い、広い宇宙だ、鉱物が豊富な惑星も有るだろうし、何らかの不思議パワーを使って鉱物要らずで製造出来るかもしれんしな。


 そこは良いんだよ。


 問題は、こちらが戦艦一隻と言う事だなっ!!

 たはーっ、参ったねこりゃ、たはーっ……


 耳を澄ませば頭の上から寝息が聞こえる……ウソやろ。


 イズアルナーギ様が余裕ブッこいて俺の頭の上で寝ている、と言う事は、イズアルナーギ様以外があの大艦隊と戦うのかな?


 大魔王様は巫女の一人を凌辱している、戦闘におもむく雰囲気も姿勢も感じられない……


 プルピーとリリスは俺の肩で『隠れ肩オナ』の真っ最中、バレバレだが気にしない。肩が濡れてきたが、コレは漢の勲章と言えるだろう。


 ……いや違うそんな事より、この指令室からは誰も出撃しないのだろうか?


 そんな馬鹿なっ、ここに居る貴賓連中は全員狂人なんだぞっ、出撃しないわけあるかっ!!



『狂人その1が何か言ってる……』



 黙れ狂人その2っ!!



『まぁっ失礼な、そんな事を言う人はこうですっ!!』



 あっ、チンサスやめて、こんな場所でイギだぐないっ!!

 ほぁぁぁ~……あっ……



「ッッ!! あ、あのっ、ナオ……大聖様っ、あちらでお着替えを……ゴクリ(スゴく濃い匂い……」


「……結構だ、常在戦場は大森林の基本、お漏らし程度で戦場から目を離す事など無い(キリッ」


『ヤダ今日のラージャも素敵……ンッ』


「ふぁアッ……ふぅ、ンッ、そ、そうですか、失礼ンッ、致しました、では、私はこれで……(相変わらずカッコ良い……」


「うむ、ご苦労、下がっていなさイッグゥゥゥゥ!!」

「パクッ、もうお兄ちゃんたらこんなに汚して……」

「ペロッ、まったく、私が居ないと駄目ね、ペロッ……」



 白因子放出を誤魔化せたと思ったら無理だった。

 悪魔の嫁は自由過ぎて困るな……


 大魔王さんがキラッと笑ってサムズアップを向ける。


 取り敢えず俺もサムズアップ……

 大魔王的にはこれで良いのだろか?


 戦闘よりも大切な事なのかもしれない……ウッ。


 ところで、戦端はいつ切られるのかな?

 何で向こうは攻撃して来ないのだろうか?



『イズアルナーギがあちらの空間を固定しているからですね、時間も止めたようです』



 ズコーーーッ!!


 もう無敵やん不可触神……


 ……って事は、あっちの不可触神が出張って来ねぇと話にならんって事かな。


 さて、いつの時代の、何代目の消えた不可触神だ?

 アンタの宇宙にゴリラがお邪魔してるぜ?



 世界さんはアンタの知り合いか?

 世界さんと戦う理由は何だ?

 世界さんをドコに閉じ込めた?


 ……まぁ、正直どうでも良いけどよ、不可触神せかいさんとの喧嘩に俺のお袋を巻き込むんじゃねぇよクソ野郎。


 俺も魔皇帝もそこが気に入らねぇ。


 早くツラ見せろよ、ブッ殺してやる……






『と言ってますよアートマン、素敵……』


『『……はらまざるを得ん』』

『『ンッ、何ぞはなはだ切なき、これは……?』』


『恋ね』








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