第307話「先頭を歩きたいんだ、いいね?」





 第三百七話『先頭を歩きたいんだ、いいね?』





 九月二十四日、午前九時、カスガ大陸南西部山脈沿いは大雨。



「ダメダメっ、イッぐぅぅぅぅ……」

「もうダメっ、イッぐぅぅぅぅ……」



 いや、豊穣姉妹の慈雨だった、スマンスマン。


 山脈ダンジョン上層を一気に踏破したら森林破壊が収まったので緑化運動再開です。腰の前後運動も再開です、あ、僕のモラルは最下位ですねっ、なんつって!!



『評価します』



 セッ……サンクス。


 お勤め終了でアヘ顔ダブルピース状態の豊穣姉妹を神域の宮殿に送ると共に、君達姉妹にも顔射の気持ちを、あ、間違えた感謝の気持ちを贈る。



今朝けさはヤケにネタをはさみますね、この数日間で合計二十六分も真面目に働いた事による反動でしょうか、さぁ帝王宮の寝室で横になって。まったく、シリアス過剰摂取はお控え下さいとあれほど……』



 それ以上言うな……


 眷属の為、国の為、この体を酷使する事に微塵の後悔も無い。

たとえ酷使時間二十六分が二十七分になったとしても、な。


 安心しろヴェーダ、俺は大丈……ウッ、頭がっ……

 頭が割れて何かが吹き出しそうだ……っ!!



『ラージャ、それは頭ではなく亀頭です、最初から割れていますし吹き出るのは白因子、犯人はフリンです』



 ふぅ……


 帰還早々に厠番アタックがあるとは思っていなかったから混乱してしまったんだ、決して自分の頭と亀頭を間違えたわけじゃない。


 ところでフリンはいつ帰るんだろう?



『彼女は自宅からの転移通勤ですよ? 帰宅後は何食わぬ顔で旦那のカナリと接しています。最近はセックスレスですが』



 そ、そうか。

 人生楽しみ過ぎやろコイツ……



『そんな事より、夜明け前に山脈ダンジョン上層の侵食と掌握が完了しましたが、あそこを【ピクシーズ遊園地】にするお考えは変わりませんか?』



 変わらんな。


 確かにあそこは世界最大レベルのダンジョンだが……コアを量産出来る俺達やイズアルナーギ様からすれば、数多く在る『眷属が奪取したダンジョン』の一つに過ぎん、召し上げるほどの価値は無い。


 もう妖精や精霊達が楽しそうに飛び回ってんだ、欲しけりゃやるよ。子守好きのコアっ子を派遣して管理は任せるがね。


 掌握一歩手前の下層から攻撃を受けて奪還される事も無い、ママンと俺達が張った神気結界を抜ける手段が有るならもうやってるだろ。


 はははっ、って言うか、不可触神の結界を抜ける奴が相手なら、どちらにせよお手上げだしな。



『ごもっとも。それに、はねを持つ妖精やイモ息子が引き連れた幼い蟲系眷属も遊ぶ遊園地には、目を輝かせたイズアルナーギが確定でびたるでしょうし。昆虫パラダイスですよ、あの子からしてみれば』



 ……嘘だと言ってよヴェニー。



『あらやだ、可愛い愛称ですこと、うふふ。でも残念、遊園地の永年無料超絶優待パスポート(魔界大ムカデの甲殻製)が航宙空母五隻で売れてしまいました』



 ボッタクリで草。

 大ムカデの甲殻もイネさんのボロ屋敷にあったヤツじゃん。


 ダンジョン遊園地もパスも接収品で自費出費ゼロはさすがに草。


 しかもアレだろ、どうせイズアルナーギ様が魔改造するんだろ、その遊園地って言うかダンジョン全体……



『うふふふ、でしょうねぇ。あ、でも甲蟲軍団が最初に破壊して制圧後牧場化したあの【大きな街(笑)】は手を付けないと思いますよ? あの子は人畜に関わる事を極力避けるので』



 あぁ~、あそこはなぁ……俺も関わりたくねぇな。


 ちょっとした脅しのつもりだったんだけどなぁ……


 あのクソやかましい市長一族とダンジョン眷属の精霊や不死族を広場に出頭させて、そこにピクシーズが乗ったハネ付き蟲型四足歩行機【オーラ戦士ヨツンバイン】と俺の中に居る神霊達を転移させたら大惨事になった。


 市長一族やそれを見守る周囲の上級民(笑)が恐慌を起こすのは分かるが、何とまぁダンジョン眷属共が発狂して敵味方関係無く無差別攻撃を始めやがった。


 神霊を見てビビるのは理解出来る、でも発狂するほどか?



『発狂はアムルタートとハルワタートの存在を認識したからでしょう、あの子達はその名の通りゾロアスターの絶対なる【密接不可分の二柱】が宿っています。本人達はまったく気付いておりませんが』



 あぁ~、そっちか……


 ピクシーズもスコルとハティみたいになってたわけだな、そんな感じはしてたけど……なるほどなぁ。


 じゃぁ神の顕現けんげんに驚いて狂った、って事?



『う~ん、元々二柱は善神だったんですけどねぇ、それが我々に保護された後に無邪気な悪神に変わった影響でしょうか……ラージャが常々仰っている【子供の無邪気ほど怖いモンは無ぇ】ってヤツです』



 あ、察し……


 子供はねぇ……突然エグい事するからねぇ……


 なるほどなぁ……そんなナチュラルボーン殺人鬼ですか何か?みてぇな神様を見たら、神々に近い存在の精霊種や不死族は気が狂うかもな。


 って言うか、実際ピクシーズは狂神だったけどなっ!!


 何を思ったんやろなぁ?



“うわぁ~変な奴が暴れとるぅ、せやっ、ミサイル撃ったろ!!”



 ってなったんやろか……いや頭オカシイやろ常識的に考えて。


 一切の躊躇ちゅうちょ無く【まじっくみさいる】発射したぞアイツら?


 いやそこは搭乗機の武器を使わんかいっ!!……と。


 ツッコムところはそこじゃないけどツッコまざるを得んでした。



『人畜に障壁を張るのが面倒でしたねぇ、困った子達です』



 いや君が教育したんだが?

 実際その教え通りの行動なんだが?


 その証拠に俺の中の【ヴェーダ幼稚園】に通う神霊達もヒャッハーしたんだが?



『困ったゴリラです』



 意味不でワロタ。

 責任転嫁で草。


 まぁとにかく、ピクシーズと神霊達のお蔭で上級民共はギャフンと言うどころか遊び感覚で虐殺されて声も出らん状態になりました。


 人畜の死体や肉片はダンジョンが吸収したが、瓦礫がれきはそのまま。人畜牧場の悲惨な記憶として残す。


 そんな場所にはイズアルナーギ様も行きたくないよなぁ。



『ホラーハウス的な使い道も有るかと』



 ヒドすぎワロタ。


 その辺は子供達と一緒に考えて下さい。


 僕は今から下層に突入するのです。

 ついでに上層から逃げた魔人もトドメを刺して来るのです。


 遊園地のアトラクションを考えるヒマなどないのですっ!!


 だがまぁ……


 エキセントリック・パレードでゴリラが必要な時は呼びなさい。仮装は大好きなんだ。



 いいね?


 あ、ネズ耳カチューシャは要らないです。








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