第306話「今っ、ほら今やでぇーーっ!!」
第三百六話『今っ、ほら今やでぇーーっ!!』
九月二十二日、日の出前、カスガ大陸上空に雨雲は無い。
朝の礼拝と稽古を夜明け前に終わらせ、軽い朝食を摂って山脈ダンジョン下層に入る……予定。勿論ソロだ。
この程度のダンジョンに兵隊を連れて行く意味が無い。眷属達にはカスガ大陸の征服を任せている、今日明日あたりに片が付くだろう。
そろそろかな? と思っていたゴブリンとコボルトのネズミ算式大繁殖が始まった。
衣食住に困る事が無い安全なダンジョン内でハッスルしたあの二種族は、かつて辿った歴史通りに魔族大繁殖を起こしてくれる。
歴史と違うところは『ヒャッハー』が生まれないところと、新生児の死亡率がゼロで成長しても死亡率ゼロな点だな。ついでに最弱ではなくなった点もか。
大魔王一家が北のアカギ大陸攻めを決めた翌日からウチもカスガ大陸中央に大軍を投入した。その大軍は大繁殖したゴブリンとコボルトが主体だ。
今のアイツらはエサがいくら有っても足りんからな、腹ごなしには丁度良いようだ。ダンジョンの養殖狩りでは満足出来ん血の
瘴気が薄い場所でも活動出来る魔族系悪魔眷属は多ければ多いほど良い仕事をする、
魔界系悪魔眷属の圧倒的な数に活躍の場を奪われがちだった魔族系悪魔眷属が、ここに来て盛り返してきた。
それに、蟲系魔族である妖蟻や妖蜂などの産卵はまだ本格化していない。初めから人数が多い上に鬼の産卵数を誇る蟲系魔族が子を産む事だけに専念すると……大変な事になるなっ!!
あぁ~、それを考えると食用人畜を増やさないとダメだな。
って言うか、『マハーカダンバ』・『ケイオス』・『ユグドラシル』の三大樹からもポコポコ『大樹っ子』が採れているので、セクロスしていないのに国民が増え続けている。不思議だなぁ……
まぁ魔界からの移住が止まらんから今更だが。
ファールバウティの血族が支配するロッキー大陸と、大魔王さんが掌握した教国などの支配地にもガンダーラとは別口で悪魔が移住しているようなので、もう世界人口が分からないっ!!
まさにダンジョン様々だな、『衣』はともかく『食・住』が不足しないのは有り難いどころの話じゃねぇぞ?
『その有り難いダンジョンを幸運と……いや、幸運のみで運営してきた結果がご覧の有り様です。これがかつてダンジョンランキング不動の一位だったとは片腹痛い』
「ははっ、違ぇねぇ」
『ラージャと同じく希少な眷属適性を得られたのは運、それが双子だったのも運が良かった、悪神が付いたのも眷属適性から見れば妥当。しかし、その稀有な眷属適性と恵まれた状況ゆえに危機感が薄い』
「だなぁ、強者には何度も出会っただろうが……あの勇者レベルを何人も見たところで勉強にはならんぜ」
病に倒れる俺達を見て警戒が解けたのか、それとも初めから
両ダンマスのどちらかが決めたのか悪神が決めたのか知らんが、プルピー達の暴走以降は大人しくしていた無敵で無害な偽ゴリラを、奴らは最奥付近に在る広大な階層の巨大な街まで転移させやがった。
ヴェーダの推測では、イキった勇者とかをこんな感じで転移させつつ心を折ったのではないか……と言うが、確かにデカい街だよ、建物も近未来的で地球よりも遥かに進んだ街並みだ。
でもねぇ?
デカくて近未来的な研究施設に入れられたので目的の理屈は解らんでもないが……強者の余裕か、それとも巨大な街(笑)をゴリラに見せて委縮させたかったのか、最奥近くに呼ぶ理由がマジで解らんっ!!
コアルームに転移させなかった事だけしか褒める所が無い。
偽ゴリラは街にも施設にも興味無し、驚愕もしないし絶望も無ければ心も折れない。だってダンジョン疑似生物だもの。
偽ゴリラの内部で外の様子を
こちらの冷めた状況とは違って敵の様子は明らかに不満そうだった。悪いが美味しいリアクションを取るのは無理です。
そんな意味の無い事をする前に尊妻様が動いてる。
低階層からチマチマ侵食する必要が無くなったからな、一気に攻めて当階層の防御能力をゼロにした。
当然、敵のダンジョン支援効果も切れるし、管理権限を持つヴェーダ以外に住民の転移・避難も出来ない。
そしてダンジョン眷属は弱体化しこちらは逆に強化、準備は整った。
トロイのゴリラ作戦は九割九分成った、と言って良い。
偽ゴリラの中から強化された瘴気甲蟲軍団が蟲魔人と共に溢れ出し虐殺を開始。視界に入る敵を食い散らかしていく。
ある程度ダンジョン眷属を片付けたら次は七十万人近い住民の処分だが……
蟲魔人はアレなので普通の眷属部隊を投入して階層占領任務に当たらせる。
一応、人畜の確保は命じておいたが、何だかその人畜共が上級民的な態度で生意気なんだよね、まぁ人と獣人しか居ねぇから種族的な嫌悪も有るんだろうが……モノには限度が有るんだぜ?
つっても、ここで天罰
はてさて、
いやいや、人畜確保は『なるべく』であって『絶対』ではないぞ?
もう面倒臭ぇからブッ殺すか?
あの
『ラージャはあの者共にギャフンと言わせたいのでしょう? しかし圧倒的な力の差と言うモノは測り辛い、凡愚には凡愚の測量目安と目線が有ります』
ふむふむ、良い指摘だヴェーダ君、続けて。
『ならば
うひょう、イ、イキそうだよ僕は、続けてどうぞ。
『この街の支配層と思われる者共が住まう住居、または職場にダンジョン眷属の精霊と不死族が多数居ます。ラージャの体中で心臓串刺しゴッコ中の神霊達を向かわせましょう、率いるのはオメカシしたピクシーズのハルワタートとアムルタートが良いでしょう』
おぉ~ピクシーズは子守が終わったのか?
え、あぁ~、不良の後輩達が子守すんのね、ウケる。
いや待て、心臓串刺しゴッコとは……
まぁ、まぁ良い、ガキの遊びだ気にしない(白目)
そんじゃぁその案で行こうかっ!!
って言うかピクシーズに専用機あったよね、どうせならアレで出撃させようぜ!!
本物の未来を見せてやるぜっ!!
『まぁ素敵っ、ではその様に』
っと、それから下層に放ってある『子ネズミ君ダンジョン』も作戦を始めようか。かなり潜っただろう?
『四百二十七階層の入り口付近に居ます』
時機到来、開始するチャンスは今だ。
上も下も同時に大騒ぎだぞ、手を取り合って対処するヒマなんて無ぇぜ?
まぁ……組ませる気は更々無ぇがな。
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