第305話「山脈が崩壊する前に」





 第三百五話『山脈が崩壊する前に』





 魔界の辺境で一人寂しくボロ小屋に籠り昆虫の研究をしていた女性、病的に顔色が悪く長い黒髪はボサボサで汚れた衣服から異臭を漂わせていた。


 いや、あれは体臭だったのかもしれんな……

 とにかく酷かった、が、実は美女だった。


 特に俺をうならせたのが彼女の美乳と薄いオレンジ色の美ビーチク……っ!!


 あの宝石は大事に扱わなければと即座に決意した究極の乳首、だ。


 ヴェーダに結婚の話を通してもらい即日にプロポーズ、快諾を得たのでマハルシの宮殿にご招待、侍女達から小綺麗にされた彼女は美しかった。


 彼女はドレスの材質などに興味を示しつつ、自分の身なりに気を遣う事が無かったと言っていたが、それ以外にも気を遣う事が無かったのではと疑問を覚える。


 研究が好きなのは分かるが昆虫愛が凄まじい、それ以外にはほとんど興味を示さない。少し某幼児不可触神に近いサイコな香りもする。


 俺の異常なフェチモンと性宇宙セクモに反応するのは異性として当然だと思うが、ダントツ一位の絶滅危惧種である猿人と言う希少性の高さに興味を持ってもらえたのはラッキーだった。


 死ぬ事も老いる事も無い研究環境を提供出来たのも彼女の心にクリティカルヒットしたらしい。


 そんな彼女の名前は『イネ・シーボルコ』、七種族の血が混ざった混血悪魔だと言う。イネさん自身に正式な種族名は無い。自らを『雑種だよ』と笑うが、他人を避けた一因でも有るようだ。


 魔界で混血は珍しくはないが、七種は珍しいとの事。気にする気にしないは個人の考えだ、俺がどうこう言う筋合いじゃぁない。


 でも俺は言った、『岩から生まれた猿も居るんだぜ……』と、混血以前の問題で草。


 父親は最初から居ないし偉大なる母は天罰付きで岩の子宮ごと見知らぬ惑星に産み落とすワイルドぶり。


 しかも二十年近く岩の中で身動き出来ない鬼畜仕様。

 ついでに岩が落ちた場所はバイオレンス大好きな大森林。


 だがまぁ……こんなに心躍る人生は無ぇぜ?


 俺はそう言って笑った。


 イネ・シーボルコは細い目を少し開き黙って聞いていたが、最後に『なるほど、狂気が諸問題を塗り潰しているねぇ』と小さく微笑んだ。


 え、違う、そう言う事を言いたかったんじゃない、俺はそう思ったがイネさんが笑っているので良しとした。



『彼女が言った事はおおむね合ってますよね?』



 そんなお前、それじゃ俺が狂人みたいじゃないか……


 狂人だった、合ってた。


 ま、まぁそんな感じでイネさんはその日のうちに桃色空間住みとなったわけです。


 ボロ小屋に有った必要な道具類も俺が桃色空間に入れて全部持って来た。イネさんの持ち物が少なすぎて切なくなったのはナイショだ。



『なるほど、彼女の桃色研究所に多くの家財道具を贈ったのはそう言う理由ですか。当のイネ博士は苦笑していましたが』



 いやだってお前、貧しさの極致に居た元奴隷の眷属達より物持ってねぇんだもん……見てらんねぇよ。


 それにメチャとかラヴとかの元貧乏ガールズがやたらイネさんに贈り物してんだろ? 貧乏ガールズから見てもエグいんだって。


 もう雰囲気がなぁ、放って置けない感じ?


 細い体と悲しげな顔、眷属化したらコンガリ小麦色の肌になると思ったら冥神かな?と小首を傾げたくなるほど青白い肌になった。オレンジ乳首にダメージが無かったのが救いだ。



『そんなはかなげな博士を先ほど十七万年間責めておられたようですが?』



 いや、蟲の話をしようと思ったら勃起してたんだ……

 何をイッているのか解らねぇと思うが、俺も解らねぇ……


 フェチモンだとか性宇宙セクモだとか、そんなチャチなもんじゃぁ断じてねぇっ!!


 もっと恐ろしい媚薬を嗅がされたぜ……

 ついでに搾精されてたぜ……


 イネさんの所にナニをしにイッたのか忘れたんだぜ……



『強化瘴気甲蟲の大量飼育は成功したようですね。ラージャがビクンビクンしている間に博士が終わらせてくれました』



 そ、そうだった、山脈ダンジョンの攻略をスムーズにする為に蟲の大軍を未侵入の下層ダンジョンに投入するって考えて……勃起したのか俺は。


 恐ろしい女だぜイネ・シーボルコ、大事な話をする前に旦那の勃起をうながすとは……


 しっかしスゲェなあの媚薬、ひと嗅ぎでフル勃起やぞ?

 なんなら即射も有り得た、とんでもねぇ劇薬だぜ……っ!!


 って言うか【バステ無効】さんが仕事してない件。



『貴方と勃起はセットなので異常ではありませんよ? 大丈夫?』



 お、おう。


 何だろう、この『直樹と書いてボッキと読む』的な鋭さは……


 前世の友達はみんな心の中で『オッス直樹ボッキ、今日も元気やなw』とか名前を変換していたのだろうか?


 そんな事を考えていると、ベッドに腰掛ける俺の腰をイネさんにペシペシ叩かれた。



「あぁ~ナオキ君、ベッドから起き上がれないんだ、服を着させておくれ。それから朝食を食べさせて、は~や~く~、は~や~く~」


「はいはい、ちょっと待っててねっ!!」



 全裸で白因子まみれのイネさんが光速粒子タキオンで俺のお世話を待っている……っ!!


 山脈ダンジョンの事や直樹ボッキの事より優先すべき任務だっ!!


 後の事は頼むぜ相棒っ!!



『では私がこの強化瘴気甲蟲を下層に放っておきますね。と言っても、ラージャがこの空間から出るまで外の時間は動きませんが』



 クッ、そうだった……っ!!


 時間が進まねば偽ゴリラのトロイ作戦も進まないっ!!



「あぁ~そう言えばナオキ君、妖蜂女王と妖蟻皇帝が持ってるあの巨大戦艦はまだあるのかい? 廃艦とか無いかな? 欲しいんだけど」


「いや姉妹艦がまだ有るよ、要る? ダンジョン化してるから安全だし研究所も創ってやるよ」


「ほほぅ、君は私をとりこにさせるのが上手だねぇ……良い旦那さんだ、正直に言って大好きだね、もう一発ヤろうじゃないか。その後は空の旅に出よう」


「じゃぁ山脈ダンジョンまで飛ぶ? 蟲軍団を突っ込ませたいし」


「いいねぇ~、ではその前に私に突っ込んでおくれ」


「ハイ喜んでーっ!!」



 ベッドに寝そべり片腕を気だるげに上げたイネさんにダイブッ!!


 おっと、これはイケナイ。

 知らず知らずのうちに性宇宙セクモを高めてしまった……


 すまんなイネさん、萌え上がってくれ……っ!!

 うおおおぉぉぉぉぉぉぉーーっ!!


【フェチックス・性欲天翔】っ!!



『困りましたね、博士はあと一回でギブアップでしょうに、ラージャのイライラ棒はおとろえを知らず天をくばかりの勢い。はぁまったく困りましたまったくもぅ私をどれほど悩ませれば気が済むのですかまったく仕方ありませんくなる上は是非も無し、正妻ヴェーダ、参ります』



 え……


 アッーーーー……












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