第304話「軍法会議は……ハイ、必要無いです」





 第三百四話『軍法会議は……ハイ、必要無いです』





 九月十八日、午前十時、カスガ大陸南部は雨、最近お日様を見ていない。


 とは言うものの、今の俺は『です☆すた』から地上の様子を見ているので惑星を照らすお日様の光はガンガンに見えている。


 無論、カスガ大陸南部を覆う広大な雲海?も綺麗に見えている。不思議なもんだなぁ、あんなに綺麗なのに、その下は暗くて大雨だ。



 さて、そのドンヨリとした空の下、ガンダーラが征服した土地では凶悪な疫病に苦しむ大勢の魔族達が居た。


 ナンテコッタ……目頭が熱くなるぜ……っ!!


 素晴らしい、実に素晴らしい演技だっ!!

 演技指導した甲斐があった、役者冥利に尽きるぜ……っ!!


 少しオーバーにのた打ち回る者は気張りすぎの若手俳優の様で微笑ましい、アドリブで『クッ、負けるかっ!!』などと己を𠮟咤し病魔と闘うオスカー級の名優も居る。


 ドサクサに紛れて女性を看病する役に回るゴブリン男性が多いのは計算済みだ、あとからヴェーダに怒られる事を知った上で役得を選択する生き様を俺は評価する。


 ドサクサのドサクサに紛れてプロポーズする下っ端君は尉官に推挙したい。彼らは状況判断にけている(キリッ



『名簿を作っておきますね』



 うむ、そうしてクレメンス。良きに計らえメンス。

 敵スパイの動きはどうなってるメンスか?



『こちらをあなどっていますね、大胆にも其処彼処そこかしこで眷属達の糞尿や唾液サンプルを堂々と採取しています。抗体獲得済みの眷属達から得たその汚物からは例の病原菌が確認出来ますので偽装も完璧です』



 そりゃぁ舐めて来るだろ、三日も防諜行為をしなかったし浄化や再樹海化もストップしたんだ、逆にボケッとしてもらっちゃ困るぜ。


 何より、『ガンダーラのボス猿』が昨日の晩に山脈ダンジョンで捕まったからなっ!!


 向こうも調子に乗るだろ。

 ウェ~ハッハ~ッ!!



『ラージャが考案した【舐めプ作戦】が功を奏しました。おめでとう御座います』



 ばっか、お前、や~め~ろ~よ~っ!!

 正直に褒めるのはお前、や~め~ろ~よ~っ!!


 俺はただ、偽ゴリラがいつもの様にソロ無双した後にダンジョン内で大イビキいて眠れと指示しただけだ(キリッ


 寝た後は何をされても絶対に八時間起きない姿を数日見せろと指示を出したただけだ(キリッ


 って言うか、あの偽ゴリラはダンジョンなので不壊なわけだから、実質俺以上に硬ぇよな?



『うふふ、そうですね。仮に、その不壊性能ゆえに千年ほど虜囚の身となったとしても、偽ゴリラ内の眷属達は自由にこちらのダンジョンと往来出来ますし、転移先は大量に在ります。偽ゴリラ内に設置した魔界トンネルを通って魔界にも行けます、何の問題も有りません』



 だよなぁ、あの偽ゴリラ、って言うかあの移動ダンジョンシステムは画期的やなぁ。



『それはそうですが、今更感が在りますね』



 え、どゆこと?



『既に【です☆すた】が不壊の移動ダンジョンでしょう?』



 草。


 それヤバくね?

 不沈空母やんそれ。


 何で気付かんかったんや僕……アホやな。



『イズアルナーギも気付いていませんでしたよ? あの子が【です☆すた】を創った時はまだダンジョン化されていませんでした。ラージャがコア息子の【情事ルーカス】に管理を任せてダンジョン化した後、イズアルナーギも最新艦をダンジョン化し、既存艦も全てダンジョン化させました。あの子はラージャの真似っ子です』



 さないか、不可触神を真似っ子とか言うな(真顔)

 それを聞いて少しでも『ムッ』としたらどうする?(真顔)


 ムッとしたのでゴリラが居ない世界を創りましたとか有るぞ(真顔)



『それはアートマンが怒りますね、困りました』



 困る程度で済ますなアホ、お前は一度医者に頭を見てもらえ。

 根源改変と無敵意味不空間の戦争が始まるんだぞ?


 根源奪う→奪わせない空間→根源変える→変えさせない空間→権能根源奪う→奪わせない空間で対策済み→対策の根源奪う→根源奪い返し空間創ってた、みたいな感じの白目バトルなんだぞ?



『それは退屈な戦いですね、関わりたくないです』



 お前……


 ま、まぁ良い、とにかく、俺とイズアルナーギ様は姻戚関係の義兄弟、強い絆で結ばれた同盟も有る、真似もクソも無いのですっ!!


 そんな事より、偽ゴリラは順調に最奥へ転移させられたか?



『いいえ、最奥ではないようです、敵は相変わらず用心深いですね。現在は五百階層に新設された牢獄で身体調査を受けていますが、偽ゴリラはまだ寝ている設定で通しています』



 ふむふむ、調査って、鑑定とか?



『そうです、鑑定のたぐいは全て弾いていますので、調査は進んでいません。二人の魔人と顔を合わせるのはまだ先でしょう』



 そうか……まぁそうだろうな。


 捕まえたは良いが不壊じゃぁ手の出しようが無ぇ、肉体的な拷問の意味が無いとなれば精神を攻めるだろうが、心も無ぇからなぁ。


 いや、偽ゴリラに心は無ぇが、その中に居る眷属達や強化コアっ子がイラつくか……?


 ゴリラに対する侮蔑の言葉なんて、もの凄く多そうだしなっ!!


 でもまぁヴェーダも監視してるし暴走は無いかな?



『プルピエルとフオウが【です☆すた】から偽ゴリラ内に転移――プルピエルが尋問官六名を偽ゴリラ内に引きずり込みました、フオウが吸血して全員を眷属ゾンビ化……あの、どうしましょう?』



 おぅふ……

 監視対象を誤っていましたなぁ……



『身体調査の様子は全眷属が観察可となっております、ほぼ全ての眷属が尋問官の無礼極まる呟きに激怒しました。その中でもプルピエルとフオウは少し、その、アレですので』



 え、調査の様子ってみんな見てたの?

 あの病魔に苦しむ演技中の奴らも? 凄くね?


 俺は名演技に夢中で偽ゴリラに起きてる出来事を後回しにしていたと言うのにっ!!


 クッ、俺はまだまだ役者として未熟だった!!

 ピヨピヨ鳴く可愛いピヨ役者だ俺はっ!!



『あの、それは今どうでも良いので……』



 バカ野郎っ!!

 現実逃避だコノヤロウっ!!


 察してクレメンス……


 とりあえず、ゾンビになった尋問官は外に出せばバレるしスパイとしては使えない、偽ゴリラが殺したって事になるだろうから……


 今は先ずゾンビ君から何か情報でも聞くのが定石だろうか?


 最奥に辿り着く前に瘴気甲蟲軍団を出すのは早いか?


 二つのダンジョンの連携がどうなってるのかも分からん現状ではな……


 いや待て、その前に突撃サイコパスの二人をどうにかしよう。あの二人はもうアカギ大陸攻めに向かわせるのはどうだ?


 強化コアっ子達の『ダンジョン創造ぶらり旅』も良い感じで進んでるし、瘴気も狭い範囲なら十分満たしてる、イケるか?



『イケそうですね、ルシフェルも協力するでしょう。プルピエルとフオウの両名にはアカギ大陸攻めを命じます』



 オナシャス。


 俺はちょっと桃色空間でやる事出来た。


 お~い博士ぇ~、遊ぼうぜぇ~っ!!









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