第293話「地味に初入店?」





 第二百九十三話『地味に初入店?』





 九月四日、久しぶりに晴れた大森林で朝日を浴びながらの朝稽古は気持ち良かった。


 今は神木前広場で眷属達と井戸端会議中。

 うむ、ホンワカしていて良いですねっ!!


 長い九月三日が終わってホッとしたのも気持ち良さに繋がってるな。昨日ほど飲み物を多く勧められた日は無い。


 昨日の厠番大量加入事件後、エーちゃんの無差別浄化攻撃に驚いたのか山脈ダンジョンの養殖が一斉に退いた。


 分神と眷属蟲を放って周囲を探ったが完全に撤退した模様。


 その索敵中に飲み物を勧められて困った。面倒なので桃色空間に全員招待した。気付いたらフリンが全裸のアヘ顔ダブルピースで白因子まみれだった。見なかった事にした。



『小猿の邪悪な性癖と変わらないじゃないですか』



 ちょっと相方が何を言っているのか解らない。

 今はそんな事どうでも良いじゃないか……


 そんな些事さじよりもっと重要な出来事があっただろう?


 お前が言った事だぞヴェーダ、フリンは眷属ネットの『ヴェダペディア』で【托卵】の記事を読みふけっていたらしいじゃないか。アイツとは一度真面目に話し合う必要が有る。


 不倫するなら離婚してからお付き合いしなさいって話だよ。



『彼女は生粋の悪魔ですから、地上の倫理は通用しませんよ。アングルボザとロキに同じ事が言えますか? ついでに鏡で自分を御覧なさい、ブーメラン職人ですか貴方は』



 ア、アングルママは加害者だから……

 ロ、ロキさんは重病患者だから……

 し、神木前広場に鏡は無いから……



『言い訳ですか、好い男が台無しですね。ダッサ』



 ッッ!!


 クッ、少し前までデレが多かったのに、最近は俺のグラスハートを砕きに来やがる……なんて女だヴェーダっ!!


 じゃぁ何かっ、俺にフリンと不倫しろと言うのか貴様っ!!

 アングルママをアングルヨメにしろって言うのか貴様はっ!!



『今更ですね』



 それなっ!! たはーっ!!



『サイコパスが常識人ぶって悩む振りなどするから……』



 クッ、良いじゃないかっ、九割九分の異常で出来た俺が一分の正常を使ったって良いじゃないかーっ!!



『プッ、一分の正常って、ププッ、無いでしょそんなもの、ンもう、冗談が過ぎますよ?』


「えっ?」


『ん?』



 い、いや、何でもねぇ……

 一分の望みが消えるとはこの事か……


 とても悲しい気持ちになったぜ、こんな時はダンジョンアタックで虐殺するに限るなっ!!


 よ~し、朝飯食ったら山脈ダンジョンに初アタックするモンニ!!



『随伴は誰に?』



 う~ん、今回は俺の中に住む『新たな住人』が居るしなぁ……適当な所までソロだな。道中は浸食しながらトンネル設置したり街を創造したり……その後、希望者を攻略に加える、かな?



『畏まりました、今から募集しておきます。護衛隊は厠番に編入させます、もう厠番が護衛のようなものですから』



 人気職だからなぁ厠番。配置換えの希望が多いんだろ?



『そうですねぇ、ラージャが近衛を置けば状況も変わると思いますが、厠番はラージャの一番近くに侍る事が出来て尚且なおかつお手付きのチャンスも有りますから、現状ではダントツ一番人気ですね』



 お手付きのチャンスって言うか、それ確定だよね?

 今のところ男神官以外の全員に手ぇ出してるんですが?



『何か問題が?』



 無ぇなっ!!

 よっしゃ、メシ食いに行こうぜっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ハイ、やって来ました山脈ダンジョン。


 何とこのダンジョン、マハルシがその座を奪うまではダンジョンランキング一位の絶対王者だった。


 旧二位と三位はカスガ大陸の北部かアカギ大陸に在るのかな?


 って言うかさぁ、そりゃまぁ二人の魔人がダンジョンを統合して運営すりゃぁ一位にもなるだろうよ。ちょっとやり口が汚ぇと思わんでもないが結構どうでも良いねっ!!


 そもそも、魔皇帝とイズアルナーギ様の親子がエイフルニア大陸に居続けたら俺が一位を獲れてたのかも怪しい。まぁ半分タナボタだな。


 だってイズアルナーギ様は高スペックのコアを大量生産出来るんだぜ……頭オカシイよ。


 オマンのコアっ子も大概だが、イズアルナーギ様は制限が無い、無限に作り出せるらしい。うん、やっぱオカシイよあの幼児様……



『現在ではイズアルナーギの眷属全員が大小様々なコアを所持しているそうです。オルダーナの話では神域の倉庫に使わないコアが山積みされているとか』



 おぅふ……


 オルダーナは何個かパクっても良いんじゃないかな……



『盗まずとも貰えるでしょう、イズアルナーギは親兄姉に甘いですし昆虫以外欲しがりません、物欲がゼロに等しいですよ不可触神は』



 今度オルダーナに頼んでみりゅ……


 さて、頭がオカシイ神様の話は終わりだっ!!

 ここからは俺のターン(小並感)


 第一階層はオーソドックスな洞窟……かと思いきや、小綺麗な総大理石造りの広いエントランスに上下の階段が御座いますぞ?


 山脈と地下の二層構造か、ジュダス帝国のダンジョンに近いが、あっちは片方がサブだったな。


 しかもこのダンジョンはエントランスにデカい冒険者ギルド支部的な建物も在る……こりゃぁ人類とズブズブやの。


 早速、ギルドからワチャワチャ冒険者共が出て来た、何か多いな?



『我らの不死狩りや南部攻略軍の進軍で山脈ダンジョン付近は人類から見れば超危険地帯、冒険者達はダンジョンから出るに出られぬ状況でした』



 ほほ~ん、なるほどねー。


 って言うか相変わらずママンの天罰は効き目がスゲェなっ!!


 獲物を釣る為に神気を極限まで抑えているとはいえ、俺の存在は驚異だろう、だがビビッていても出て来る天罰効果に脱帽ですなぁ。


 久し振りに四方八方から殺意を向けられたぜっ!!

 ギンモヂ良いぃぃぃ~~っ!!


 ナマイキなので今すぐブッ殺してやりてぇが……少し待ってろ。


 眷属になった精霊達が俺の中で騒ぐんだよ……

 早くテメェらを殺させろ、ってな。


 やっぱ俺の考えは正しかった、精霊は環境に染まる。

 サイコゴリラに汚染された精霊は悪意マシマシだぜっ!!


 さぁブッ殺せ、ヴェーダママから薫陶宜くんとうよろしきを得た大自然を司る子らよっ、大魔神の神霊に進化したお前達の力を見せてやれっ!!



『分神をこの子達に与えて下さい、憑依して肉弾戦もはかどります』



 それイタダキっ!!


 ファサ~、ファサ~、ファサ~、ファサ~……



“野郎っ……鼻毛をっ!!”

“舐めたマネしやがって……”

“アタイは久しぶりにキレちまったよ”


“むっ、見ろ、鼻毛がそよ風に乗って……”

“ななな、何ぃーっ、鼻毛がボフンと煙を上げて……”

“小猿、か? 色違いの小猿がこんなに……どうなってる?”



 イキナリ鼻毛を抜きだしたゴリラに困惑する冒険者一同。

 解るぞ、俺だって困惑する自信が有るっ!!


 ついでだ、困惑したまま死ね。



“なっ、速いっグハァーッ!!……”

“リーダーっ!! 畜生がぁブッ殺ゴボァァ……”

“近接タイプの魔族だっ、魔法で攻……吸収した、だとっ!?”


“こいつら風属性魔術も達者だぞっ障壁を張れっ!!”

“ギャアァァッ、凍るっ、俺の脚が凍るっ、誰か助……”

“クソッ、こっちはデケェ炎の玉だっ、障壁を使い分けろっ!!”


“待て待てっ、こいつら……何種の魔術が使えるんだよ……”

“右側っ、障壁薄いよ何やってんのさっ、アタイの髪ギャァー”



 ふむふむ、良い感じに殺してるじゃぁないかっ!!


 分神の近接攻撃と眷属として受け継いだ魔術と耐性、そして自分の属性魔法全てが使える上に絶対的な自属性耐性持ち、完璧やなっ!!


 俺の眷属は火・土・金・呪殺の耐性が必ず付くが、火精霊と土精霊は耐性が【吸収後反射】に上がってる、俺と同じだ、やるじゃん!!


 うむっ、ここは神霊達に任せてヨシっ!!

 お母さんっ、子守は頼みましたよっ!!



『はいはい』


『『呼んだか?』』

『『子守は不得手ぞ』』



 あ、お母ちゃんじゃないです。ヴェーダお母さんです。



『『然様か、いつでも母を頼るが良い』』

『『如何いかにも、汝を子守る時は任せよ』』



 あ、ハイ、その時はお願いしますね~っ!!



『子守られるんですか、その歳で……(もっとバブらせた方が良いのかしら?)』



 うるさい黙れ。

 俺は永遠にアートマン大好キッズだ、ヨロシクぅ。


 さぁて、僕は冒険者ギルドに行くモンニ!!

 実は前から興味有ったんだよ、ギルドの鑑定宝玉っ!!


 丘陵街セパルトゥラの宝玉は研究と改良の為にヴェーダに渡したからな。今度は俺がイタダキマンモス。


 美味しかったら征服地の鑑定宝玉は全部没収します。


 いざっ、冒険者ギルド山脈ダンジョン支部的な感じがしないでもない気がする所へっ!!



 はいはい退いて下さいね~、踏み潰しますぞ~。



「行かせないよ、大猿君」



 何だコイツ?



『勇者ですね』



 じゃぁ殺すか。







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