第289話「三年寝太郎な感じの爺ィ」





 第二百八十九話『三年寝太郎な感じの爺ィ』





 九月二日、朝、カスガ大陸南西部は晴れ。


 今日は魔ドンナの新婚ダンジョンに来ている。


 別にアホ夫婦に会いに来たわけではない。山脈ダンジョンに近いから来ただけなんだからねっ、勘違いしないでよねっ!!



『魔ドンナは勘違いしているようですが』



 知ってるから言わなくて宜しい。


 朝っぱらから訪問は悪いと思って土産に神木美容液を渡したら物凄いボディタッチを受けた。


 ボディタッチと言うより股間タッチを受けた。ハレンチな息子嫁である、股間がイライラしたのは言うまでもない。


 だがしかしっ、さすがに息子の嫁を手籠てごめにするわけにはイカン。


 断腸の思いで『よさないか』と叱っておいた。コア息子のゴッドフィンガは目が死んでた。



『胸を揉みながら叱っても……』



 バカ野郎ヴェーダこの野郎っ!!

 神瘴気アームが勝手に生えて勝手に揉んだんだろうがっ!!


 まぁ、息子の嫁に冷たくしたり邪険に扱ったりは出来んじゃろう?


 そんな俺の心裡をんでエロアームがやってくれたんだ、現に魔ドンナは床の上でけヅラ晒してビクンビクンしているじゃぁないか。


 うむ、何の問題も無い。


 そんなエロ嫁の話は置いといて、外の話をするぞっ!!

 ヴェーダ君、データを出してクレメンス。



『はいはい』



 ふむふむ……


 山脈ダンジョンから湧いて来るスパイ養殖は枯れる様子が無い、か。


 お陰様でホンマーニ達のような神職眷属が大活躍、メキメキと力を伸ばしているな。有り難ぇこった。


 って言うか、ホンマーニは四つ子の女の子を出産し、産後間もないと言うのに稼がねばと張り切っている……が、何を稼ぎたいのか分からない。


 嫁さんズは金銭面(DP)や衣食住に問題は無い、となるとホンマーニが稼ぎたいモノは経験等の目に見えないモノか?


 とは言っても戦闘経験はマハルシで長く積んでるしレベルも高い、桃色空間でスキル熟練度は現界突破、おまけに彼女はパイズリン、種族の進化も極めている。


 では、戦闘経験以外に稼ぐモノとなれば……功績か?


 しかしホンマーニは薬品造り等でかなりの功績があるからなぁ、って事は次は軍功が欲しいのか?


 いやぁもう要らんやろ~、この山脈付近で狩った養殖の数が膨大過ぎて軍功パンパンやぞアイツ……


 う~ん、解らん……


 ホンマーニの軍功は十分だし役職は巫女の長、そして位階正二位しょうにいの魔神妃、その上は正一位の俺と従一位じゅいちいのヴェーダしか居ない。


 つまりホンマーニは位人臣くらいじんしんを極めていると言っても過言ではない、もう位階の上げようがない。


 果たして彼女は何を稼ぐと言うのか……



『魔核を集めているようですね』



 それはナニユエ?



『集めた魔核を娘達に渡し、それをアートマン神像に娘達の手で捧げて欲しいようです』


「なっ……!!」



 クッフゥ~……天晴れっ!!


 実に天晴れであるっ!!

 正に眷属の鑑っ、いや、真我教徒の鑑、母の鑑っ!!



『アートマンもほんの少しだけ笑みを浮かべましたよ、とても珍しい事です』



 え、俺にはいつも優しい微笑みを浮かべてくれてるじゃん、顔をハッキリ見た事ないけど笑ってる感じじゃんっ……え、実は笑ってなかったの?


 ってアフゥん、有~り難う御座いまぁ~す!!



『『我は常に可愛い息子を見て微笑んでおる』』

『『然様、母の女陰ホトを貫いた愛息観察に笑みが絶えぬ』』


『むしろラージャを見ていない時が無いですね、神々を滅ぼす時も片手間でメインはラージャ観察ですよアートマンは。勿論ニッコリ微笑んでいます』



 そ、そうなのか、笑ってるならいいや。

 ママンが不穏な事を言ったのは気にしない……



『中出ししたくせに……』



 ッッ!!


 おま、お前何言ってんの?

 バカなの? ジャキなの?


 天まで届いたアレは性宇宙セクモかたまり的なナニかであって俺のビッグボーイではない、いいね?



『そう言う事にしておきましょう』



 うむ、お願いします、素直な君が好きです。

 あ、体内からチンサスはヤメテ下さいイッてしまいます。


 ふぅ……


 今日の厠番も良い動きだな。君の名前――


 ってフリンやないかーーい!!

 旦那んとこ帰らんかいボケーッ!!

 お前スーレイヤの女官長やろがーい!!



『旦那の甲蟲将軍カナリが同世代の氏族長と共に吉原へびたっておりますので……』



 それは……フリンにどうこう言えんな。


 で、カナリの同世代って誰だ?

 ミギカラやハードとも同世代だろ?



『ナナメニ・チク=ビナメル氏族長です』



 あぁぁ、あのドスケベ爺ィかっ!!

 アイツほどウダツが上がらん氏族長も珍しいよなぁ。



『うふふ、そうですね。ですが、ナナメニは生まれながらに【剛力】スキルを持っています、気質がノンビリしているので宝の持ち腐れ感は有りますが、戦いでは常に前線で活躍していました。軍功は部下に譲る傾向が見られますね』



【剛力】か、俺の【怪力】の下位互換だったな……


 ほほ~ん、なるほどなー。

 進化はどうだ、ハイジェネラルまで行ったか?



『ええ、ハードよりも先に。進化後は息子を族長代理に置き、自分は悠々自適に吉原通いの隠居生活を送っています。私見ですが、非常に勿体無いかと』



 ふむふむ……


 お前さ、ナナメニが好む女性のタイプって分かる?

 知ってたら教えてクレメンス。



『存じております……こんな感じの女性ですね』


「……これは、アングルママ?」


『アングルボザに似た力強く豊満な肢体を持つ女性が好みです。吉原では必ず大柄な美女を指名しています。さてラージャ、ナナメニに臣籍降嫁しんせきこうかさせる娘は誰に致しましょうか? うふふふ』


「大柄な娘が居ねぇんだけど……」


『では、大柄な娘を願ってオマンと子作りを』


「あぁ~、アングルママと言うモデルが居るから上手くいきそう。でも確実じゃないなぁ」


『そうですねぇ、ならば……アングルボザの故郷『ヨトゥンヘイム』には巨人しか居ませんから、ひとまずそこから第二夫人としてナナメニの嫁を募集してみます』


「オナシャス」


『アングルボザは娘も生みましたが、まだ幼いので降嫁させるには早すぎますから』


「あ、うん……」



 それはロキさんの子だと信じている。


 降嫁の話は魔王ロキの娘が臣籍に入る、と言う意味だと信じている。


 取り敢えず、ナナメニを釣り上げて山脈ダンジョン付近の北側を掃除させるか。



『ナナメニを召喚しますか?』



 あぁ……一応話は通しておいて下さい。

 俺はオマンと頑張って来ますわ。



『そう言えばラージャ、エーちゃんをホンマーニのエクソシスト部隊に同行させましょう。レベル的にも十分仕上がっています、分神の護衛が付けば何の問題も有りません』


「エーちゃんを? 何で? 不死系を消せる攻撃持ってんの?」


『うふふ、彼女らしいスキルを獲得しました、凄いですよ?』



 ほほ~ん、お前が言うなら大丈夫だな。

 オッケー、じゃぁ分神を大量に置いてくわ。


 ファサ~、ファサ~、ファサ~、ファサ~……


 さぁ小猿君達っ、お仕事の時間ですよっ!!

 コラコラ、魔ドンナにイタズラす……入れやがった……


 ま、まぁ、こんな事もある、大丈夫だ、問題無い。

 魔ドンナも喜んでいる、大丈夫だ、問題無い。

 ゴッドフィンガの目は死んでいるが大丈夫だ、問題無い。


 じゃ、じゃぁヴェーダ、後の事はヨロシクっ!!

 ホンマーニに無理すんなって言っといてっ!!

 エーちゃんの保護観察は厳しめになっ!!



『うふふ、はいはい、行ってらっしゃい』



 イッて来まーっす!!









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