第279話「それもそうだな……」





 第二百七十九話『それもそうだな……』





 八月十七日、午前十一時。


 カスガ大陸南西部の攻略済みダンジョン入り口、天気は晴れ。


 俺は昨日結婚した魔ドンナとゴッドフィンガを連れ、新婚夫婦に与えるダンジョン巡りをしている。


 森に囲まれた丘陵に開くダンジョンの入り口をイチャ付きながら調べる新婚夫婦……ここで四カ所目だが、入り口やその周囲の風景に魔ドンナがやたらとこだわる。


 後から妖蟻に頼んで地形をイジってもらうなりデカい城を建てるなりすれば良いじゃねぇか……メンドクセェ。


 もう仮の住居で良いからサッサと人畜を飼いやがれっ!!

 無駄なんだよこの時間が……四時間も経ってんだよっ!!


 しかも、今日は魔ドンナの頼みでオマンが俺のお伴だ。何気に初外出なんだよなぁオマンは。コイツが喜んでくれているのが唯一の救いか……


 救いは有る、有るが、キツい……


 互いを『魔ディ』と『ゴディ』って愛称呼びしてるのがキツい……


 それ以上に新婚夫婦の野外セクハラがキツい……


 早速バカ息子がヤり始めた……



「あぁ~コレ、何コレ、ねぇ魔ディ、何コレ、俺の指に付いてるの何コレ、あぁ~伸びちゃう、見てコレほらビヨ~ンて、ヌルッとしてほらビヨ~ンて、糸引いちゃってコレ、あぁ~スッゴイ滑るコレ、潤滑スゴイこれ、何コレ、ねぇ何コレ?」


「ヤダぁ~、ちょ、見てるからぁ~、お義父とう様とお義母かあ様が見てるからぁ~、恥ずかしいからぁ~、ソレの名前なんて知らないからぁ~」


「あぁ~コレ、ねぇ魔ディこれ、何かイヤラシイ匂いがするねコレ、何で何で? ねぇ何で?」


「もぅヤダぁ~、嗅いじゃ駄目ぇ~、ちょ、あ……待って待って立ったままはダメだって、ほら見られてるからぁ~、あ、あぁ、ンもぅヤダぁ入ってるよゴディ入ってるぅ、バレてるよこれバレてる、あ……出てるぅ、ちょっと~、また無許可~、メッだぞ?」



 いやぁ~キツい……


 息子のネッチョリとしたセクハラもBBAの胡散うさん臭ぇ『ダメダメ嫌なのぉ』を見るのキツい……


 何だこれは、『メッだぞ?』じゃねぇよ……


 俺とオマンの周りに居る侍女や護衛達もキツそうだ。頬を染めているあたり俺とは違うキツさを味わっている模様。


 ゴッドフィンガが連れて来た悪魔侍女達は平気そうな顔をしている、まぁ慣れたもんだ。


 問題はオマンだな、いや問題じゃねぇけど……バカ息子夫婦を見守る目が柔らかい。コイツは聖母だな。


 魔ドンナが是非にと言うのでオマンを連れて来たが、どうやら五帝のコアであるオマンをスーパーアイドル視しているようだ。その気持ちは分からんでもない。


『オマン湖ダンジョン』はダンジョンランキング不動の五位だったからな。トップテンにも入っていなかったパパドンプリーチ城の主としては、オマンが雲上人に近い存在だったのかもしれん。


 なので、初顔合わせの時は大変だった。魔ドンナがダンジョン運営の助言が欲しいだの何だの言ってオマンに話し掛けまくってたからなぁ。


 そうなると、オマンの元マスターの話にもなる。


 なんつったっけアイツ……

 あぁ、マスター・オナニーだ。



『マスター・ベーションです』



 そうそう、そんな感じのアホ。


 そのションベン君の名前が出たもんだから、オマンがキョドりまくった。


 何故か俺に『違うのっ、違うのっ、浮気じゃないのっ、真実の愛を知らなかっただけなのっ、信じてお願いっ、今は貴方だけしか見てないのっ!!』って泣きついて来て困った。


 泣き止ませるのは一瞬で終わったけどねっ!!



『ダンジョンコアが射制力センズリック性宇宙セクモと膨大なフェチモンを至近距離で浴びれば昇天必至、男であるゴッドフィンガもイキ地獄を味わったと申していたではありませんか』



 ゴッドフィンガは射制力にてられたみたいだな、性宇宙とフェチモンには耐えていた。



『まぁ男ですし、ラージャの白因子で作られたコア息子ですから、コアに特効の有る射制力以外は耐えられるでしょう』



 だなぁ、って言うか、あの一発で心に眠る性宇宙を感じ取ったのはさすがだ。今後の夫婦生活で極められると思う。



『新居が決まったらお祝いにもう一発放って差し上げれば宜しいのでは?(ドキドキ)』



 う~ん、そうだなっ!!

 もう一発萌やせば獲得も早まるなっ!!



『ですです(イエスッ!!)』



「あンっ、こら野蛮人っ、性宇宙が漏れてるぞっ、まったく、我らの息子夫婦が見ているのにまったく、恥を知れまったく……あっ、あっちの木陰でどうでしょうか? こうドレスを巻き上げる感じでですねぇ――」



 しまった、左腕に抱いているオマンのパイオツにイタズラしていたら性宇宙が漏れてしまった。


 今日のオマンは深い青のドレス姿、そのドレスの裾をツツツと上げて生足を見せてきた……ヤんのかこの野郎っ!!


 お望み通り木陰でハッスルしてやんぜっハァハァ……


 と思ったらアホ息子が声を掛けて来た……


 初めて息子に怒りを覚えたわ俺……



「お~い親父ぃ、このダンジョンにするわ~、ヨロシクぅ~」


「……ああそうかよ」



 丁度良い、新居祝いに一発くれてやる。



「オマン、しっかり掴まってろ」

「ん? 何だとぉ生意気なっ(ガシッ)こうですかっ!!」


「あぁ、それでいいぜ……【フェチックス、性欲天翔】っ!!」


「ぴゃ~、バカバカッ、こんな素敵イッぐぅぅぅぅ……」


『ンッ……あぁ~、イイですねぇ、そろそろ慣れイッぐぅぅぅ……』



「うわああぁぁヤメテくれ親父ぃぃンッホーーーッ……」

「ッッ!! お義父様のスゴイのがまた来イッぐぅぅぅ……」



“整列っ、陛下のお情けだっ、かしこまって頂戴ッぐぅぅ……”


“厠番の意地を見せなさい貴方達っ、今が踏ん張りどこイッぐぅぅ……”


“班長、私は侍女になって幸せでした、またお会いしまイッぐぅぅ……”



“クッ、これが毎日オマン様が浴びていたと噂のイッぐぅぅぅぅ……”


“フフフッ、コア息子様にみさおを捧げたのは誤りだったかしらイッぐぅぅ……”


“ヒュ~、魔界じゃぁ味わえない快感だねぇ、でも私は負イッぐぅぅ……”



 成敗っ!!



「父親の俺がオメェにくれてやる最後の結婚祝いだぜゴッドフィンガ……けっ、聞いちゃいねぇ」



 って言うか誰も聞いてないねっ!! ヨシっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ふぅ……


 気を失った女性達にイタズラしながら介抱するのは骨が折れるなぁ。


 全員が目覚めるまで二時間も経ってしまった。


 俺の股間が二時間ちっぱなしだったのは言うまでもない。



「お義父様、それであのぉ~、アカギ陛下のご助力を……」


「ん? あぁ、妖蟻の工兵部隊か、良いぜ、話は通しておく」


「ホッ、有り難う御座います、でしたら一度ご挨拶にうかがいたいと思います」


「そっか、じゃぁ部隊投入前に挨拶しとくか?」


「是非」



 正常時の魔ドンナは立派なレディだなぁ……

 色ボケ時との差が有りすぎる、残念な奴だ。


 おっと、そんな事より聞いとかなきゃ。



「それで、どうだ? 召喚出来る養殖の種類は増えたか?」


「はい、最上級のヴァンパイアまで召喚規制が解除されました。早速この辺りの養殖精霊共を殺しましょうか?」


「いや、外に出す必要は無ぇ、ダンジョンの中に入った奴だけ殺せ。今はDPを稼ぎまくって力を貯めろ、魔界トンネルもクソほど設置してやる、ダンジョン住民一億目指してパパドンプリーチ城を超えな……『高級そうな皿テラ・タカソッス』も浮かばれる」


「ッッ!!……ぐすっ、有り難う御座いますっ、うふふ、私は良き義父を得ましたよテラ・タカソッス……」


「けっ、新妻が旦那の知らねぇとこで泣くんじゃぁねぇぜ」


「うふふ、はいっ!!」




『魔ドンナのラージャに対する好感度が上限突破しました、おめでとう御座います。あ、今ラージャとの逢瀬を妄想してイキそうになっております』



 その情報は要らないかなぁ。

 さすがに息子の嫁には手を出さんよ僕ぁ!!



『ですが、彼女は義父と夫から同時に責められる状況を心から望んでおりますよ? アートマンにその願いが届くほど強い想いです』



 ヤベェなコイツ……

 もっと違うところに力を入れろよ……

 ママンへのお願いがくだらな過ぎて切ない……


 まぁいいや、取り敢えず今から新婚さん達をアカギの許まで連れて行く。



『では、都市建設予定地域を瘴気甲蟲軍団と魔族系眷属に清掃させておきます。対闇霊はラージャの分神にお任せしても?』



 それが良いだろうな、甲蟲のエサと眷属のエサまで奪う必要は無い。眷属はまだ神気攻撃が弱すぎる、闇霊退治は時間を食うだろ。


 いや待て、ホンマーニ率いる巫女衆や宮掌くじょう衆と聖女ファクミーの神官団に浄化させろ、あいつ等なら闇霊も消せるし聖霊の攻撃にも耐性が有る、分神はその護衛に回せ。



『畏まりました』



 うむ、後は任せたぞヴェーダ君っ!!


 それでは、さっきから俺のたくましすぎる首に抱き着いて離れないデレっ娘オマンとバカ息子夫婦を皇城に連れて行きましょうっ!!



『あら、マーラがパパドンプリーチ城にコア娘を招きたいと申しております。マジ大切にするから、正妻に迎えるから、と』



 そ、そうか。


 出来ればクズに娘を嫁がせたくないんですが……


 普通のサブコアじゃダメかな?

 メス人畜百匹じゃダメかな?



汚物ジャキに嫁がせているので今更では?』



 ヒドすぎワロタ。










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