第273話「思った以上にイカロス」





 第二百七十三話『思った以上にイカロス』





 八月八日、朝、大森林は晴れ。本日は『パパの日』です。


 今日は全国のパパをいたわりましょう。

 色んな意味のパパを労わって下さい。


 娼館は『パパさんデー』です、料金五割引だそうです。


 各ダンジョン街のキャバクラ的なお店も『パパ大好き』なイベントをやっています。午前零時から始めています、ヤる気が感じられますね。


 でも僕には関係の無い話です、帝王は夜のお姉ちゃんと遊べません……


 帝王は神域の宮殿で子供達と遊ぶのです、もう何人居るのか分からない我が子達と分神を交えながら遊ぶのです。私の子供達は全員が神族なので、神域でもヘッチャラです。


 イモ息子君が私の背中に張り付いて離れません。イモ息子のお世話をする蟲系チビッ子侍女達が私の背後を囲んでいます。少し邪魔です。


 このチビッ子侍女や他の『お伴チビッ子眷属』は、ママンから神域で活動出来るように今日だけ特別に根源改変されています。やったね!!


 長男のゴム丸君は『近接肉弾戦至高派』のチビッ子達に人気です、脇腹のえぐり方とかを語り合っています、バイオレンスな派閥です……


 真神お姉様のケモミミ娘ちゃんは圧倒的に獣系チビッ子眷属に推されています。娘ちゃんの赤い和装は、まるで七五三のお参りに来たジャパニーズガールのようです。物凄い姫様感が漂っています。


 ケモミミ娘ちゃんから少し離れた場所には……

 アレはファールバウティの血族系でしょうか……


 全裸の小っちゃいゴリラ君が居ます、アングルママとの子ですが、その周囲を黒服を着た悪魔達に囲まれています……何で居るんだろう。


 チビゴリラ君の隣にチョコンとお座りしているのは、ヘルが産んだ長女ですね、見た目は二歳児くらいでしょうか、長い黒髪で口以外が隠れていて表情が分かりません。黒いドレスはヘルの趣味かな?


 この長女ちゃんの周囲には冥府で働く侍女達が付いています。彼女達もママンに根源改変されていますね、安心して声を聴けます。


 長女ちゃんの頭上で渦巻く深淵ちゃんは異母姉に何か話しかけているようです、それ大丈夫?


 あとは……正統派、と言うか、オッパイエとムンジャジの息子がリリスのリリム達にイタズラされています。異父弟を可愛がっている、のかな? そう信じたい。


 サタナエルの息子も居ます、この子も二歳児くらいの見た目ですが、何故かシタカラ達鬼神が担ぐ神輿みこしに乗って脚を組みつつ頬杖を突いています。何でしょうか、覇王の宿命を背負っていそうな感じです。



 パッと見て目立つ子達はこのくらいかな、他はまだ赤ちゃんなのでママンの所から応援に来た天女達が抱っこしてる。


 しっかし天女さん達は……何であんなに美人なんだろうか、勤め先にいきどおりを感じざるを得ない……っ!!


 さすがに母親の所で働く女性に勃起をきたすのははばかられる。



『チビッ子侍女がりますので勃起は我慢して下さいね』



 ああ、我慢している、しているさ……


 スケスケの水色インドサリーを来た天女さんを直視しないように努力もしている。


 スケスケ衣装は天女の仕様だと理解しよう……

 しかし、ノーパンノーブラは理解出来ても納得出来ないっ!!


 何故か俺の視界に入り後ろを向いて足元のゴミ的な何かを拾う為に前屈する天女さんを俺は一生赦さない……っ!!


 何故か俺の視界に入り開脚多めの様々なヨガポーズをとって子供達を喜ばせる天女さんを俺は一生恨むだろう……っ!!



『アートマンの嫡子たる帝王のお手付きともなれば、神域での権力は絶大なものになりますから。筆頭天女の地位は間違い無し、子は確実に孕むので魔神妃に次ぐ立場となります。彼女達もラージャにアピール出来るわずかな時間を有効に使っているのですよ、微笑ましい』



 なるほどなー。


 でも『おきさき様』に次ぐ立場か、『めかけ』じゃねぇよな?



『称号としては『夫人』でしょうか、ちなみに私は『后』の称号となります、正室ですからっ(キリッ』



 あはは、ヴェーダ皇后? ヴェーダ帝后?



『魔神后ですから【ヴェーダ神后】で』



 何か強そう……

 妊娠したまま隣国征伐とかしそう……



『しませんよ面倒臭い。あぁそうそう、先日の分神貸出の件ですが、男性眷属への特別賞与はラージャの妹ナオコが出してくれるそうです』



 え、良いの?

 魔皇帝がよく許したな……



『分神を完全に切り離すそうです。見返りとしてFPで購入出来る高価な美容品を要求されましたが、受けますか?』



 FP下賜品か、DP製品は向こうでも生産出来そうだし、希少価値は妹も分かってんだな、オッケー、それで行こう。


 ママンに対する信仰心で貯まるFPは全然使ってないからな、余裕は有る。ママンへの祈りでナオコの分神が贈られると皆が知れば、『アートマン信仰』も更に篤くなるだろう、最高じゃねぇか。



『『何と言う孝行息子か……』』

『『愛らしいにも程がある……』』


『うふふ、そうね』



 よ、よせよ、照れてしまうんだぜっ!!

 照れてしまったのでキッズの群れに突入するぜっ!!


 そりゃーっ!!

 ゴリラが出たぞーっ!!



“キャハハッ、父上が来たー、逃げろー”

“わーい、もっこり父上だー、逃げろー”

“父上はどうしていつもモッコリしているの?”



 気のせいだ子供達よ、父はモッコリしていない、いいね?



“あ、御子様っ、おしになって下さいましっ(ポッ)”


“きゃぁ~、御子様っ、お子様方が見て……おたわむれを~(ポッ)”


“いゃン御子様っ、天女の羽衣を御立派な『お大事』に巻き付けるなんて……(ポッ)”



 天女達よ、これは子供との触れ合い中に生じたアクシデント、私が全裸になったのも君達が全裸になっていくのもアクシデント、いいね?


 うむっ、理解出来たようで何より。


 では、大人の鬼ごっこ始めるよ~っ!!


 無論、鬼は私だっ!!

 天女は無人の個室に隠れるように、いいね?


 さぁ私が百数える前に隠れたまえっ!!


 い~ち、にぃ~、さぁ~ん、しぃ~、ごぉ~……



 ったく、異世界の『パパの日』は最高だぜっ!!



『ラージャ、保護した翼人族の女王が決闘を申し込んで来ました』



 ……えっと、誰に?



『人外帝王マハトマ・ナオキに』



 え、どゆこと?

 自殺願望が有んの?



『先日の謁見でラージャを見た瞬間に気絶した事を覚えていない様で……“翼人の島を返せ”と……』



 お、おう。


 でもそれって、どうせ俺を見たらまた気絶するんじゃ……

 って言うかアレは気絶じゃなく絶頂……



『そうなんです、どうしましょう?』



 ええぇぇ……


 こ、これは……

 思っていた以上にイカロスだぜ……








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る