第272話「保護や保護っ!!」





 第二百七十二話『保護や保護っ!!』





 八月三日、午前、大宇宙のお天気は表現の仕方が分かりません。


 本日は戦艦ヴェーダの姉妹艦【HGSハーゴッデスシップアングルボザ】の出港式に出席しています。


 艦名は嫁さんズ会議で決められました。サタナエル派が悔し涙を流していました。


 艦の専属コア息子は『イグチヒラー』、艦と運命を共にする誓いを立てた戦艦大好きマンです。


 戦艦アンジーと愛称で呼ばれる事になったこの巨大戦艦は、俺が乗る『御召艦おめしかん』ではないので、艦長に古参ゴブリン眷属の『コカゲデ・ハードエ=スエム』氏族長を任命した。甲蟲将軍カナリの同期だな。


 ミギカラやカナリに比べると積み上げた勲功は劣るが、長年にわたり大森林の南浅で氏族長をやって来ただけあって、人の纏め方が上手いし責任感も強い。これから幾らでも活躍出来るだろう。


 先日、コカゲデは長年連れ添っていた嫁さんと離婚(ニート悪魔にネトラレ)したが、ほぼ連日となるコカゲデの娼館通いが原因なので、僕としてはご飯が美味しいですザマァ。


 戦艦アンジーの副艦長や各要職員は、ヴェーダが推薦した者をコカゲデがそのまま受け入れた。少し目が死んでいたが『尊妻様が選んだ者なら』と何の不満も無かったようだ。


 推薦された全員が男だったのはヴェーダなりのお仕置きだろうか、女性眷属の心を護るヴェーダのしゅうとめ感が否めない。僕はヴェーダの考えを推すねっ!!



『乗組員を全員男性眷属にしたいと思っています』



 そ、それは……

 せめて艦内に娼館フロアを……

 悪魔娼婦達も喜ぶと思うし……

 戦闘時はマハルシに転移って事で……



『ふむ、DPを自前で稼ぐと考えれば……宜しい、娼館フロアを増設しましょう。あ、男娼館も二つほど必要になりそうですね』


「え、それは娼婦用にって事?」


『いいえ、兵士用ですが?』



 あ、そう言う……



『魔獣娼館も必要ですね』



 深ぇ、業が深すぎるぜ大森林……


 何だろう、宇宙に向けて発艦した戦艦アンジーの後ろ姿に悲壮な覚悟が見え隠れする……


 ガンダーラの未来を背負い過ぎだぜ、お前ら……っ!!



『そう思うのでしたら、ラージャの分神も艦の娼館で働かせてはどうでしょうか?』


「え、ヤだけど」


『それは何故でしょうか?』



 いや、男の娘はイケるが、ガチはちょっと……


 それに艦内の異性愛者から不公平の声が挙がるじゃないかっ!!



『分神を女体化すれば良いのでは? むしろそうすべきなのでは? 帝王は公平であるべきなのでは? 前線の兵に進んで股を開いて然るべきなのでは? 女性の心を理解出来る良い機会なのでは?』



 なん、だと……っ!?

 小猿君を女体化……っ!?

 公平な帝王は股を開いて当然……っ!?

 俺は女心を知らない童貞ジャキ不様ジャキな坊やだと……っ!!


 だ、だがしかしっ、さすがに女体化は……



『あ、御免なさい、無理でしたね、好い男(笑)には難しかったですね』



 で、出来らぁっ!!!!

 戦艦アンジーに本物の処女航海をさせてやらぁっ!!


 ファサ~、ファサ~、ファサ~、ファサ~……


 さ、さぁ行くのです小猿ちゃん達よっ!!


 嫁さんズ仕込みのテクを荒くれ共に見せておやりなさいっ!!



“うっきぃ~っ!!”

“さんぴぃ~っ!!”

“りんかんがっこうっ!!”



 小猿ちゃん達はとても不吉な言葉を発しながら、和気あいあいと戦艦アンジーへ転移していった。



『す、凄いフェチモンでしたね……(大丈夫かな?)』


「いや、俺、自分のフェチモン知らんし……」



 どんなもんか知らんが、仮に強烈なフェチモンだったしても、やられる事って小猿君がメチャ達に襲われる感じのアレだろ?


 世界各地で小猿君が人妻に積極的なイタズラされる感じの男バージョンだろ?


 ある程度覚悟しとけば問題なアッーーーー……


 ちょ、待てっ、お前らそれは犯罪アッーーーー……



『これはヒドい……』



 助けてヴェーダこいつら三本アッーーーー……


 両手も使わせアッーーーー……


 アッーーーー……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




『泣かないで私のラージャ、貴方は帝王の責務をまっとうしたのです、これははずかしめではありません、名誉です』


「しくしく……」


『見事な処女航海でした、私は貴方を誇りに思います』


「しくしく……ほんとう?」


『ええ、豊穣姉妹に勝るとも劣らぬイキっぷりでした。乗組員も大満足でしたよ?』


「小猿ちゃん達のイキっぷりはどうでも良いんですが、兵士を満足させられたのならヨシっ!!」


『ただ、分神の消耗が激しいですね、一日もせず消滅してしまうとは……』


「そうだな……」



 ヤり過ぎだ、大森林の男共はヤり過ぎるんだ……

 この消耗率は女性側から批判が挙がるぞ……

 分神増援にまで至るのは予想外だった……



『確かに不公平ですね……何か対応策は御座いますか?』


「ねぇな……現状じゃぁ無料貸し出しは止めますよってとこか」


『そうですね、特別賞与以外での無料分神下賜かしは一時停止しましょう。すぐに公布致します』


「オナシャス」



 ふぅ、取り敢えず一安心だな。

 しっかし女性は大変だなぁ、アレはキツい。尊敬するわ。



『それが解って良かったですね』


「ああ、貴重な体験だった!!」



 だがまぁ、今後の課題は……小猿ちゃん達のフィードバックを完全に遮断出来るようにする事かなっ!!


 女性達には本当に申し訳ないが、キツいですっ!!

 激しいプレイに関する法整備をしようと決めました!!



『ただし、ラージャを求める王妃達のプレイに法は適用されません、そうですよね?』



 う、うん……


 何だろう、この『今まで法は守って来た』と言わんばかりの物言いは……


 ま、まぁ良い、どうせ俺には最初から拒否権など無いっ!!

 俺の中では常に『ヴェーダが法、ヴェーダが正義』だっ!!



『……ンもう、バカ』



 褒めたわけじゃないんですが……

 ヴェーダが喜んでいるのでヨシっ!!


 さぁ~て、出港式も終わったし、今日も魔界で昆虫採集しようかねぇ。



『おや? ラージャ、太洋航海中の妖蜂艦隊が『翼人』の隠れ住む島を発見したようです。向かいますか?』



 翼人……あの翼人かっ!!

 妖鳥族ハーピーに並ぶビ・アンカっ!!

 異世界のイカロスこと絶滅危惧種『翼人』かぁーっ!!


 そりゃぁもう保護一択ですよ。


 今すぐ迎えに行きましょうっ!!












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