第269話「メチャとオマンを足して割らない感じ」





 第二百六十九話『メチャとオマンを足して割らない感じ』





 七月十日、朝、階層丸ごと砂浜と海で創られた第二千二十階層、水平線から顔を出した疑似太陽が眩しい。


 偽りの朝日も良いもんだ。


 さすが五帝に選ばれるヤツのダンジョン、階層ごとの規模がデカい。ヴェーダの侵食も少しだけ速度が緩む。


 と言っても、この海岸階層は浸食済み、魔界トンネルも設置したので海水浴目当ての悪魔がゾロゾロ湧いている。


 急ぐ攻略でもないし、今日は攻略を中断して丘陵街セパルトゥラの傭兵と冒険者達に海辺の休暇をプレゼンツするぜ!!



『ヌーディストビーチになっていますが……』



 馬鹿野郎っ、ヴェーダこの野郎っ!!

 海は裸って決まってんだろうがっ!!


 だが、お前の裸を見る事が許されるのは俺だけ、だっ!!



『ンもう、バカ、さっきまで桃色空間で沢山見てたくせに、バカ』



 ……気絶してたんで最初の三分くらいしか見てない件について。


 ま、まぁ良い、嫁のヌードは俺の物、女性眷属のヌードも俺の物、既婚女性眷属のヌードは俺の物ではないかもしれない気がするが見せて来るなら是非に及ばずっ!!


 例えば、例えばそう、甲蟲将軍スーレイヤ都督となった『カナリ・ヴァギ=ナスキ』の嫁さん、甲蟲夫人スーレイヤ女官長『フリン』のあの妖艶なヌードは見ても良い、私はそう思う。そうでなければならないっ。



『フリンは……どう考えてもラージャを誘っていますね、日焼け止めオイルをラージャの正面でM字開脚しながら塗る必要性がいったいどこに有るのか……』



 馬鹿野郎っ、ヴェーダこの野郎っ!!

 日焼け止めオイルの塗布に必要性を求めるなっ!!


 だが、お前の裸体にオイルを塗るのは俺の特権、だっ!!



『ンもう、バカ、ついさっき私の体に白オイルを塗ったばかりなのに、バカ』



 ……それ自分で浴びて自分で塗ったのでは??


 ま、まぁ良い、そんな事よりフリンが背中にオイルを塗って欲しそうに俺をチラ見している、これは帝王として臣下の嫁に手を差し伸べて然るべきだと私は思うのです。


 ですので、俺の横に転移せますね~。

 俺が座っている防水エロマットの上に転移させますね~。


 ハイこんにちはっ!!

 何かお困りかな?



「あ、あのっ、背中っ、あのっ、オイルが……」


「貸せ、うつむきで寝ろ」


「あ……ハイ(ポッ)」



 フリンは頬を染めながらマットに伏せました。

 何だろう、お尻を微妙に浮かせて伏せました。


 す、凄まじい曲線美だなオイ……


 あーダメダメ、この抜群のスタイルは股間がイライラします。


 駄目だろコレ……

 丸見えは駄目だろ……

 勃起不可避で困った、隠す物が無い……

 ヌーディストビーチの罠に掛かった(白目)……



『彼女はサキュバスの元高級娼婦ですからね、殿方の心を掴むテクニックは相当なものです。その一挙手一投足に芸術的な天性の魅惑効果がうかがえます。生粋の泥棒猫ですね、オマンに匹敵する泥棒猫と言わざるを得ません』



 な、なるほど、天性の……


 だから細くしなやかな尻尾で俺の股間をくすぐっているのか……上下にコスるのも天性の仕様なのか……


 オイルを塗り易いように両手でお尻を『くぱぁ』するのも天性がせるわざなのか……


 何だろう、カナリを呼び出してぶん殴りたくなった……

 アイツにフリンは勿体無いような気がするんだ……



『数万段も力で劣る臣下に、帝王が嫁を奪う為にその手を挙げると?』



 い、いや、そう言う事じゃないんだヨ?

 フリンが好い女だって事が言いたいだけなんだヨ?

 娼館狂いのハゲには勿体無い女性だって話なんだヨ?


 そんな事を考えていると、フリンのお尻が俺の右手を襲った。


 ウソやろ……



「あっ、帝王様……そこは、あのっ、そこは駄目……」


『人妻の、臣下の嫁の大事な場所に指を入れるとは……』



 ち、違う違う、お前見てただろっ!!


 フリンが急に腰を浮かせて俺の指を呑み込んだんだって!!


 これほど明確な不可抗力はこの星の歴史上存在しただろうか? 


 いや無いっ!! まれに見る珍事だヨっ!?



『ならば指を抜けば宜しい。何故前後に動かす必要が?』



 ち、違う違う、中が動いてんのっ!!

 俺の指をベルトコンベアーな穴の中が前後に動かすのっ!!


 これほど高度なホール運動をこなす女性がこの星の歴史上存在しただろうか?


 いや居ないっ!! 史上稀に見る女傑だヨっ!?



『……ふむ、その運動は一度詳しくフリンに聞いてみる必要が有りますね、サキュバスの高級娼婦、あなどり難し』



 ホントだよ、スゲェよ高級娼婦……


 うちの将軍連中が足繫あししげく『吉原』に通う理由が分かったわ……


 って、またフリンの腰が……っ!!



「あっ、帝王様、そっちは、あのっ、夫もまだ入れた事が、あの……」



 て、天才は居る、悔しいがここに居るっ!!



『……凄いですねこの子』




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ふぅ……


 甲虫夫人フリン、恐ろしい相手だった。


 結局、最終的には旦那のカナリを召喚して連れて行ってもらった。去り際にフリンが投げキッスして来た事はナイショにしておく。


 まったく、困った奴だぜフリン……



『ちゃっかり白因子をゴックンして貰っていたようですが……』



 違うだろ、背中にオイルを塗り終わったら『仰向けになりますね』とか言い出して、体を起こした途端に『キャーすべるぅ』って防水マットの上で倒れたと思ったらくわえていたんだろうが……


 そもそも正面は自分で塗り終わってるのに、仰向けになる必要なんて無かったんだよアイツは……


 それなのに態々わざわざ体勢を変えようとするもんだから、体の前面に付いたオイルが付着したマットに両手を突いた感じでヨツンバインからの股間ダイブだ……


 ヤベェよアイツ、メチャとオマンを足した感じでエロの神様が憑いてるよ、間違いねぇ……



『エロの神……エロスでしょうか、調べてみます』



 どっちかっつぅと、昭和のお笑いの神様じゃねぇかな……


 とにかく、フリンは危険だっ!!

 あの尻上げと『くぱぁ』の破壊力は凄まじい……

 ジャキだったら間違い無く死んでいた、即死だ。


 いや、男ゴブリン眷属の大半は死んでる、アレは虐殺兵器だ。


 そんな危険極まりない兵器は、我が帝室が厳重に保管すべきかもしれない……数日おきに動作チェックを入れながら保管すべきなのでは?


 今後の課題だなっ!!



『ラージャ、開放的な海辺の野外セクロスが横行しています、家族用コテージ等の宿泊施設か巨大なホテルを建てても宜しいでしょうか?』


「うん、オナシャス。こりゃまたエロDPがガンガン稼げるなぁ」


『魔界からの観光客が増加し続けています、この階層を拡張しますね』


「ついでに軍艦並べてやれ。艦内をカップルに開放すれば海上デートもマリンセクロスもはかどるだろ」


『では戦艦ヴェーダから人員輸送艦を転送させます。あの輸送艦は広い個室を完備しておりますので』


「それは素敵な海上ラブホですなぁ……」



 宿泊施設が整ったら……

 次は『海の家』かねぇ?

 砂浜に露店を並べるのも良いな……



『ラージャは何か商売を?』


「俺? そうだなぁ、今日は俺も楽しみたいからなぁ」



 あ、俺はオイル塗り師の店を出そうっ!!



清々すがすがしいほどのクズ……でも愛してしまった私の負け、ね』



 え、清々しい俺を愛してる?

 ば、ばっかお前、恥ずかしい事言うなよ~。


 お、俺はどんなヴェーダも好きだけど?


 好きだけどっ!?



『はいはい、うふふ』









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