第265話「知ってたっ!!」





 第二百六十五話『知ってたっ!!』





 七月四日、早朝、大森林は晴れ。


 俺はやった、成し遂げた。


 時間なら腐るほど有った、後宮の乙女達を一人一人丁寧に不思議空間にお招きし、平均三発ずつ謝罪と後悔と愛のセクロスをさせてもらった。


 下界の時間は全く進んでいないのに、後宮の乙女達を全員満足させる事が出来た。


 何故か嫁さんズが入っていたが些細な事だ。一万と少しだった後宮の乙女達が最終的に七万を超えていたのも些細な事だ。


 余裕で億年を持って行く嫁さんズ相手のセクロスに比べれば、七万余の乙女達とのセクロスは清涼剤と言っても過言ではない。あの初々ういういしい態度が俺を狂わせる。


 桃色不思議空間は偉大だ、不可能とされた愛を可能にした。


 イズアルナーギ様に感謝っ!!



「呼んだ?」


「あ、いえ、呼んでないですね」


「ん」



 神木前に座って朝の礼拝をしていたら、イズアルナーギ様が突然のご顕現。そしてすぐにお帰り遊ばした……


 俺の周囲に居た眷属達が全員気絶しています。

 何をしに来られたのでしょうか……



『夏の早朝ジャングルは昆虫採集がはかどる、と』



 な、なるほど。

 自由過ぎて草。


 魔界の森を探索した方が大物を発見出来易いような……



『伝えておき……あ、魔界へ向かいました。元気な子ですねぇ』



 自由に動き回る不可触神か……怖すぎワロタ。


 魔界の人達には悪い事をしたな、心の中で謝罪しよう、サーセン。



『あの子が向かった魔界は我々の知らない魔界ですので、お気になさらず』



 あぁ~、神界と似たような設定か?


 まぁそうだろうなぁ、冥界もこっちと地球じゃ分けられていたしな、ヘルヘイムと『黄泉よみの国』も同じじゃないだろうし。



『そう言えば、日本で【伊弉諾尊いざなぎのみこととイズアルナーギ同一説】が急速に広がり、イズアルナーギがイザナギを吸収してしまったようですね』



 えええぇぇ……


 じゃ、じゃぁ伊弉冉尊いざなみのみことは?



『当然、イズアルナーギと夫婦めおとの関係に。黄泉の国もイズアルナーギが支配したようです』



 えええぇぇ……



『お蔭で、ルシフェルは分割統治がスムーズに行ったと申しておりました』



 えええぇぇ……

 地球の神様は相当な数だけど……

 どんな神界大戦だったんだろう、私、気になりますっ!!



『イズアルナーギが特に何も考えず滅ぼして回ったそうです、面白い子』



 えええぇぇ……

 笑えるのそれ?……



『ルシフェルとイズアルナーギはどちらもラージャの姻戚で繋がりが有りますから、両者の関係に気付いた者も多かったようで、イズアルナーギの暴れっぷりに白旗を上げた神々がルシフェルを頼ったとか。『楽だったよ』とルシフェルは笑っていました』



 地上げ屋かな?

 やってる事がまんま悪魔の所業で草。



『大悪魔ですからねぇ。教国以西とエイフルニア大陸以北の土地には、ルシフェルが送り込んだ相当数の悪魔や旧教国人が潜んでいます。魔界トンネルからの瘴気放出もそちらに向けて垂れ流しているとか』



 まったく西に攻め込まないと思っていたら、根っこから腐らせる作戦だった感じでしょうか?



『底辺を這いずり回るゴミを底無し沼に引きずり込んで、抜け出せない状態にしてから欲望を吸い上げ続け、その周囲を嫉妬と欲で澱んだ空気に変え、悪魔の活動範囲を広げる戦略でしょう。セオリー通りの堕落牧場建設、見事ですね』



 ダンジョンの人畜牧場無しでやるんだそれ……

 DPとか興味無さそうだもんなぁ大魔王さん。


 でもそのお蔭で北エイフルニアのダンジョン群にアホが大勢来るんだけどね!! 大魔王さんにも感謝です、アザーッス!!



「呼んだかね?」


「え、いやぁ、呼んでないっスね!!」


「先日、君から貰った神酒ソーマを切らしてしまってね……」


「あ、ちょ~っと待って下さいねぇ……ハイどうぞっ!!」


「何だか悪いねぇ、催促したようで心が痛むよ」


「いえいえ、どうぞどうぞ」


「そうかね、では、リリスとプルピーを頼むよ、また会おう」


「お疲れ様でしたーっ!!…………ふぅ」



 大魔王さんは伏魔殿パンデモニウムに来てたのか……

 って言うか神格が上がっておられたようですが……



『地球でこれまでの鬱憤うっぷんを晴らしたようですね』



 あ、あぁ~、大魔王さんはなぁ……


 あっち系の悪魔さんはなぁ……

 かなりおとしめられたからなぁ……


 元々ガッチガチの主神だったり地母神だったりが悪魔にされてっからなぁ……


 俺でもブッ殺して回るかなっ!!



『アートマンにそのような過去が無くて良かったですね、忘れられ否定はされても貶められるほどではありませんでした、アートマンの半身たるブラフマンは――』


「うわあああー、お腹が痛くナッター」



 ヴェーダ、それ以上はイケナイ、いいね?

 ブラフマンさんは関係無い、無関係、いいね?


 そ、そんな事より、ラ・ウドネス島の戦況報告を頼むぜっ!!



『はいはい』




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ブッヒィ~……俺の名を言ってみろぉ」


「クッ、魔王ジャキっ、尋常に勝負っ!!」


「ブッヒィ~……お前に弟は居るかぁ?」


「俺は四男坊だっ、『フジワラー四兄弟』の最高傑作とは俺の事よっ!!」


「ブ、ブ~ヒッヒ……」


「何が可笑しい豚野郎っ!!」


「兄より優れた弟などらぬわボケェッ!!!!」



 戦況報告って言うか戦況生中継を見たら、朝日が眩しい平原のど真ん中でジャキと現地の金髪イケメン人間勇者が向かい合っていた……


 そしてジャキが理不尽にキレた……

 何言ってんだアイツ……


 まだあんな事言ってる……



『ですが、南都四兄弟最弱の末弟なので言ってることは正しいですね』



 まだ四人目が見つかってないんですがそれは……



『四人目にもどうせ敗れますよ、ジャキには敗北の凶星が一日中見えているはずです』



 ムゴすぎワロタ。

 お前は本当にジャキに厳しいな。



『戦いが始まりましたよ』



 ん? おおぅ、ジャキが変な構えをとった……アレはっ!!



「愚かな弟は無残に死ねぃ、南都聖拳奥義【夢精転送】っ!!」


「ん~? ケッ、何だそりゃぁ、何にもウギャァァ!!」



 勇者が股間を押さえて泡を吹いた……

 あ、ビクンって跳ねて死んだ……


 ジャキの腐った夢精白因子を大量に睾丸へ送られたか……


 これほど味方を称賛し難い勝利も珍しいな……



『何と言うけがらわしい……』



 なるほど、嫌われるなぁこりゃぁ!!


 取り敢えず、ジャキには他の必殺技を考えてあげよう。


 あ、汚いとか臭いとかのイメージを払拭する事から始めよう。



『無理でしょう』



 だなっ!!

 知ってたっ!!







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