第261話「親心、届いていますか?」





 第二百六十一話『親心、届いていますか?』





 六月二十六日、正午、大森林は快晴。


 俺は神木前広場でピクニック……じゃなくて昼飯。


 神木の左右と裏手も在る花畑が騒がしい。


 今朝けさ蛹化ようかしていたナイトクロウラーが羽化した。


 羽化した四体のピクシーは幼蟲時代から眷属だがまだ悪魔化はしていなかった、しかし、さなぎ時代に悪魔化したのか、悪魔眷属として羽化した。


 濃い灰色の肌を持ったピクシーは初めてだ。髪は相変わらずカラフルで四体とも色が違う。


 って言うかこれ、ピクシーじゃなくてグレムリンでは?



『う~ん、【真我色界翅妖精アハトマ・ルパダートゥ・ピクシー】ですね。エッチなピクシーです。おや……まぁ凄いっ!!【大陸間弾道まじっくみさいる】と瘴気爆弾【帝王つぁーりぼんば】を使えますよこの子達』



 うわぁ……


 ミサイルは良いとして……

 瘴気ツァーリボンバは気になりますねぇ……



『帝都ダンジョンは上下共に千階層を突破しておりますが、どちらかに使ってみましょうか?』



 両方に使って差し上げなさい。

 取り敢えず四体で一個ずつ、計四個を上下で二個ずつっ!!



『最高到達階層まで転送させ、その後は養殖ゴーレム等に運ばせます。爆発の映像記録も撮りますね』



 うむっ、あ、爆弾を創らせる前に生気注入で四体の新小悪魔ちゃんズを強化しようぜっ!!



『……ほどほどに、出来る限りほどほどに願います』



 バッカお前、俺を信用しろ、任せてクレメンスっ!!


 それに今回の四体はまだレベル1だぜ? 生気注入じゃぁレベルが上がらんから進化もせんしな、大丈夫大丈夫っ!! ウェ~ハッハ。


 さぁ小悪魔達よ、帝王の愛を受けるのですっ、セイヤー!!


 セイヤッ、セイヤッセイヤッ、セインツセイヤッー!!



『多いです、ラージャ多いです、多い』



 ヴェーダてめぇ……智愛神の慈しみと母性愛はどうしたぁー!!


 お前を慕うハルワタートとアムルタートの弟妹達に注ぐ愛は無いと言うのかっ!!


 お前の血は何色だーっ!!

 それでも俺の愛する正妻かぁぁーっ!!



『ッッ!!!! ごめんなさいラージャ、私っ、頑張りますっ!! えいっ!!』


『『負けんぞヴェーダ』』

『『愛なら負けぬ……』』



 四体に注がれる父母の愛……っ!!

 何故か祖母の愛も追加で……っ!!


 何故かヘルヘイムからドス黒い愛もインッ……!!

 何故か大魔王一家から快楽的な愛が四本入りますっ!!

 何故かファールバウティのけがれた愛がインッ……!!


 豊穣姉妹と戦神と四大属性姉妹のピュアな愛がドーンっ!!


 太陽と月の姉妹、運命と幸運の姉妹の愛も一気に行きますっ!!


 北の大地からお姉様が愛を叫ぶっ!! ワオーンっ!!


 マーラニキが『you、やっちゃいなよ』と激愛をプレゼンツ!!


 イズアルナーギ様が『呼んだ?』と勝手に【何か】を注入っ、ちょっとそれは勘弁してほしいっ!!


 ついでに魔皇帝が『恐ろしいものだな、大魔神の、若さ故の過ちと言うモノは』とか言いながら【親孝行の仁愛】を注入っ!! 一応『アザーッス』と言っておいたっ!!



 神々の深い愛を受け取れ小悪魔達よっ!!

 なんか白目を剥いて泡を吹いている場合じゃないぞっ!!


 頑張れっ、頑張れっ!!


 これが大人の愛情だぁぁーーっ!!



 黄金に輝く光が大森林を覆った。


 静まり返る神木前広場。


 光が収まると、そこには地に伏す四体の小悪魔がっ!!


 慌てた眷属達が四体に群がり介抱……いや、四体は自分で起き上がった。


 全裸で幼児体形の小悪魔達は庇護欲をそそる。


 そんなチビッ子達が……一斉に地面へつばを吐いたっ!!


 ワ、ワルだっ、あのムーブはワルの基本動作っ!!


 鋭いガンを飛ばしながら肩で風切ってポテポテ歩いてるっ!!


 こ、これはいったい……!?



『反抗期、ですね』


「なっ!!!!」



 何て事だ……っ!!

 愛が深すぎたのかっ!!


 大きく深すぎる俺達の愛がっ、小悪魔達に『ウザい』と認定されてしまったと言うのかっ!!


 親の心子知らずとは正にこの事っ!!


 クッ、幼蟲時代はあんなに素直で可愛かったのに……



『待って下さいラージャ、あれをご覧になって』


「ん? あっ」



 花畑の花を……けながら歩いているっ!!

 その小さな足で踏みつけないように華麗に避けているっ!!


 しかもっ、お昼寝中の赤ちゃんエッケンウルフに魔力の日傘をさり気なく……っ!!


 あれは……



『優しい不良、ですね』


「クッ……」



 古き良き昭和のガキ大将、か……

 まったく、ヤレヤレだぜ……


 ワンパクでも良い、たくましく育ってクレメンス……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 四人の小悪魔に名前を授けた。


 赤髪に黄色のメッシュが入った女の子『キャラスン』

 桃色ワイルドヘアーの女の子『パゾムリア』

 黒髪長髪の男の子『ニギレン』

 青黒い短髪の『ランギレン』


 四人ともワルの雰囲気が漂っているが、良い子達だっ!!


 彼らは早速帝都ダンジョン攻略に向かった。


 養殖やダンジョン眷属をブッ殺しながらレベルを上げるそうだ。


 男女のペアを作って上下に分かれた。

 彼らの護衛は何故かプルピーとフオウさんだ。


 何だろう、不安しかない。


 瘴気爆弾【帝王ぼんば】の威力については、まぁ、あれだ、『酷い』の一言に尽きる。


 一発でその階層の生物が死滅する。不壊であるダンジョンの壁や床じゃなかったら崩壊待った無し。


 爆弾は一個ずつの使用で良かったんだけどね、何発も使ってますね。


 爆弾の連続使用で瘴気が切れてきたら『親父ぃ、満タン宜しくぅ』と言う念話が届きます。


 瘴気注入の仕方なんて僕は知らないので、昔よくやってた精気譲渡みたいに瘴気混じりの神気を流したら出来た。


 四人は『ヒュ~、【ハイクオ】満タン頂きぃ!!』と言って喜んでました。ハイクオとは【ハイクオリティ瘴気】の略だそうです。


 そんな彼らの侵攻過程ですが、以下のようになっております。


 爆弾投入、敵殲滅、次階層入口まで転移、次階層に爆弾投入……と言う、ヴェーダの侵食と非常に相性の良い爆速極悪コンボ。階層を五秒程度で攻略しています。


 今のところ捕獲対象の人畜やダンジョン住民は居ません。深い階層に移ったと思われます。


 下のダンジョンはフオウさんが居るので捕獲には困りませんが、上はダークエルフのアイニィを送ろうか迷っています。むしろ下にもダークエルフを送った方が安心出来る。



『私が対象を転移させますのでご安心を』



 う~ん、分かってはいるんですけどね?

 プルピーとフオウさんじゃん?

 見つけ次第殺しそうじゃん?



『侵食の速度を上げて先に手を打ちますね』



 オナシャスっ!!


 さて、一時間で七百階層以上を攻略出来そうな状況だが、今日はどこまで攻略出来るかなぁ?


 明日にはダンマスをブッ殺せる気がしますぞ?




 ちなみに、小悪魔達がヴェーダに『お袋ぉ』と声を掛けたら、一拍置いて『お母ちゃんっ!!』に言い直すと言う事件がありました。


 どうやら、不思議空間で折檻せっかんされた模様。


 何年間怒られたのかは不明。








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