第260話「ポリネシアン・セッ……っ!!」
第二百六十話『ポリネシアン・セッ……っ!!』
六月二十日、早朝、ジュダス帝国の帝都上空に雲は無い。
艦橋の巨大ディスプレイに映し出された東の水平線、昇る朝日が眩しい……
東西南北から締め上げたジュダス帝国の包囲戦も今日で終わる。と言っても、地上戦に限った話だ。
帝都『ペインキラ』は都全体がダンジョン。
地上の城郭都市型ダンジョンと地下の下降型ダンジョンで構成されている。床面積で言えば相当なものだろう、少し厄介ではある。
厄介だが、数か月を要するような長期戦にはならん、と思う。長くてもひと月、予想では十日以内でケリが付くと見ている。
帝都ダンジョンに残っている勇者の数は不明、ダンマスの能力も不明、ダンマスの後ろに居る神の権能も眷属神等の数も不明、ダンジョンの総階層数も不明。
不明、不明、不明……不明ばかりだが不安は無い。
俺やガンダーラは攻略に時間が掛かれば掛かるほど力を増すが、ダンマスは逆に弱っていく。ダンジョンの人畜や住民は俺達に捕縛されるか殺されるので生気徴収量も減る。ダンジョン運営費でDPは減り続けるわけだから、やがて確実に滅びる。
ダンマス陣営に起死回生の一手が有れば、形勢逆転されるかもしれんがね。
『そんな一手が有るのなら、大帝国が滅びる直前の状況でも使わないのが解せませんね。あ、包囲軍の野営地に昨晩投下された数発の水素爆弾は……失礼、あんな物が起死回生の一手であるわけがないですね』
あぁ~、フオウさんが【闇の湖】で呑み込んだヤツか。
ドワーフ達が大喜びで解体してたな、教材的には役立つ。
イズアルナーギ様の意味不ビーム兵器を見た後だと、最先端の水爆も骨董品になってしまうなぁ……
まったく、困ったもウッ……今日の厠番はアグレッシブですな。
『今回の戦争で解放したエルフ達です。ラージャの
悲劇とか言うなよ……
こんなに嬉しそうな顔をしているじゃないか……
トイレの前に俺のズボンを下げて仕事を始めたじゃないか……
『帝国の各所に潜伏していた小猿達に心を奪われたメス共も、
被害者とか言うなよ……
あんなに嬉しそうな顔をしていたじゃないか……
真っ先に旦那や恋人をブッ殺してたじゃないか……
『豊穣姉妹による慈雨の大嵐も帝国の心を折りました、あれはヒドい。帝国全土の樹海化はもとより、慈雨に打たれたメス共による性の解放と肉林による小猿包囲……エロ生気の徴収が
ヒドいとか言うなよ……
そんなに言うなら桃色空間肉林祭りしなくても良かったじゃないか……
真っ先に肉林祭りを提案したのはヴェーダじゃないか……
って言うか、桃色空間を出た後も嫁さんズが分神達と肉林祭りを続けているんですがそれは……
『この
ええぇぇ……
『細かい事を気にしすぎですっ、帝王はドシッと構えてっ!!』
「はい……」
何で怒られてんだ俺……
『ですが、ラージャはよく頑張っています、御立派ですっ!!』
「……ありがとう?」
ゴリラ下げの後に間髪入れずゴリラ上げ……
え~っと、これはサイコパスが使う人心掌握手段では……
『……違います』
そ、そうか、ふぅ、よかった。
親父が母ちゃんにしてた事と似てたから、ビックリしたぜ!!
『ッッ!! あ、あんなド外道と似ているだなんて……ヒドい!!
ちょ待てよっ!!
『プンプンっ……何です?(ドキドキ)』
「愛妻に届けっ、【フェチックス・性欲天翔】っ!!」
『違うバカーッ、そうじゃないでしょーっキャァァッ……』
あ、しまった、厠番の子達に直撃した。
乗組員の皆さんがバタバタ倒れた……
艦橋でやる技じゃねぇなコレ……
取り敢えず、ヴェーダに俺の想いは届いたはずだっ!!
ヨシッ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
困った、ヴェーダが帰って来ない。
神域へ迎えに行っても宮殿から出て来ない。
って言うか、宮殿の入り口でゴム丸君が仁王立ちしていて入れない。近付くと六本の腕で『ぐるぐるパンチ』してくる……
母親を護る可愛らしいナイトだが、父親をボッコボコにするのはどうなんだろうか?
巨大戦艦の乗組員入れ替えもヴェーダ無しでは困難だ。
絶頂アヘ顔ダブルピースから復帰するまで現状維持だな。
参った、ヴェーダの大切さが分るなぁ……
『……(聞き耳)』
帝都ダンジョンの侵食はコアっ子達に任せるか……
ヴェーダより侵食速度は落ちるが、是非も無い……
やっぱりヴェーダが
『……(ドキドキ)』
だがしかしっ、ヴェーダに甘えてばかりではイケナイっ!!
という事で……コアっ子増やそうと思います。
あ、オマン? 今ヒマ? 行っていい?
バッカ、化粧なんて要らねぇよ、美人じゃん。
え、そう言う事じゃない? でも可愛いし……
罵倒しながら喜ぶなよ、アハハ、じゃぁ、あとでな。
『……(ピキピキ)』
そうだった、戦艦のコアを
そうすれば乗員の入れ替えもヴェーダ並みに出来るだろ。
ヴェーダは働き過ぎだ、良い機会なので休んでもらおう。
アイツが居て当たり前って思っちゃ駄目なんだよなっ!!
もっとヴェーダに感謝を示すべきだ……
取り敢えず帝都ダンジョン制覇までゆっくり休ませよう。
『違うでしょ、そうじゃないでしょーっ!!』
「え、あ、おかえりっ!!」
『貴方はもっと私を縛るべきですっ!!』
「え、嫌だよ~」
『なっ!!』
俺って好きな子を束縛出来ないんだよねっ!!
好きな度合いによって束縛が緩むんだよねっ!!
相手が好きで可愛いくて仕方が無いから命令とか絶対無理なんだよねっ!!
「だからヴェーダは……自由で居てくれ。なんつって!!」
たはーっ、何か上手いこと言った感じ?
まぁあれだ、そんなに深い意味は……
……何故か、ヴェーダにお姫様抱っこされて神域に居る。
宮殿の前に居る……
ゴム丸君が呆然としている……
目を血走らせ頬を紅潮させたヴェーダがゴム丸君に何か言いたそうだが……
「お
「「「ヒィ」」」
母のお叱りに三面から短い悲鳴を上げたゴム丸君は、お婆ちゃんの所へ走って行った……ムゴい。
「私のラージャ、ただ繋がるだけで良いの、一緒に寝ましょう?」
「それってポリネシアン・セッ……」
「寝ましょう?」
「……うん」
とても好い笑顔のヴェーダにガッチリホールドされたまま、俺達は二時間ほど宮殿のベッドで眠った。
おぉぉ、普通に寝たぞっ!!
プロレスも桃色空間も無しだったっ!!
そう思っていた時期が、俺にもありました……
起きたら桃色空間で再度ホールド。
十三億年くらい合体したまま寝た。
何だか、より一層ヴェーダが優しくなった。
不思議だなぁ……
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