第259話「分神事件、そして裁判」





 第二百五十九話『分神事件、そして裁判』





 六月十二日、十時のオヤツ休憩、大森林の空は曇り。


 俺は今、智愛の破壊神ヴェーダ神殿で神前裁判に出廷している。


 告訴されたのは俺、つまり被告人は俺ワロタ……

 しかも黙秘権無しの残虐リンチ裁判強制受諾ワロタ……


 弁護人にママンを指名したら却下された。

 陪審員にオマンも入れてと言ったら却下された。


 俺の弁護人はマーラニキの補佐役『魔ドンナ』だった、やる気なさすぎて草。


 被害者側の弁護人はイズアルナーギ様だった……


 向こうが本気すぎて芝3,200。

 俺の体表を不思議空間で包んでで草。

 フェチモン対策がガチでクソワロタ……



『被告人マハトマ・ナオキ、裁判中ですよ、フザケた考えはひかえて下さい……ごめんなさいラージャ』



 裁判長に俺の思考が筒漏れで大草原不可避……



『では、原告側の訴訟内容を詳しくお願いします。イズアルナーギは授乳中ですので、原告団の代表からどうぞ』



 イズアルナーギ様が全裸の爆乳美女からパイ汁を貰っている、あの女性が豊穣三姉妹の次女『パイエ』さんだ。ヒュ~、とんでもねぇパイオツだぜ……


 でも、あれでほぼ奴隷扱いなんだよなぁ……ゴクリ。

 パイエさんは幸せそうだし、女心は分からんなぁ。


 さて、原告団の代表は……アーベ、か。


 涙で目を赤くしたアーベがヴェーダに虚偽の不言を宣誓し、証言台に立った。


 いったい、アーベは何を訴えてくるのか……ゴクリ。

 そして何故、アーベの腹は大きいのだろうか……ゴクリ。



「グスン、今朝けさ、グスン、僕のお口と後ろでヤンチャしていた……うあぁぁん……、ヤンチャしていた、小猿ちゃん達が、うぐぅ、光の粒となってっ、突然消えてしまったのですっ!! うわあぁぁん、うえぇぇん!!」



 何を言っているんだコイツは……



 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



“これはヒドい……”

“3pの途中でだなんて、あんまりよ……”

“私なら発狂していましたよ、確実にね……”


“……被告がナオキでなければ死罪確定だったな”

“アーベちゃん可哀そう、ナオキさんはド外道なの?”

“け、賢者様がこんな酷い事を……グスン、グスン”

“ほらハンカチ、泣かないの、ふぅ、陛下の反論を聞こう”



『静粛に、静粛に願います。被告側の意見陳述に移りましょう、被告側は意見が有ればどうぞ』



 俺は左隣りに座る魔ドンナに目をった。

 魔ドンナの顔は紅潮し目がトンでいる……


 この女っ……マーラニキの権能バイブをハメたままっっ!!


 コイツは駄目だ、初めから使い物にならん。

 俺一人で戦うしかない……っ!!


 被告人席からゆっくりと立ち上がり、被告側の証言台に向かう……と原告側から声が上がった。



「異議あり!!」



 俺はまだ何も言っていないんですが……

 授乳中のパイエさんが異議申し立て。許可されて草。



「裁判長、被告人は私の授乳を見て勃起をきたしております、本法廷を侮辱するものであります」


『異議を認めます、被告人は勃起を治めなさい。原告と陪審員と私に神罰として養イク料二百イク円の支払いを命じます。では、被告の意見をどうぞ』



 こ、こいつぁ思った以上にヒデェ裁判だぜ……

 魔女狩りで被害に遭った女性達が不憫ふびんでならん……



「え~、ゴホン、被告のマハトマ・ナオキです。先ほどの訴状内容ですが……話になりませんな」



 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



“よくもそんな事をっ!!”

“男ってみんなそう……”

“好い男だからって……”



 俺は右手をダンディーに上げてザワつく皆を制した。



「小猿、つまり私の分神ですが、あれは私の神気で創られています、お分かりか? 分神として肉体は持ちますが、神気なのです、即ちっ、その体から神気が無くなれば……消えるのは必然」



 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



“うそでしょ……”

“え、待って、どう言う……”

“あぁ、ヤバい、私の小猿君もヤバい”



『静粛に、静粛に願います。被告人は惨酷で非道な発言を控えるように。もっと心ある発言で続きを』



 俺はハードボイルドに両肩を上げ、男前すぎる低音ボイスで意見を続ける。



「分神が私の神気で創られているのは原告や陪審の皆様に御理解頂けた、そう言う認識で話を進めます。原告が誘拐……おっと失礼、原告からご招待して頂いた私の分神は、原告に対し絶対に神気を使う攻撃をしない、即ち――」


「異議ありっ!!」


『パイエ弁護代理の異議を認めます、どうぞ』



 授乳中の片手間な異議は通さないで下さい……


 被告弁護人の魔ドンナがアヘ顔ダブルピースで気絶しているので退廷させて下さい……


 爆乳のパイエさんは僕をにらまないで下さい……

 股間が危険なんです、バクハツしそうなんです……



「被告人は先ほど『分神は神気の攻撃をしない』と、そう仰いましたが、原告の一人であるサタナエルさんは、分神が放つ神気製のムチで臀部でんぶや胸を何度も打たれていますっ!! よって、被告人の意見は虚偽であると言わざるを得ませんっ!!」


「いやそれは――」


『被告人に発言の許可は与えておりません。原告弁護代理人の異議はもっとも、たった今、原告サタナエルから証拠の鞭打ち映像が届けられました……残念です、ラージャ』



 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



“ヤダ、見てこれ、スゴイ……”

“ハ、ハレンチですっ……コピーを貰っても?”

“地獄の獄長様に何て事を……ハァハァ”


“うむっ、なかなか痛かったぞ、ハッハッハ”

“チィ、バブみは足りないけど、これもイイね”

“僕もお兄ちゃんにムチで……えへへ”



 これはもう、無理だな……

 俺の敗訴は決まっている、出来レースだ……


 だがしかしっ!!

 俺は負けん、負けんぞぉっ!!



「異議ありぃぃぃっ!!」


『はいはい、どうぞ』



 なげやり過ぎワロタ。



「鞭打ちは申し訳なかった、以後、鞭打ちは禁止、SMチックな責めも禁止にします、本当に申し訳ない」



 皆に向かって頭を下げる。


 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



“アワワワ、ちょ、待てナオキっ!!”

“早まるな婿殿っ、それとこれとは話が違うっ!!”



 フフフ、効いてるな……

 だが、これからが本当の攻めだぜっ!!


 俺は再び右手を上げて皆の騒ぎを制した。



「さて、陪審員、並びに傍聴席の皆様、お気付きだろうか? 今、騒いでいた女性達は原告側の方々だけでした、最初の意見陳述では陪審員の方々も若干名が狼狽うろたえておられた……」



 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



「裁判長、一つお聞きしたい、これは貴方だけが知る真実だからだ」


『ふむ、何でしょうか?』


「先ほど私が『騒いでいた・狼狽えていた』と申し上げた原告や陪審員、彼女達は……性的な豪傑、いわゆる『性豪』、ですね?」


「異議ありっ!!」


『異議を認めません、座りなさいパイエ』


「クッ、ぁん、イザーク様、今は少し優しく吸って……」


『被告人の質問にお答えします、答えはイエス、彼女達はド淫乱です』



 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



“クッ、貴様ほどではないわっ!!”

“私は悲しいよ、ヴェーダ……”



 さっきから、若干二名の匿名原告がうるさい……


 あんた達の小猿は数日で消えるしな、理由も知ってるくせに……



「裁判長、有り難う御座います。原告アーベにお聞きしたい、今朝けさ消えた分神は君が最初に拉致った分神の二体、そうだね?」


『原告アーベ、答えなさい』


「はい……えっと、はい、最初の子達です、グスン」


「裁判長、アーベのセクロス記録を提示して頂きたい。一日の平均セクロス時間もお願いします」


「異議ありっ!!」


『異議を認めません、座りなさいパイエ』


「クッ、ァん、イザーク様、摘まんでは駄目ですぅ~」



 イズアルナーギ様はもうお帰りになられてはどうでしょう?

 パイエさんも無理して異議を唱える必要は無いんですよ?


 ザワザワッ……


 法廷の正面に巨大ディスプレイが出現、アーベのセクロス記録が映された。


 ザワザワッ……

 ザワザワッザワザワッ……


 驚愕する陪審員と傍聴席の人々。俺も驚愕。


 ば、馬鹿なっ!!

 一日平均、に、二十四時間……だとっ!?


 さ、産院での仕事中は……なっ!!

 ロングスカートの中に小猿をれっぱで……


 じゃ、じゃぁ、寝てる時は……なっ!!

 くわえたまま、挿入されたまま……だとっ!?


 驚いた俺は原告席に顔を向ける。

 数名の原告が勢いよく顔を背けた……お前らもか。


 陪審員の数名が冷や汗を流しながら目を泳がせている……

 はかま姿のメチャ陪審員は冷や汗かきすぎワロタ。


 とにかく、答えは出たな。



「裁判長、陪審員の皆様、提示された記録が本件の真実、あれが私の無実を証明しています。分神はヤると出すんです、神気入りの白因子を出すんですっ!! つまり彼女達は……ヤりすぎた」


『……マハトマ・ナオキに無罪を申し渡す』



 ザワザワッ……!!



『以降、上告も控訴も認めません。原告は被告に三分神を返還するように。分神不所持で返還が出来ない場合は一分神につき三日間のセクロス禁止、または十日間の【ナオキ接近禁止】に処す』



 ザワザワッ……

 ザワザワッ……



“ぼ、僕、三分神なんて返還できないよぉ~……”


“クッ、是非に及ばず、か”

“アートマン、ヴェーダは駄目だ、悪い嫁だよ……”



 こうして、俺を被告とした裁判は閉廷した。


 まったく、困った嫁さん達だぜ……ファサ~ッ。


 ファサ~ッ、ファサ~ッ、ファサ~ッ……



『うふふ、甘い人』



 けっ、俺はただ、鼻毛を抜いてるだけだ……









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