第251話「これを【包囲殲滅陣G】と言う」





 第二百五十一話『これを【包囲殲滅陣G】と言う』





 六月一日、早朝、晴れ。

 旧スーレイヤ王国東部国境上空。


 巨大戦艦ヴェーダの艦橋、戦闘指揮所と化したゴリラ司令室で、俺はマルチディスプレイに映る地上の戦闘を眺めている。


 ウッ、今日の厠番は激しいな……ふぅ。



 生気注入を終えた眷属達がファールバウティの血族と共に東の超大国『ジュダス帝国』へ攻め込んだ。


 ジュダス帝国が四帝の誰かと協力関係にある事は調査済み。その四帝の一人が衛星を打ち上げた野郎だと言う事も分かっているし、勇者共と技術協力し合っているのも知っている。


 帝国軍の装備は二十一世紀の地球文明レベルを越えた未来的な銃火器が主体、舐めて掛かると痛い目を見そう。


 帝国の支配領域が広大なので、瘴気が行き渡らない場所は大森林眷属が前に出て戦う必要が有るが、移住悪魔眷属無しだと包囲には少しばかり数が足りない。


 巨大戦艦と『です☆すた』から爆撃機や可変ロボットが続々と発進している。地上戦の支援としては十分だろうが、城塞・兵站線などを覆う敵の障壁や結界が非常に邪魔である。


 どうやらガンダーラの戦い方を研究されていたようだ。


 妖蟻による地下道も要所要所で結界が邪魔して前進をはばむ。破壊出来ない事は無いが鬱陶うっとうしい上に時間が掛かる。


 地下道が完成しないので瘴気の放出も進まない、ヨルムンガンドの奇襲も減る。東部国境付近の戦いはこちらが押してはいるが全力が出せていない。


 ですので、北からも攻める事にしましたっ!!


 北方長城から地下道を掘り進めながら東に進軍を開始。


 通過した地下道をダンジョン化、魔界トンネルをガンガン設置して悪魔を呼び込み、生気を貰って前線の眷属達に注入。


 北方上空からロボで東へ出撃したプルピーと五人の姉妹達が、地上に散見する魔族の集落を降伏させながら先行。それを追うようにオッパイエの慈雨を降らせる。


 制圧した集落はダンジョン化して神殿と魔界トンネルを設置、降伏した魔族を眷属化したのちオッパイエの慈雨を浴びさせ子作り推奨、瘴気の放出と信仰促進を優先させた。悪魔娼館も大活躍で生気徴収がはかどる。


 ダンジョン化の為に転移しまくったが、頑張った甲斐はあった。


 俺がどこに居ても指定魔族を眷属化出来るようになったのは地味に有り難い。神様の利点だな。



『お疲れ様です』



 俺が前線に出ればもっと楽なんだけどなー。

 もっと効率的なんだけどなー。



『将が育ちませんし、功を奪っては駄目ですよ。眷属の死を恐れないで。大丈夫です、アートマンが鬼神として迎えます、冥府でヘルが迎えます、大丈夫』



 はぁ、嫌なもんは嫌なんですがっ!!

 皆が前線に行くっつって聞かねぇからなぁ……


 腹くくって任せるしかねぇ、ちくしょうめ、まったく。



『負傷兵は一瞬でマハルシに転送されます、治療も一瞬です、新たに生気注入した眷属達の強さを信じましょう。ご覧下さい、豚骨バイキン男やレイン達が大活躍です』



 豚骨バイキン男は何だろうな、悲哀を背負ってるな、新婚生活がキツいんだろうか?


 ところで、『です☆すた』からの援護射撃は無理そうなの?



『やはり威力が強すぎますね、戦艦ヴェーダの艦砲射撃も同様、着弾地点の被害が甚大です。海岸沿いの地域は海に向けて放てば降伏勧告の脅しとして使えますが、陸上となると……』



 う~ん、イズアルナーギ様は何と戦う気なんだろうか……


 取り敢えず、今は爆撃機に頼るしかないか。

 しっかし、敵は迎撃機を飛ばして来んなぁ。

 飛行場らしき場所も見当たらん……



『ダンジョンからの発着でしょうか、指定場所へ直接転送と言う事も考えられますが。北方を警戒しつつ様子見しているのかもしれませんね、敵の情報収集能力がどれほどか分かりませんが、プルピエルを捕捉しているのなら北方警戒はかないでしょう』



 ふむふむ……


 それじゃぁ、『です☆すた』から無人戦闘機をジュダス帝国北方に送ってみようか、千機くらい。



『一割の二万機を出撃させましょう、逐次投入よりマシです。生産も自動ですので減った分はすぐに回復出来ますし、生産に必要な物資はダンジョンで無限に入手出来ます』



 お、おう。


 二万機かぁ、ちょっと意味が解らないな……



『無人戦闘機への細かい指揮は私が執ります、出撃させますか?』



 やっちゃってぇー。


 そんじゃぁ俺も破壊工作を手伝うかぁ。

 鼻毛三千本くらい抜いちゃうモンニッ!!


 さぁ行くのです分神達よっ、人間や獣人の股間こころを掴むのですっ!!


 あ、誘拐犯メチャに三名捕まったっ!!


 あ、誘拐犯ラヴに【影沼】で百七十名捕まったっ!!

 お前は何をしているんだ……

 あ、他の嫁さんズに配るんですね。

 凄まじい誘拐技術だな、やりおる……


 ウッ、って言うか、厠番の子達が一番やりおる……


 俺が指令室のソファーに座って以降、トイレに立った覚えが無い。


 この子達も生気注入で強くなったからな……

 うっかり違うモノも注入したからな……



『全員妊娠しましたので交代させますね』



 うむ、お賃金は多めに渡して下さい。

 マハルシに高級マンションの新居もあげて下さい。



『……お通いになられるのですか?』



 うむっ!!



『では妖蟻姉妹と妖蜂姉妹の一戸建て新居から訪問を開始して下さい。今すぐ』



 うむっ??




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ふぅ……死ぬかと思ったぜ。


 何だろう、違うんだよなぁ……

 愛の巣と監禁場所との違い的な?


 頬を染めたオマンににらまれながら『お、美味しいかっ、クズめっ、もっと食べて無様ブザマえ太るがいいっ、バカめっ、あ、口元にご飯つぶついてますヒョイパク、教養の無い野蛮人がっ、私の手料理を野良犬のようにむさぼり食うなんてっ、ド外道めがっ、あ、えへへオカワリありますよ? す、好きっ』って感じなのは良いんですよ。愛の巣ですよ。


 でも、イセトモに『食べて』って蜂蜜漬けの生魔牛肉を無理やり口に突っ込まれながら姉貴達に犯されるのは違うんだよなぁ……心を穏やかに出来ない的な?


 そもそも桃色空間で三百年とか監禁する必要が有るのか……


 オマンもイズアルナーギ様から桃色空間貰ってるのに、逢瀬の時は絶対使わん、アイツは『俺と過ごす時間』の使い方が他の嫁さんズと違うな。何て表現すればいいのか分からんが。



『……なるほど、一期一会的な解釈で宜しくて?』



 え、知らんけど……


 とにかく、戦争中に別荘呼び出しで監禁は控えて貰いたいっ!!


 たとえそれが桃色空間での時間を無視した出来事だったとしても、戦争中はキツいんです。切ない気持ちで指揮を執るのは涙が出そうなんです。


 それで、無人戦闘機はどうなった?

 迎撃機とドッグファイト始めた感じですか?



『対空砲火を浴びていますが問題ありません。迎撃機は二千機ほど出て来ましたが相手になりません、もうすぐ全機撃墜出来ます』



 ふぅ~ん、じゃぁ、無人戦闘機で爆撃機を護衛しながら帝国全土を飛び回ろうか。絨毯爆撃で敵の障壁や結界にダメージを与え続けて下さい。



『帝国各地に存在するダンジョンの攻略は如何様いかように?』



 地上戦は瘴気が満ちた場所だけの侵攻でいい、ファールバウティの血族と移住悪魔眷属に任せる。大森林眷属はダンジョン攻略に回そう。


 どうせ北方組の到着がまだだ、東海岸の封鎖も終わってない、じっくり確実に締め上げりゃいい。



『ではそのように』



 俺ももっと鼻毛を抜こうと思いますっ!!

 フンヌッ、ファサ~、行け分神達よっ!!


 メチャとラヴは座っていなさい、いいね?

 そんな泣きそうな顔すんなよ……







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